マイナスが続く消費者物価(CPI)上昇率に対応して緊急事態宣言を実効性あるものにする強力な財政拡大が必要!!!
本日、総務省統計局から3月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は▲0.1%の下落と、8か月連続の下落を示しつつも、下落幅は徐々に縮小しています。他方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+0.3%とプラス幅を拡大しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインだけを報じる記事を引用すると以下の通りです。
3月の全国消費者物価、0.1%下落 下落は8カ月連続
総務省が23日発表した3月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.8と前年同月比0.1%下落した。下落は8カ月連続。QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.1%下落だった。2月は0.4%下落だった。
生鮮食品とエネルギーを除く総合のCPIは102.2と、0.3%上昇した。生鮮食品を含む総合は0.2%下落した。
併せて発表した20年度平均のCPIは、生鮮食品を除く総合が101.4となり、19年度に比べ0.4%下落した。
いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲0.2%の下落でしたので、ジャストミートしました。CPIの下落が続いていることについては、一昨年2019年10月からの消費税率引上げの効果が昨年10月統計で剥落したことあるものの、エネルギーや政策要因の幼児向け教育あるいは高等教育の無償化などに伴う部分が小さくありません。例えば、エネルギーの総合指数の対前年同月比上昇率への寄与度は2月統計では▲0.57でしたが、本日公表の3月統計では▲0.34まで縮小しています。コアCPIの上昇率がまだマイナスながら、そのマイナス幅が着実に縮小している大きな要因のひとつと考えるべきです。また、3月統計で幼稚園保育料(私立)の前年同月比上昇率は▲88.5%、総合への寄与度も▲0.12%と大きくなっています。ですから、政策要因の幼児向け教育無償化がなければ、そろそろコアCPI上昇率はゼロないしプラスになっていてもおかしくないわけです。こういった国際商品市況の石油価格の動きなどに従って、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率も下落幅を着実に縮小させています。
今月については、日経新聞の記事「コロナ下、物価8カ月連続下落 インフレ加速の米欧と差」に触発されて、いまだに消費者物価上昇率がマイナスを続けている日本の異常さを指摘しておきたいと思います。すなわち、4月の「月例経済報告」の主要経済指標のうち、最後の主要経済指標の国際比較の2ページめに消費者物価上昇率の比較表があります。繰り返しになりますが、日本の消費者物価上昇率は3月統計でヘッドライン▲0.2%、コアCPI▲0.1%の下落なのですが、主要経済指標の国際比較では、同じ3月統計で、米国は+2.6%、ユーロ圏欧州でも+1.3%、うち、あれほどインフレを嫌うドイツでも+1.7%のほか、アジア諸国も、中国が2月までのマイナス圏から3月統計では+0.4%に転じていますし、韓国も+1.5%を記録しています。もう、長らく指摘され続けてきたことながら、これまでデフレが続く異常事態に対応して、日銀は強力なリフレ策に転じています。財政政策当局はドイツや英国のような消費税率の引下げを拒否し続けてきましたが、第3次の緊急事態宣言に応じて財政拡大による強力な支援策を打ち出すべきタイミングに達していると私は考えています。
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