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2021年7月28日 (水)

国際通貨基金(IMF)による「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update で日本の成長率はどうして下方改定されたのか?

昨日7月27日、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。4月時点の「世界経済見通し」から、先進国の今年2021年の成長率見通しが+5.1%から+5.6%に+0.5%ポイント上方改定された一方で、日本については+3.3%成長から+2.8%に▲0.5%ポイントの下方改定となっています。同時に、新興国・途上国の成長率見通しも+6.7%から+6.3%に▲0.4%ポイント下方改定されています。まず、IMFのサイトから成長率見通しの総括表を引用すると以下の通りです。なお、テーブルの画像をクリックすると、別タブで詳細な見通し総括表のpdfファイルが開きます。

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世界経済の成長率は、パンデミックの昨年2020年に▲3.2%のマイナスを記録した後、今年2021年は+6.0%と大きくリバウンドすると見込まれています。今年のプラス成長でもって、昨年にマイナス成長を十分カバーするわけです。しかしながら、先進国に着目すると、リバウンドで昨年のパンデミックのマイナス成長をカバーできるのは米国だけであり、欧州各国や我が日本においては、昨年2020年のマイナス幅に今年2021年のプラスが追いついていません。加えて、日本の場合は、今年2021年4月時点の見通しから▲0.5%ポイント下方改定されています。今回の見通しの副題は Fault Lines Widen in the Global Recovery となっていて、リポートp.2冒頭のパラでは、"Economies are diverging even further, influenced by differences in the pace of vaccine rollout and policy support." と分析されています。すなわち、ワクチン接種のペースと政策支援が断層線の差をもたらしているという分析です。成長率が下方改定された日本において、決定的にワクチン接種のペースが遅いことはいうまでもありません。チラリと見た日経新聞でも「ワクチンで経済回復に差 米欧上振れ、新興国は下方修正」というタイトルの記事だったんですが、この場合、日本は新興国に分類されるのかもしれないと考えてしまいました。

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次に、上のグラフは、リポートp.2から Figure 1. Vaccine Courses を引用しています。7月6日時点での供給済みワクチンと投与済みワクチンの人口比です。供給と投与の差は在庫ということになるのかもしれません。先進国で圧倒的にワクチン普及が進んでいるのが見て取れます。世界各国の状況については、ビジュアル的に見やすいので、私はNHKのサイトを利用しているのですが、日本はまだかなり遅れているとしか見えません。今日のお昼休みに確認したところでは、日本の100人あたり接種回数は62.77回であり、トルコ、アルゼンチン、ブラジルの後塵を拝しています。

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次に、上のグラフは、リポートp.5から Figure 4. Household Savings and Government Support durin g the Pandemic を引用しています。横軸が財政支援のGDP比、縦軸が累積された家計の超過貯蓄です。赤いラインが1次近似線で、日本はそのラインのはるか上にあります。財政支援は米国に次ぐグループで、英国、カナダ、オーストラリアなどとともに、かなり手厚かったのですが、消費に回らず超過貯蓄として溜め込まれているのが実情です。キチンとした分析をしているわけではなく、直感的な見方ながら、背景には雇用不安があるように私は感じています。特に、非正規雇用の間では先行き雇用不安が消費を鈍らせている可能性があるのではないでしょうか。

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最後に、上のグラフは、リポートp.14から Figure 8. Employment Rate を引用しています。従来から私の主張で、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の最大の経済的帰結のひとつは格差の拡大と考えています。中年層よりも若年層が、高スキル層よりも低スキル層が、それぞれ、雇用を減少させていることが見て取れます。

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