輸出の増加が続く貿易統計と4か月ぶりの前月比マイナスを記録した機械受注の先行きやいかに?
本日、財務省から7月の貿易統計が、また、内閣府から6月の機械受注が、それぞれ公表されています。貿易統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列で見て、輸出額が前年同月比+37.0%増の7兆3563億円、輸入額も+38.5%増の6兆9153億円、差引き貿易収支は+4410億円の黒字を計上しています。機械受注の方も、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比▲1.5%減の8524億円を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を引用すると以下の通りです。
7月輸出37%増、米中向けが伸びる 財務省貿易統計
財務省が18日に発表した7月の貿易統計速報によると、輸出額は前年同月比37%増え7兆3563億円だった。経済回復で先行する米国への自動車輸出や中国向けの半導体関連の伸びが目立った。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は4410億円の黒字と、2カ月連続の貿易黒字となった。
輸出は5カ月連続で増えた。前年の新型コロナウイルスの影響の反動もあるが、2019年7月と比べても1割ほど多かった。輸出額は7月としては08年7月に次ぐ2番目に高い水準だった。自動車は前年同月比4割、自動車部品は6割増え、鉄鋼も88.3%増と伸びが目立った。
地域別にみると、米国への輸出が1兆3840億円で同26.8%増だった。自動車や自動車部品のほか、原動機の増加も寄与した。欧州連合(EU)向けは同46.1%増の6399億円だった。
中国向けは1兆5806億円で18.9%増えた。プラスチックが26.5%、半導体などの製造装置が21.4%伸びた。アジア向けも32.5%増えて4兆2076億円だった。鉄鋼が90%と高い伸びになった。
輸入は28.5%増の6兆9153億円だった。原油価格の上昇が影響し、数量ベースでは原油の輸入が減ったものの、金額ベースで2倍以上に増えた。ほかに鉄鉱石や非鉄金属の伸びが目立った。米国や欧州からの新型コロナのワクチンの輸入も全体を押し上げた。
6月の機械受注、前月比1.5%減 市場予想は2.9%減
内閣府が18日発表した6月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比1.5%減の8524億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は2.9%減だった。
製造業は3.6%増、非製造業は3.8%増だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は18.6%増だった。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
同時に発表した4~6月期の四半期ベースでは前期比4.6%増だった。7~9月期は前期比11.0%増の見通し。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、2つの統計を並べましたので長くなってしまいました。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスで貿易収支は約+2000億円の黒字でしたし、レンジの上限は+5000億円超の黒字でしたので、それほど大きなサプライズはなかったと私は受け止めています。季節調整していない原系列のデータでは、輸出入ともに前年同月比で大きく増加しているのですが、特に、輸入についてはワクチン輸入という特殊要因もあるとはいえ、石油価格の前年からの上昇が我が国輸入額の増加に寄与している印象です。ですから、上のグラフの下のパネルを見ても明らかなように、季節調整済みの系列では輸出入ともに前月比では減少していたりします。ですから、原系列の統計で見るか、季節調整済みの系列で見るか、によって貿易統計の印象が異なるのですが、いずれにせよ、主として欧米の景気回復に従って我が国の輸出は今後とも増加基調を続けるものと私は予想しています。ただし、中国は別としても、特に東南アジアで新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のデルタ株による感染拡大が深刻となってきている点については注意が必要です。

続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールにより勝手に直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て、前月比で▲2.9%減でしたしので、実績はやや上振れた印象があります。特に、2月の前月比▲8.5%減のリバウンドの要素があるとはいえ、3月+3.7%増、4月+0.6%増、5月+7.8%増の後の6月▲1.5%減ですから、まあ、何と申しましょうかで、「傷は浅い」といったところでしょう。しかも、季節調整のアヤとはいえ、6月統計では製造業+3.6%増、船舶と電力を除く非製造業もやっぱり+3.8%増となっていますので、コア機械受注は4か月ぶりの前月比マイナスながらそれほど悲観する必要はないものと私は受け止めています。その証拠に、7~9月期のコア機械受注の見通しは+11.0%増と見込まれており、4~6月期の+4.6%増から加速する可能性が示唆されています。
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