6月の貿易統計は世界と日本の景気局面を反映する!!!
本日、財務省から5月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列で見て、輸出額は前年同月比+48.6%増の7兆2208億円、輸入額も+32.7%増の6兆8376億円、差引き貿易収支は+3832億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを手短に報じた記事を引用すると以下の通りです。
6月の貿易収支、3832億円の黒字
財務省が21日発表した6月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は3832億円の黒字だった。黒字は2カ月ぶり。QUICKがまとめた民間予測の中央値は4599億円の黒字だった。
輸出額は前年同月比48.6%増の7兆2208億円、輸入額は32.7%増の6兆8376億円だった。中国向け輸出額は27.7%増、輸入額は17.6%増だった。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、2つの統計を並べましたので長くなってしまいました。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスで貿易収支は約+4600億円の黒字でしたし、レンジの下限は+3490億の黒字でしたので、それほど大きなサプライズはなかったと私は受け止めています。季節調整していない原系列の統計の前年同月比で見て、米中をはじめとする世界各国の景気回復により輸出額が+50%近い増加を見せ、うち、数量が+37.2%増を記録しています。ただし、昨日のこのブログでも軽く取り上げたように、米国経済は昨年4月が谷だったわけで、なにぶん、昨年4~6月期がコロナ・ショックの底であって、そのリバウンドが大きいものですから、それほど単純な評価は控えるべきです。また、先月5月統計では輸入の増加のうち医薬品の寄与が大きくなっていましたが、今月6月統計ではすっかり落ち着いてしまっています。すなわち、5月統計では医薬品輸入額の伸びが+30%超だったのが、6月統計では+7.5%増にとどまっており、特に、数量ベースでは▲13.6%減を記録しています。ただし、米国からの医薬品輸入は+20.9%増、EUからも+15.2%増となっている一方で、米国・EUとも輸入数量は▲20%減を上回る減少です。ワクチン供給=輸入がストップしているのかどうか、貿易統計からだけでは判断がやや難しいところです。

続いて、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出金額指数の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数(CLI)の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国向けの輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。なお、2枚めと3枚めのグラフについては、わけが判らなくなるような気がして、意図的に上限や下限を突き抜けるスケールのままにとどめています。グラフからも明らかな通り、OECD加盟の先進国も中国も、ワクチン接種で新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響を脱しつつあり、中でも米国はバイデン政権の大型財政政策で急速な回復を見せています。我が国だけがワクチン接種も進まず、世界経済の回復に伴う輸出の増加をテコに景気回復を目指す政策を展開しているようです。
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