携帯電話料金のマイナス寄与で下落の続く消費者物価指数(CPI)の先行きやいかに?
本日、総務省統計局から4月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は▲0.1%の下落と、9か月連続の下落を示しつつも、下落幅は徐々に縮小しています。他方で、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+0.3%とプラス幅を拡大しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
4月全国消費者物価、0.1%下落 携帯通信料が26.5%下落
総務省が21日発表した4月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.5と前年同月比0.1%下落した。下落は9カ月連続。携帯大手各社の値下げにより、携帯通信料が26.5%下落したことが主な押し下げ要因となった。一方、原油相場の上昇基調を反映してエネルギーは上昇に転じたが、携帯通信料の下落は補えなかった。
NTT(9432)傘下のNTTドコモのオンライン専用プラン「アハモ」など、3月から4月にかけ携帯大手各社が割安な新料金プランを開始した。携帯通信料の下落率は、比較可能な2001年以降で最大となり、総合指数を0.50ポイント押し下げた。
エネルギー価格は前年同月比で0.7%上昇した。上昇は20年1月以来、1年3カ月ぶりとなる。内訳は、ガソリンが13.5%上昇となったほか、原油相場の影響がガソリンより遅行する電気代や都市ガス代もマイナス幅が縮小した。
宿泊料は前年同月比3.1%上昇した。上昇は19年12月以来となる。総務省の担当者は「昨年、新型コロナウイルス感染拡大の影響で大きく落ち込んだ反動が出ているだけで、旅行者は増えていない」と話し、需要増による料金上昇ではないとの見方を示した。
在宅勤務の長期化を背景に、ルームエアコンなど家庭用耐久財は3.0%上昇した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は前年同月比0.2%下落と、4カ月ぶりに下落した。生鮮食品を含む総合は0.4%下落と、7カ月連続で下落した。天候が良く、トマトやレタスなど生鮮野菜が10.5%下落した。
いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲0.2%の下落でしたので、ほぼジャストミートしました。CPIの下落が続いていることについては、一昨年2019年10月からの消費税率引上げの効果が昨年10月統計で剥落したり、幼児教育費や高等教育費も3月でそのマイナス効果が終了したものの、政策要因に近い価格動向として、政権からの要請に基づく携帯電話料金の引下げが無視できません。すなっわち、通信料(携帯電話)の上昇率は▲26.5%と大きく下落しており、総合への寄与度も▲0.50%となっています。他方で、エネルギーの対前年同月比上昇率は3月統計まではマイナスだったんですが、本日公表の4月統計ではとうとうプラスに転じて、総合指数への寄与度は+0.39%に達しています。ですから、この携帯電話通信料の強引な引下げがなければ、そろそろコアCPI上昇率はゼロないしプラスになっていてもおかしくないわけです。
最後に、先行き物価動向については、国際商品市況の石油価格の動きなどに従って、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率もゼロ近傍で推移するのではないか、と私は考えています。言葉を変えていえば、日銀のインフレ目標+2%の達成はまだ先のことだという気がします。
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