順調に上昇率の拡大が続く5月統計の企業向けサービス価格指数(SPPI)
本日、日銀から5月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+1.0%まで上昇幅を拡大しし、変動の大きな国際運輸を除く平均も+0.9%の上昇を示しています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックに対応した緊急事態宣言が5月中は首都圏などで続いていましたが、昨年の4~5月が経済活動の底でしたが、その反動が現れています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
5月の企業向けサービス価格、前年比1.5%上昇 広告や外航貨物輸送など堅調
日銀が24日発表した5月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は104.8と、前年同月比で1.5%上昇した。前年比のプラスは3カ月連続。前年同月に新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて経済活動が停滞していた反動が大きく出た。広告や外航貨物輸送などの価格が上昇している。
前年同月は新型コロナの感染拡大で、企業の広告出稿が大幅に減少した。広告単価も下がっていたが、これらの要因がはく落。外需の影響を強く受ける外航貨物輸送では、中国向け鉄鉱石の堅調な荷動きが押し上げ要因となった。運賃に含まれる燃料油価格の上昇も影響した。半面、前月比では0.2%下落した。
同指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。国際商品市況の影響を大きく受ける財に比べると、サービス価格の回復は緩やかだ。日銀は「ワクチン接種が進捗する中で、新型コロナが価格に与える影響を注視したい」としている。
調査の対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは76品目、下落は38品目だった。
いつもながらよく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。いずれも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。

上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率は、2019年10月の消費税率引上げの効果が剥落した昨年2020年10月からマイナスに陥っていましたが、今年2021年2月統計では保合いになり、3月統計でとうとうプラスに転じました。直近で利用可能な5月統計では上昇幅を拡大しています。基本的には、石油をはじめとする国際商品市況の上昇がサービスにも波及していると私は考えていますし、加えて、昨年2020年4~5月が我が国では第1次の緊急事態宣言の中で経済活動の水準がほぼ底だったため、その反動で今年はこの時期の前年同月比上昇率が上がっている、という面も否定できません。少し詳しく、SPPIの大類別に基づく前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率への寄与度で見ると、テレビ広告、インターネット広告、新聞広告などの広告が前年同月比+15.3%、寄与度+0.64%と大きな部分を占めています。景気に敏感な項目ながら、前年からの反動に加えて、東京オリンピック関連の入稿もありそうな気がします。また、不動産が上昇率+4.3%、寄与度+0.40%、宿泊サービズや土木建築サービスなどの諸サービスが上昇率+0.5%ながら、寄与度は+0.19%あり、運輸・郵便も上昇率+1.1%、寄与度+0.19%などとなっています。不動産については、前年の賃貸料の落ち込みからの反動が見られ、運輸・郵便では国際商品市況における石油価格の上昇を反映しているものと考えられます。前年からの反動という要素が無視できませんから、上のグラフに見られるように、季節調整していない原系列の統計ながら、前月比は4月の▲0.4%0.3%下落に続いて、5月も▲0.2%の下落を記録しています。同じような現象で、景気に敏感な広告は前年同月比では+15.3%の上昇ながら、前月比では▲2.7%の下落となっていたりします。6月20日まで東京都や関西圏などでは緊急事態宣言が解除できなかったわけで、新規感染者数は横ばいないし微増を示していることから、COVID-19の経済的な影響はワクチン接種が進まない限り改善しない、と覚悟するべきです。消費者物価(CPI)やSPPIなどの物価ももちろん同じです。
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