第一生命経済研リポート「緊急事態宣言拡大で遠のく景気回復」やいかに?
本日、第一生命経済研から「緊急事態宣言拡大で遠のく景気回復」と題するリポートが明らかにされています。現在の13都府県に加えて、明日の8月25日から北海道と愛知県をはじめとする東海3県にも緊急事態宣言が拡大され、しかも、その中でパラリンピックを強行開催するという政策的にムチャクチャなことをやっている気がしますが、リポートではこの4回目の緊急事態宣言に伴って、(1)消費押し下げ圧力は▲1.4兆円から▲1.5兆円程度に拡大、(2)同様にGDPの減少額は▲1.2兆円から▲1.3兆円程度に拡大、(3)2021年7-9月期のGDPを▲1.0%程度押し下げる(年率換算では▲4.0%程度)、(4)3か月後の失業者の増加規模はトータルで+6.6万人から+7.3万人程度に拡大、といった試算結果を示しています。基本的に、これですべてなんですが、図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。
上のグラフはリポートから、月次個人消費の推移 を引用しています。ブルーのラインとオレンジのラインの乖離が緊急事態宣言による押し下げなんですが、グラフエリアにあるように、1回目の緊急事態宣言による個人消費の押し下げは▲4.4兆円、2回目は1.2兆円、3回目も▲1.2兆円でしたが、今回の4回目は緊急事態宣言拡大前の▲1.4兆円から▲1.5兆円に押し下げ額が広がると試算しています。ただし、個人消費には輸入も含まれることから、これらを調整してGDPベースで7~9月期に▲1.2兆円から▲1.3兆円に押し下げ額が拡大し、四半期ベースで▲1.0%、年率換算で▲4.0%のGDP押し下げに相当すると結論しています。オークン法則に近い方法で雇用を推計すると、3か月後の失業者の増加規模はトータルで+6.6万人から+7.3万人程度に拡大するということのようです。そして、最後に、COVID-19前の2019年10~12月期のGDPは名目で556兆円、実質で547兆円であり、直近2021年4~6月期では名目546兆円、実質539兆円まで低下しているものの、それほどの隔たりはないように感じられるが、枚目・実質ともに▲1.5%から▲2%近い乖離となっていて、これに、7~9月期に▲1%の下振れが加わると、年内にGDPの水準がCOVID-19前に戻ることはほぼほぼ絶望的と結論しています。
私はこういった市場価格のみに基づく経済試算に対しては、きちんとシャドウ・プライスやスピルオーバーも含めるべきであって、やや懐疑的なのですが、少なくとも、前の安倍内閣から現在の菅内閣に至るまで、かなり場当たり的に Stop and Go 政策が展開されてきており、政策評価としては一定程度受け入れる余地もあるのではないかと考えています。それにしても、まもなく行われる政権選択の総選挙で示される国民の判断について、私自信も投票に行くのはモチロンですが、その判断結果にとても興味があります。
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