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2021年7月29日 (木)

大和総研リポート「サステナブル投資残高の増加は継続」やいかに?

知っている人は少ないと思いますが、先週7月19日に Global Sustainable Investment Alliance(GSIA)から Global Sustainable Investment Review 2020 が公表されています。2年に1度のリポートです。私がボケっとしている間に、大和総研から昨日7月27日に「サステナブル投資残高の増加は継続」と題するリポートが明らかにされています。グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは、大和総研のリポートから 図表1 各国・地域のサステナブル投資残高 を引用しています。主要国の2020年時点におけるサステナブル投資残高の合計は約35兆ドルと、2年前の前回調査から約15%増加しています。しかも、軽く想像される通り、多くの主要国でサステイナブル投資は一貫して増加しており、唯一、2020年の欧州だけが例外となっています。日本は、2016年0.5兆ドルだったものが、2018年2.2兆ドル、2020年2.9兆ドルと増加しています。結果として、日本のほか、米国・カナダ、欧州、オーストラリア・ニュージーランドの主要国で見て、2020年のサステイナブル投資に占める米国のシェアが48%、欧州のシェアが34%、日本が8%、などとなっています。各年の前年末が調査時点ですから、2020年の計数は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響はないと考えてよさそうです。

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次に、上のグラフは、大和総研のリポートから 図表3 投資手法別サステナブル投資残高 を引用しています。前回調査まではネガティブ・スクリーニングがもっとも多かったんですが、2020年にはESGインテグレーションがトップとなっています。各投資手法の概要は大和総研のリポートにテーブルがありますが、「ネガティブ・スクリーニング」とは、たばことか、ギャンブルに関連する企業を投資対象から除外するというもので、「ESGインテグレーション」とは、財務などの投資情報とESG情報を統合して総合的に判断するというものです。最後に、多くの主要国でサステイナブル投資が投資の額として増加しているとはいえ、欧州については少し異なっていて、私の知る限りでも、GSIAのリポートで利用可能な2014年のデータをピークにして、欧州の総投資に占めるサステイナブル投資のシェアは低下を続けています。これについて、大和総研のリポートでは、欧州で進められているサステイナブル・ファイナンス行動計画によって、サステイナブル投資の定義 の厳格化が行われていることが背景にある可能性、を指摘しています。

2015年で成功裏に終了したMDGsに続いて、2030年をターゲットにしたSDGsの取組みが国連を中心に進められています。前のMDGsが政府主体であったのに対して、現在のSDGsは企業なども幅広く巻き込んだ取組みとなっているのが大きな特徴です。そのひとつの例としてサステイナブル投資の重視が上げられると私は考えており、もっと注目を集めていいと考えているのですが、我が大学でもほとんど無視されているに近いと私は見ています。国際的な活動をすすめる多国籍企業ではSDGsの取組みが必要との認識が欠けているように思えてなりません。

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