上昇幅を拡大する4月統計の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?
本日、日銀から4月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+1.0%まで上昇幅を拡大しし、変動の大きな国際運輸を除く平均も+0.9%の上昇を示しています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックに対応した緊急事態宣言が首都圏などで今でも続いていますが、昨年の4~5月が経済活動の底でしたが、その反動が現れています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
4月の企業向けサービス価格、前年比1.0%上昇 1年前の反動で
日銀が26日発表した4月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は104.9と前年同月に比べ1.0%上昇した。プラスは2カ月連続となった。1年前の4月は新型コロナウイルスの感染拡大で初の緊急事態宣言が発出された時期で、広告や一部の不動産などの価格が落ち込んでいた。今年4月はこの反動が出た。
前年同月は各種キャンペーンの中止で、テレビをはじめとした広告の価格が下落した。不動産でも店舗賃貸の価格が落ち込んだ。今年4月はこれらの反動で前年に比べ価格が上昇した。
日銀は足元について「3回目の緊急事態宣言が発令されているが、対象地域が限られており、2020年4月ほどの厳しさはみられていない」と分析している。
企業向けサービス価格指数は前月比では0.4%下落した。広告で21年3月、期末に向けた企業による積極的な出稿姿勢で価格が上昇した反動が出た。
同指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象の146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは65品目、下落は51品目だった。
いつもながらよく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。いずれも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。

上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率は、2019年10月の消費税率引上げの効果が剥落した昨年2020年10月からマイナスに陥っていましたが、今年2021年2月統計では保合いになり、3月統計でとうとうプラスに転じました。直近で利用可能な4月統計でもプラスを維持し、上昇幅を拡大しています。ただ、昨年2020年4~5月が第1次の緊急事態宣言の中で経済活動の水準がほぼ底だったため、その反動で今年は前年同月比上昇率が上がっている、という面も否定できません。少し詳しく、SPPIの大類別に基づく前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率への寄与度で見ると、テレビ広告、インターネット広告、新聞広告などの広告が前年同月比+11.7%、寄与度+0.52%と大きな部分を占めています。景気に敏感な項目ながら、前年からの反動も含んでいます。また、不動産が上昇率+3.7%、寄与度+0.35%、運輸・郵便が上昇率+0.7%、寄与度+0.11%などとなっています。不動産については、前年の賃貸料の落ち込みからの反動が見られ、運輸・郵便では国際商品市況における石油価格の上昇を反映しているものと考えられます。前年からの反動という要素が無視できませんから、上のグラフに見られるように、季節調整していない原系列の統計ながら、前月比は▲0.4%の下落となっています。繰り返しになりますが、景気に敏感な広告は前年同月比では+11.7%の上昇ながら、前月比では▲7.3%の下落となっていたりします。今もって、東京都や関西圏などでは緊急事態宣言が解除できずにいるわけで、COVID-19の経済的な影響はワクチン接種が進まない限り改善しない、と覚悟するべきです。物価ももちろん同じです。
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