コロナ下の「男女共同参画白書」やいかに?
先週金曜日の6月11日に、内閣府から「男女共同参画白書」(令和3年版)が公表されています。白書冒頭の特集で「コロナ下で顕在化した男女共同参画の課題と未来」と題して、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックで女性に特に強い悪影響が及んだ点を分析しています。すなわち、「製造業が強い影響を受け『男性不況』ともいわれた平成20(2008)年のリーマンショックと対比して,『女性不況(シーセッション(She-Cession))』と呼ばれることもある。」と指摘しています。このブログでも、雇用や所得の点から簡単に取り上げておきたいと思います
まず、上のグラフは、リポートから 就業者数の推移 のグラフを引用しています。私は東京から京都への引越し直後でしたから忘れもしませんが、昨年2020年4月6日から緊急事態宣言に入りました。そして、男女別の就業者数は2020年4月に前月差で見て、男性が▲39万人間を記録した一方で、女性は何と▲70万人間となっています。男女で2倍近い開きがある話目です。COVID-19パンデミック下で、決して、男性の就業が確保されたわけではありませんが、女性の就業が大きく損なわれたことはCOVID-19の経済的なダメージの中でも特筆されるべきであると私は考えています。ただし、その後の回復も女性の方が急速に進んでおり、昨年2020年3月から今年2021年3月までの12か月で見ると女性が▲10万人減であるのに対して、男性は▲42万人減となっています。回復が早いのはいいのですが、逆に見て、女性が雇用の調整弁として使われていて、変動の大きな部分を担っっているという見方もできます。
次に、上のグラフは、リポートから 雇用形態別雇用者数の前年同月差の推移 のグラフを引用しています。ここでは先ほどの就業者の性別の動向が裏付けられています。すなわち、女性は非正規雇用が減少している一方で正規雇用もそれなりに増加しており、特に最近時点では非正規雇用の減少にかなりの程度見合うだけの正規雇用の増加が見られるのに対して、男性は一部の例外的な月を除けば正規雇用も非正規雇用もどちらも減少しています。全体として、女性の雇用の回復が早いのは正規雇用の部分で生じていることがうかがわれます。
次に、上のグラフは、リポートから2020年における 産業別雇用者の雇用形態別割合 のグラフを引用しています。見れば明らかな通り、建設業、製造業、情報通信業、運輸業・郵便業などは男性正規雇用の比率が高い一方で、卸売業・小売業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業などの対人接触の多いセクターは女性非正規雇用の占める割合が高くなっていて、まさに、この女性非正規雇用の働く場でコロナ・ショックが緊急事態宣言という形で生じていることが理解できます。
最後に、上のグラフは、リポートから 雇用形態別個人年収、雇用形態別個人年収の変化 のグラフを引用しています。正規雇用であっても女性は男性よりも400万未満の割合が高く、非正規雇用では男女ともに400万未満が大多数を占めています。加えて、コロナ後に収入が減少した比率は、男女とも正規雇用であれば30%に満たないのですが、非正規雇用出れば30%を上回ります。このあたりも、非正規雇用のコロナによる収入の悪化がうかがわれます。
最後に、個人の目標として、あるいは、教師から学生に対するアドバイスとして、正規雇用に就職するという目標ないしアドバイスは大いに可能性あるところですが、政府として「非正規雇用にはならないように」というのは政策対応とはなりえません。政策対応としては同一労働同一賃金とともに、非正規雇用における雇用の安定は必要と私は考えています。
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