100万人近い雇用者増を記録した米国雇用統計をどう見るか?
日本時間の今夜、米国労働省から3月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は昨年2020年12月には▲306千人減と減少に転じましたが、今年2021年に入って1月には+166千人増、2月も+379千人増、そして、本日公表の3月統計では何と+916千人増と大きく増加し、順調な景気回復を裏付けています。失業率は前月の6.2%から3月には6.0%に低下しています。まず、長くなりますが、USA Tooday のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を最初の6パラだけ引用すると以下の通りです。
The economy added 916K jobs in March, unemployment fell to 6% as states eased restrictions on businesses, vaccinations spread
U.S. hiring kicked into a higher gear in March as employers added a booming 916,000 jobs amid falling COVID-19 cases, a relaxation of business constraints in many states and a growing number of Americans receiving vaccinations.
The unemployment rate dropped from 6.2% to 6%, the lowest in a year, the Labor department said Friday.
The advances, the most since August, were again driven by substantial gains at restaurants and bars, as well as construction and education.
Economists surveyed by Bloomberg expected 643,000 additional job gains. Another positive: Employment gains for January and February were revised up by a total of 156,000.
Infections continued to fall through the first half of March, and many states - including Texas, Florida, Arizona and Louisiana - have lifted all occupancy limits on restaurants and other businesses. That has prompted the outlets to recall more furloughed workers or step up hiring. OpenTable reported a sharp rebound in online restaurant reservations, which are back to pre-pandemic levels in Texas, Goldman Sachs says.
COVID cases have risen recently in a surge tied to spring break, less stringent social distancing requirements and a fast-spreading virus variant. But deaths have continued to trend down, and 29% of Americans have received at least one vaccine shot, according to Pantheon Macroeconomics.
長くなりましたが、まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは今年2020年2月を米国景気の山と認定しています。ともかく、4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

引用した記事にもあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスでは+643千人増と予想されていましたので、+916千人増はかなりこれを上回っています。他方で、失業率は昨年2020年12月の6.7%から、今年2021年1月には6.3%に低下し、2月6.2%、3月も6.0%と、着実に低下を示しています。やはり、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が進んでいることが大きく、引用した記事にあるように、ワクチンが人口の29%まで進んでいるようです。ですから、雇用統計に見る米国景気回復はワクチンによる新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的影響の克服が大きな要因をなしています。従って、というか、何というか、3月の非農業部門雇用者増をさらに産業別に詳しく見ると、人的接触の大きな Leisure and hospitality が何と+280千人増と非農業部門全体の+916千人増の⅓近くを占めています。私の目から見ても、2月から3月にかけての米国経済はかなりホンモノの景気・雇用の回復に見えます。これに、バイデン政権の積極的な財政支援政策が加わるわけです。ひるがえって、我が国政府はワクチン接種はまったく一般国民には普及させることが出来ず、欧州諸国のように消費税率の一時的な引下げ政策や米国のような財政支出の拡大もできず、もっぱら、COVID-19の感染拡大は国民の責任に押し付けられたままです。昨年の今ごろはホストクラブが槍玉に上げられていましたし、その後は接待を伴う夜の会合が悪者にされ、最近では、若者の卒業記念や新入生歓迎などのコンパが感染拡大を招いているという、何とも科学的根拠のないエピソードベースの都市伝説もどきの見方が、政府や首都圏自治体から示されているというお粗末さです。目先半年のうちに政権選択を占う衆議院の総選挙があります。国民の的確な選択が示されることを私は強く期待しています。
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