来週月曜日8月16日公表予定の4-6月期GDP統計速報1次QE予想は小幅のプラス成長か?
必要な統計がほぼ出そろって、来週月曜日の8月16日に4~6月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。ワクチン接種がなかなか進まない中で、東京オリンピックなどのため、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックがまたまた拡大して、首都圏や関西圏などに緊急事態宣言やまん延等防止重点措置が出ていて、影響が気にかかるところですが、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の4~6月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出たり解除されたり、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の動向は、ワクチン接種の行く方とともに、極めて不透明となっており、そういった影響も気にかかるところです。各シンクタンクでも、そのあたりは気にかけているようで、ほとんどの機関で先行きについて言及しています。逆に、先行きについて言及がないのは、下のテーブルの下の方の3機関、すなわち、伊藤忠総研と三菱UFJリサーチ&コンサルティングと三菱総研だけでした。いつもの通り、みずほリサーチ&テクノロジーズについては超長く引用していますが、実は、大和総研もGDPの需要項目をすべて引用するともっと長くなるため、消費だけに限定して引用しています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
日本総研 | +0.4% (+1.8%) | 7~9月期を展望すると、飲食店の営業時間短縮やイベントの収容人数の制限、外出自粛などの要請が継続されたものの、ワクチン接種の拡大などを受けて徐々にサービス消費が回復するため、4~6月期を上回るプラス成長となる見通し。 |
大和総研 | +0.2% (+0.6%) | 7-9月期の日本経済は、4回目の宣言が個人消費の重石になる2ものの、輸出や設備投資といった企業部門の回復が続くことでプラス成長になるとみている。その後はワクチン接種率が高まり、経済活動の正常化が進むことで、個人消費を中心に回復基調が鮮明になろう。 個人消費は、7-9月期は4回目の宣言発出などによりサービス消費が横ばいで推移する一方、財消費は堅調な増加が見込まれる。政府は埼玉・千葉・神奈川・大阪の4府県を8月2日から宣言の対象に加えるほか、宣言の期限を適用中の東京・沖縄を含め8月31日までに延長する方針を固めた。また北海道・兵庫・京都・石川・福岡の5道府県は新たにまん延防止措置の対象とする見込みだ。変異株の影響が大きかったり、ワクチンの接種ペースが低下したりすれば、宣言対象地域の更なる拡大や期間の延長が見込まれ、個人消費を下押しする可能性が高まる。他方、足元のワクチン接種ペースを維持することができれば、10-12月期以降はワクチン接種率の十分な高まりにより感染拡大リスクが低減し、個人消費は持ち直すとみている。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | ▲0.1% (▲0.3%) | 7~9月期も、変異株の感染拡大や4回目の緊急事態宣言の発令・延長などが下押し要因となり、弱い伸びになると予測している。 足元の新型コロナウイルスの感染動向をみると、感染力の強いデルタ型変異株(いわゆるインド型変異株、以下デルタ株)の広がりを受けて首都圏の新規感染者数が一段と増加しており、関東全体でみても5月の感染第4波のピークを超過している。特に、東京の新規感染者数は前週比約1.6倍で増加しており、デルタ株の感染力はアルファ株(英国型)対比で相当に強い可能性が高い。東京都iCDCの変異株スクリーニング検査では、デルタ株の比率が7/19~7/25時点で58.8%(速報値)と前週(46.3%)から上昇しており、アルファ株(英国型)からの急速な置き換わりがみられる。 政府は7月12日に東京都を対象として4回目の緊急事態宣言を発令し、酒類・カラオケ設備を提供する飲食店・遊興施設などに対する休業要請と、それ以外の飲食店・遊興施設への営業時間短縮要請(午前5時から午後8時まで)を実施した。現時点では人出を抑制する効果の十分な発揮には至っておらず(東京都の小売・娯楽モビリティの水準は本稿執筆時点でコロナ禍前対比▲25%近傍と、緊急事態宣言発令前からほぼ変わらない水準での推移が続いている)、首都圏や各地域で感染拡大が続いていることを受け、政府は7月30日に埼玉、千葉、神奈川、大阪に対して追加発令し、発令期間は8月31日まで(東京・沖縄も同日まで延長)とする方針だ。入院者数・重症者数は既に増加に転じており、8月上旬には医療体制のひっ迫が懸念されることから、規制措置の強化(例えば大規模イベントの中止、大規模商業施設への休業要請等)や発令期間の再延長がなされることも十分に考えられるだろう。 