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2021年4月17日 (土)

今週の読書は遅ればせながらの綾辻行人『Another 2001』のほか計4冊!!!

今週の読書は、昨年9月発売の綾辻行人『Another 2001』のほか、リベラル左派のジャーナリストによる気候変動問題に関するコラム集、新書に文庫本と以下の4冊です。私の趣味に従って、綾辻行人『Another 2001』に大きな比重を起きつつ読書感想を取りまとめています。なお、今年に入ってからの読書は、新刊書読書としてブログにポストした分に限定して、1~3月に56冊、4月は今日の分までで毎週4冊×3週で12冊、計68冊となっています。

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次に、ナオミ・クライン『地球が燃えている』(大月書店) です。著者は、カナダ生まれのリベラル派、というよりも、明確に左派のジャーナリストです。英語の原題は On Fire であり、2019年の出版です。本書では、地球温暖化や気候変動についてのコラムを執筆の時期の順で取りまとめています。ですから、特に目新しい点はなくて、逆に、トピックが飛ぶ印象があるかもしれません。ジャーナリストがいろんな観点から気候変動を論じているわけですから、いろんな事実関係が網羅されていますが、もっとも重要なのは、本書の冒頭で強調されているように、気候変動問題は「市場経済の生み出す局所的な危機と切り離せるものだとは思っていない。」(p.44)との観点が重要です。もちろん、その直後に、資本主義の解体を否定しているんですが、本書の著者だけでなく、英国のかの有名な『スターン報告』The Stern Review でも、"climate change is the greatest and widest-ranging market failure" と強調されているのですから、基本的な認識は共通しているわけです。その上で、エネルギーの生産と消費に関するネオリベな経済政策への批判、グローバル化の進展に関する懸念、最後には、グリーン・ニューディールの必要性などを論じています。日本では遅れている気候変動に関する議論なんですが、歴史的並びに最新の論調に接することが出来ます。

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次に、綾辻行人『Another 2001』(角川書店) です。著者は、我が母校の京都大学ミス研出身の新本格ミステリ作家であり、ホラーにも手を伸ばしている作家です。奥さまはホラー作家の小野不由美だったりします。本書は、1作めの『Another』、スピンアウト作品の『Another エピソードS』に続くシリーズ第3巻です。シリーズ特設サイトも出版社が開設しています。ついでながら、続巻があり、それでもってシリーズを締めくくる予定らしいです。作者のあとがきも含めれば800ページを超える超大作で、私が3日半かかって読了するくらいのボリュームです。なお、続巻は8年後を舞台とする『Another 2009』(仮)らしく、もしもそうなら、本書の主人公である比良塚想がかかっている精神科医の碓氷希羽が小学2年生ですから、中学3年生を1年超えてしまいます。次作の最終作では成長した碓氷希羽が主要な役割を果たすんではないか、と私は想像していたのですが、違うかもしれません。いずれにせよ、800ページのボリュームながら、読み飽きることはありません。プロットとしては超常現象ですので、何ともいえませんが、死者の発見に至る謎解きは秀逸ですし、いかにも綾辻行人らしくミスリードを誘う表現力は抜群です。なお、1作めの『Another』は映画化されており、私はこの橋本愛主演の映画も見ています。
以下、シリーズ全体に渡るネタバレばっかりですので、未読の方はご注意下さい。まず、舞台は夜見山中学校です。これはシリーズ共通です。たぶん、続巻もそうでしょう。夜見山中学校の3年3組が中心になります。この夜見山中学3年3組に死者がよみがえってまぎれ込み、災厄が生じて人死がいっぱい出る、ということなんですが、その範囲は3年3組の担任教員と生徒の2等身以内、で定義されています。そして、まぎれ込んだ死者を死に還すことにより災厄が終了するんですが、この重大ポイントは人々の記憶から容易に忘れ去られてしまいます。そして、対策としては「いないもの」を指定して、3年3組のクラス全員がシカトする、という厳しいものです。1作めの『Another』では1998年の夜見山中学が舞台で、見崎鳴が「いないもの」になって、夜見山に引越してきた榊原恒一が主人公となります。そして、災厄の解決策を探すうちに、死者の色が判る見崎鳴の人形の目の力を使って、クラスにまぎれ込んだ死者をクラスの副担任である三神怜子であると特定し、主人公の榊原恒一が死者を死に還します。8月のクラス合宿の際に大規模な災厄が生じ、死者も多数出ましたが、その混乱の際に榊原恒一が三神怜子を死に還しています。なお、三神怜子は榊原恒一の母の妹ですから、叔母に当たります。スピンオフ作品の『Another エピソードS』は『Another』の8月のクラス合宿の前に1週間ほど夜見山を離れて緋波町に滞在していた見崎鳴が主人公で、その時のお話を榊原恒一が聞くという形を取っています。緋波町には見崎鳴の家の別荘があり、見崎鳴は賢木昇也の幽霊に出会います。賢木昇也は1987年の大災厄の年に夜見山中学3年3組であり、1996年に中学1年生の見崎鳴と出会ったことがあり、1998年5月に自殺してしまいました。なぜかは忘れましたが、賢木昇也の自殺は伏せられ、幽霊は自分の死体を探し始めます。ここで、自分のことを賢木昇也の幽霊だと考える小学6年生が本作『Another 2001』の主人公となる比良塚想です。3年後ですので中学3年生になり、夜見山中学3年3組の生徒となっています。舞台は2001年です。1作めの『Another』では生徒ではなく、副担任の教師が死者だったというオチですが、本作『Another 2001』では、対策を厳重にし「いないもの」を2人指定しまったがために、よみがえってまぎれ込む死者の方も2人になってバランスが取れてしまう、というのがトリックの鍵になります。最初に死に還される死者は主人公である比良塚想の従姉妹の赤沢泉美であり、1作めの『Another』と同じで見崎鳴の人形の目が特定して、主人公である比良塚想が濁流流れる川に落として、死者を1人死に還すのですが、その後も災厄は発生し死者が出ます。そして、2人めのまぎれ込んだ死者も見崎鳴が入院患者の牧瀬未咲であると特定して、比良塚想ではなく見崎鳴がナイフを振るって死に還します。2001年9月11日のテロも効果的に取り入れられています。

