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2021年8月31日 (火)

半導体の供給制約で減産となった鉱工業生産指数(IIP)と着実な改善見せる雇用統計!!!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも7月の統計です。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲1.5%の減産でした。また、失業率は前月から▲0.1%ポイント低下して2.8%、有効求人倍率は前月から上昇して1.15倍と、雇用は着実に改善を示しているように見えます。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じた記事を手短かに引用すると以下の通りです。

7月鉱工業生産1.5%低下 2カ月ぶり、自動車など減産
経済産業省が31日発表した7月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は98.1となり、前月比で1.5%下がった。低下は2カ月ぶりで、自動車工業や電気・情報通信機械工業などが減産した。世界的な半導体不足の長期化や新型コロナウイルスの感染拡大による東南アジアからの部材調達の停滞が響いた。
全15業種のうち9業種が下がった。自動車工業は普通乗用車などの減産で3.1%、電気・情報通信機械工業はリチウムイオン蓄電池やセパレート形エアコンの生産が減って3.4%低下した。フェノールなどが減産した無機・有機化学工業は3.9%下がった。
「自動車やエアコンは半導体不足の影響が出た」(経産省)。自動車は感染拡大で経済活動が制限された東南アジアからの部材調達が滞ったことも影響した。
主要企業の生産計画から算出する生産予測指数は8月が3.4%の上昇、9月は1.0%の上昇となった。このうち自動車などの輸送機械工業は8月に7.3%の大幅な低下を見込む。9月は3.1%の上昇を見込むものの「東南アジアの感染拡大による部材調達の混乱を十分に織り込んでいない可能性があり下振れリスクがある」(同)という。
7月失業率2.8%、2カ月連続で改善 有効求人倍率1.15倍
総務省が31日発表した7月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は2.8%と前月から0.1ポイント低下し、2カ月連続で改善した。厚生労働省が同日発表した7月の有効求人倍率(同)は1.15倍で、前月から0.02ポイント上昇した。
新型コロナウイルス禍は長期化しており、厚労省は「雇用情勢は回復に向かっているわけではなく、依然厳しい状況」としている。
完全失業者(原数値)は191万人で、前年同月から6万人減だった。18カ月ぶりに減少した。男性は18カ月連続で増えた一方、女性が同8万人減で15カ月ぶりに減少した。就業者数(同)は6711万人で同56万人増加。卸売・小売業の増加が目立った。
有効求人倍率は仕事を探す人1人に対して何件の求人があるかを指す。有効求人数(219万人)が3カ月ぶりに増加した一方、有効求職者数(190万人)が前月比0.5%減少。相対的に有効求人倍率が上がった。求職活動を新型コロナウイルスのワクチン接種後まで控える動きがある。
産業別に新規求人(原数値)をみると、製造業の回復が前年同月比40.8%増と目立つ。コロナ禍で時短営業や酒類提供制限などの影響を受ける宿泊・飲食サービス業は厳しく、同0.9%減だった。コロナ禍前の19年7月と比べると44.5%減となっている。
地域差も大きく、就業地別の有効求人倍率は最高の福井県が1.95倍、最低の沖縄県は0.84倍で、1ポイント以上の差が出た。沖縄県のほか、東京都と神奈川県、大阪府は1倍を下回った。

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、2020年5月を直近の景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、生産は▲2.5%の減産との見込みで、レンジの下限が▲3.1%でしたので、大きなサプライズはありませんでした。加えて、足元の8月については、製造工業生産予測指数で見る限り、+3.4%の増産を予測しており、さらに、9月も+1.0%増と見込まれています。基本的に、引用した記事にもあるように、7月の減産は半導体の供給制約などによる自動車の減産に起因しており、自動車工業、電気・情報通信機械工業、無機・有機化学工業などにおいて原産が見られた一方で、生産用機械工業、パルプ・紙・紙加工品工業、電子部品・デバイス工業などでは増産しています。今後の生産の行方は半導体の供給制約次第という面はありますが、大雑把には、内需に依存する部分の大きい非製造業とは違って、世界経済の回復とともに製造業の生産は緩やかに回復方向にあるのは間違いないと私も考えていますが、半導体の供給制約に加えて、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミック次第で、それほど単純な道のりではない、と考えるべきです。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスについては、失業率が2.9%と前月統計から横ばいが予想されていた一方で、有効求人倍率は1.12倍と前月から改善する見込みであったものの、これらの予想を上回る改善が進んでいる印象です。人口減少過程に入った日本経済における人手不足の影響と考えられます。ただし、引用した記事にもあるように、首都圏や関西圏をはじめとする緊急事態宣言下で対人サービス産業では厳しい雇用情勢が続いていることも確かで、失業率が3%を下回り、有効求人倍率が1倍を超えているからといって、決して雇用が盤石というわけではない点は忘れるべきではありません。その意味で、日本経済の先行きについては本日公表の統計よりは悲観的な方向で考えるべきであると私は考えています。

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最後に、本日、内閣府から8月の消費者態度指数が公表されています。前月から前月から▲0.8ポイント低下して36.7を記録しています。消費者態度指数のコンポーネントの中でも、特に、「雇用環境」と「暮らし向き」の低下幅が大きくなっています。いつものグラフを上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで、ほかの鉱工業生産指数(IIP)や雇用統計と同じように、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。

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