宣言の再延長・規制強化がなされる可能性が高いことに加え、感染者数の急増や医療体制のひっ迫を巡る悲観的な報道が増えることで(アナウンスメント効果)、先行きの人出は減少が見込まれる。7~9月期の個人消費は、対人接触型サービス消費を中心に低迷が続くと予測する。 さらに、車載向け半導体の供給不足を受けた自動車の減産が引き続き下押し要因となるだろう。巣ごもり需要や顧客側の在庫獲得競争を受けてマイコンの需要が急増しており、車載向けでも需要増に供給が追い付かない状況が続いている。半導体メーカーが増産投資をしても、装置発注から半導体出荷まで約2年を要するため、需要増を受けた設備投資が供給力に寄与するのは2022年以降になるとみられる。加えて、感染拡大による東南アジアからの部品供給減もマイナス要因になるだろう。自動車メーカーが夏場にかけて一部の工場の生産停止を発表する動きもみられており、7~9月期においても自動車の輸出・国内販売が下押しされるだろう。 |
ニッセイ基礎研 | +0.4% (+1.5%) | 当研究所では、緊急事態宣言の解除を前提として 7-9月期は前期比年率 5%程度の高成長を見込んでいたが、7/12から東京都で緊急事態宣言が発令されたこと(沖縄県は 5/23~)、新型コロナウイルス陽性者数の増加を受けて緊急事態宣言の期間延長、対象地域の拡大が見込まれることから、消費の低迷はさらに長期化し、高成長が実現する可能性は大きく低下した。現時点では7-9月期は前期比年率1%程度のプラス成長を予想しているが、実質GDPの水準はコロナ後のピーク(2020年10-12月期)にも届かない。 海外経済の回復を背景に輸出が堅調を維持すること、住宅投資、設備投資など民間消費以外の需要項目は緊急事態宣言の影響を受けなくなっていることから、マイナス成長に陥る可能性は低いとみられるが、実質GDPがコロナ前(2019年10-12月期)の水準を回復するのは2022年入り後までずれ込む可能性が高い。新型コロナウイルス陽性者数が増加するたびに行動制限の強化を繰り返す限り、経済の正常化は実現しないだろう。 |
第一生命経済研 | ▲0.0% (▲0.1%) | 7-9月期についても状況は芳しくない。足元で感染が急拡大し、緊急事態宣言が再発令・対象地域も拡大されたことで、夏場の個人消費は再び下押しされる。輸出や設備投資の増加が続くことからマイナス成長は避けられるとみるが、年前半の弱さの後にしては戻りは限定的なものにとどまるだろう。筆者は従来、ワクチン接種の進展から7-9月期に高成長が実現すると予想していたが、感染の予想以上の急拡大により、回復時期は10-12月期に後ずれする可能性が高くなった。現時点では、ワクチン接種のさらなる進展と、それに伴う感染抑制によりサービス消費がリバウンドすることで、年度後半以降は高成長が実現すると予想しているが、感染動向次第では回復時期がさらに後ずれするリスクもあることに注意が必要である。 |
伊藤忠総研 | +0.5% (+1.9%) | 4~6月期の実質GDP成長率は前期比+0.5%(年率+1.9%)と2四半期ぶりのプラスに転じた模様。個人消費が持ち直したほか、輸出が増勢を維持し設備投資が増加に転じたとみられる。今後も個人消費の持ち直し傾向は続くがコロナ感染拡大で勢いは抑制され、当面は輸出と設備投資頼みの景気回復となる見込み。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +0.4% (+1.7%) | 8月16日に内閣府から公表される2021年4~6月期の実質GDP成長率は、前期比+0.4%(年率換算+1.7%)とプラス成長に復帰する見込みである。大都市圏を中心として4月に3回目の緊急事態宣言が発出され、その後、地域が拡大され、期限も延長されたことを背景に個人消費が低迷したものの、設備投資、住宅投資、輸出が順調に増加したため、全体ではプラスとなった。ただし、1~3 月期の落ち込み分(前期比-1.0%)を取り戻せておらず、力強さに欠ける。 |
三菱総研 | +0.1% (+0.2%) | 2021年4-6月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.1%(年率+0.2%)とほぼ横ばいを予測する。 |
見れば明らかなんですが、みずほリサーチ&テクノロジーズと第一生命経済研はマイナス成長を予想していますし、ほぼほぼゼロ成長という見通しもありますが、小幅なプラス成長という見方も根強く、私はそれなりのプラス、すなわち、前期比年率で+1%か、やや上回る成長率を予想しています。逆にいえば、緊急事態宣言やまん延防止等特別措置がそれほど機能していない、という見方もあり得るんではないかと思います。足元7~9月期もそれなりのプラス成長だと私は考えていますが、その前提はワクチン接種の拡大であり、極めて不透明な気も同時にします。エコノミストには不明なのかもしれません。というか、私には確実に不明です。
下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから引用しています。
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