「OECD経済見通し」の日本の成長率はホントに上方改定されたのか?
5月31日に経済協力開発機構(OECD)から「OECD経済見通し」 OECD Economic Outlook, Volume 2021, Issue 1 が公表されています。まず、プレス向けのプレゼンテーションからOverviewを引用すると以下の通りです。
4点上げられており、見ての通りなんですが、おそらく、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの最悪期はすでに過ぎており、将来見通しはリバウンドもあって明るくなっていますが、跛行性や格差が大きく、経済回復はワクチン接種のスピードにかかっている、というのは、OECDの従来からの考えと同じだと思います。
続いて、OECDのサイトから成長率の見通し総括表を引用すると上の通りです。各年の成長率見通しの数字の右側にある矢印は前回2020年12月の見通しからの改定の方向なのですが、大いに注意して見る必要があります。というのは、昨年2020年12月の見通しの後に今年2021年3月9日に「OECD経済見通し中間報告」OECD Interim Economic Outlook が公表されており、このリポートでは日本の成長率は今年2021年+2.7%、来年2022年+1.8%とされており、少なくとも上の表にある今年2021年の+2.6%成長というのは、昨年2020年12月ではなく、直近の見通しから見れば▲0.1%ポイントの下方修正という点です。私の見た範囲でも、日経新聞の記事では、この点は正確に報じられています。引用すると、「日本の予測は前回から0.1ポイント下方修正し、2.6%にとどまった。輸出の回復は続くものの、ワクチン接種の遅れや潜在的な成長率の低さが響いている。」ということになります。従って、日本についてのカントリーノートでは、以下のように指摘されています。
Japan
In April, quasi-emergency measures were introduced to allow governors to order restaurants and bars to shorten their opening hours (with penalties and compensation) in affected cities. However, these measures appear to have been insufficient to stop the spread of new variants. Hospital capacity to deal with COVID-19 infections is limited - especially in Tokyo and Osaka currently - implying that stronger measures are required to bring infections under control. The vaccination campaign only started in mid-February and has made slow progress compared with other OECD countries
要するに、緊急事態宣言によって自治体から飲食店への時短営業要請を可能になったが、これらの対策は新たな変異株の感染拡大防止には不十分であり、特に、東京や大阪ではより強力な措置が必要で、ワクチン接種についても2月中旬にようやく開始されたが、他のOECD加盟国に遅れている、ということになります。緊急事態宣言による感染拡大への効果については、何ともいえないと私は考えていますが、客観的な指標から見て、日本がワクチン接種で他のOECD加盟国に遅れている、というか、大きく遅れている、というのは事実だろうと考えています。何度も繰り返しましたが、経済回復はワクチン接種にかかっており、日本政府の対応はまったく不十分です。
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