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次に、三浦瑠麗『日本の分断』(文春新書) です。著者は、国際政治学者で山猫総研の主催者です。本書のタイトルは判りにくいのですが、副題が「私たちの民主主義の未来について」となっていて、コチラの方に私は興味ありましたし、それなりに為になったのも分断の方ではなく、民主主義の分析と未来の方でした。ということで、特に本書の前半は山猫総研などが2019年に実施した「日本人価値観調査」のデータ分析になっています。おそらく、私の想像ではサンプル数が少なすぎてフォーマルな定量分析ができなかったのであろうと思いますが、一般的にも判りやすいグラフを示した印象論で分析を進めています。まず、分断の方については、銃規制や妊娠中絶などで超えられない溝のある米国と違って、日本では大きな分断は生じていないと結論しています。それはそうでしょう。その上で、日本における対立軸は安保・外交問題と改憲問題であると指摘します。そのため、野党が本格的に政権を取るためには、現在の自公政権と同じように、とまではいわないとしても、外交と安全保障でリアリズム政策を取る必要を説きます。私はここまでいうと否定的です。そうなると、ホテリングのアイスクリーム・ベンダー問題になってしまって、各政党が同じ政策で争うことになれば、資金力で決着がつきそうな気がします。加えて、私は昨年までの安倍政権は経済政策がとても左派的でリベラルであったのが特徴のひとつと考えています。その点も本書では見逃されています。おそらく、現政党の中で最左派の共産党が政権を取れば、理論的根拠なく財政均衡を目指しそうな気がするのは私だけではないと思います。

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最後に、綾辻行人『緋色の囁き <新装改訂版>』(講談社文庫) です。著者については、先の『Another 2001』と同じですのでパスします。本書はもともと1988年に単行本として出版され、もちろん、文庫化されて、その上で、昨年に<新装改訂版>として出版されています。いわゆる「囁き」3部作の最初の作品です。この作品のほかは『暗闇の囁き』と『黄昏の囁き』になります。私はすべて読んでいますが、登場人物については共通部分はなかったのではないかと記憶しています。記憶が間違っているかもしれませんが、たぶん、そうです。しつけが厳しいことで有名な名門女子校に転校して来た主人公の周囲で起こる殺人事件、かなり、綾辻作品らしくホラー調の進行もあいまって、おどろおどろしく進みますが、その殺人事件の謎解きがメインです。最初の被害者の兄が事実関係を調査したりしますが、ホームズのようないわゆる名探偵は登場しません。私は物覚えが悪いので、謎解きのミステリは何度読んでも新鮮で楽しめるのですが、この作品はなぜか記憶にあって、途中ですっかり思い出してしまいました。でも、『暗闇の囁き』と『黄昏の囁き』については、まだ記憶の底に眠っているような気もしますので、<新装改訂版>がでたら読むんではないかと思います。

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