みずほリサーチ&テクノロジーズ「ワクチン接種加速の経済効果」やいかに?
昨日、ニッセイ基礎研のリポート「新型コロナワクチンをすぐにでも接種したい人とは?」と「新型コロナワクチンをすぐには接種しない人の理由と特徴」を取り上げた際に、チラリと言及したのですが、6月18日にみずほリサーチ&テクノロジーズから「ワクチン接種加速の経済効果」と題するリポートが明らかにされています。最初に、菅総理が「1日100万回」と発言した際には、加藤官房長官が否定したりしたんですが、我が大学でも7月から職域接種が始まりますし、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が加速していることは事実であり、とても興味あるリポートです。図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。
私はエコノミストであり、専門外ですので、ワクチン接種の感染への影響などは十分に理解できているとは思えませんから、まず、いきなりながら、上の図表はリポートから ワクチン接種ケース別の日本経済への影響 を引用しています。当然ながら、ワクチンによる免疫獲得効果で新規感染者数が減少に転じるわけですが、このリポートではベースラインとして1日50万回と設定しており、上の左側のグラフの点線ケースがこれに当たり、感染者が減少傾向が明確になりピークアウトするのは9月に入ってからと見込まれる一方で、100万回ケースと125万回ケースでは新規感染者数がピークアウトする時期がそれぞれ8月上旬、7月下旬に早まるとともに、ピークの山もわずかながら低くなると予想されています。これに従って、、経済活動の正常化時期はベースラインの50万回ケースでは2022年4月ころなんですが、100万回ケースでは2022年1月ころと、まるまる1四半期前倒しすることが可能となる見込みとなっています。さらに、当然ながら、125万回ケースではもっと早まり、2021年10~12月期中に人出をコロナ前水準に戻すことができると見込まれています。ですから、ワクチン接種が新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の終息を早める大きな要因と考えるべきです。そして、ワクチン接種によるCOVID-19終息の早期化による経済効果は、ベースラインの50万回ケースとの比較で、1日100万回ケースがGDP比+1.1%、1日125万回ケースでは+2.1%あると試算されています。
次に、上の図表はリポートから 対人サービス業の売上への影響と雇用者所得への影響 を引用しています。2021年度において、1日50万回の接種ベースラインペーとの対比で見た対人サービス業の売上の増加率を試算すると、1日100万回まで加速した場合は大雑把に10%から20%の増加、1日125回まで加速した場合はほぼ20%から30%の増加が期待できます。サービス業は雇用吸収力が大きく、雇用への波及効果も大きいことから、1日100万回まで加速した場合、ベースライン対比で2021年度の雇用者所得は+2.4兆円増、雇用者数は+30.6万人増と試算しています。さらに、1日125万回まで加速した場合、雇用者所得は+4.0兆円増、雇用者数は+57.0万人増とさらに大きくなります。雇用者所得の2次波及効果も右側のテーブルに示されている通りです。
以上の通り、基本的にはワクチン接種の経済的効果は極めて大きいと考えるべきです。しかしながら、他方で、英国ではワクチン接種が進んだにもかかわらず変異株の感染力が強くてロックダウンが続いているのも事実です。ですから、この試算結果をどう評価するのか、すなわち、やや過大推計の恐れはないのか、といった批判的視点は必要と私は考えていますが、そうはいいつつも、ワクチン接種の加速化が必要であることはいうまでもありません。
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