日本の社会保障はどうして高齢者優遇なのか?
一昨日の8月31日、国立社会保障・人口問題研究所から「社会保障費用統計」が公表されています。プレスリリースから【集計結果のポイント】7点のうちの最初の3点だけ引用すると以下の通りです。
【集計結果のポイント】
- 2019年度の「社会支出」(OECD基準)総額は127兆8,996億円で、対前年度増加額は2兆3,982億円、伸び率は1.9%となっている。
- 2019年度の「社会保障給付費」(ILO 基準)総額は123兆9,241億円で、対前年度増加額は2兆5,254億円、伸び率は2.1%となっている。
- 1人当たりの「社会支出」は101万3,700円、「社会保障給付費」は98万2,200 円。
この引用にあるように、統計の中で直近の利用可能なデータは2019年度であり、ギリギリ2020年1~3月期を含むんですが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)への社会支出はそれほど含まれていないと私は受け止めています。ですので、従来からの私の主張である我が国社会保障の弱点、すなわち、余りに高齢者に偏って家族や若年層を軽視しすぎたために少子高齢化が進む一因となっている点を少しデータで検証したいと思います。

まず、上のグラフは 政策分野別社会支出の推移 を1980年度から2019年度まで積み上げ棒グラフでプロットしています。2011年から高齢区分が段差あるように見えるのは、介護保険サービス等については、2018年度社会保障費用統計まではすべて、介護保険サービス等のうち医療・看護系サービス及び入浴・食事・排泄等のADL(日常生活動作)に関する支援サービスは、「保健」に計上することとし、2011年度まで遡及修正したためであるとされています。まあ、統計区分のテクニカルな修正と私は受け止めています。いずれにせよ、赤の「高齢」区分が青の「家族」を大きく上回って伸びていることが読み取れます。

次に、その政策分野別社会保障支出の国際比較ですが、上のパネルが 政策分野別社会保障支出の構成割合の国際比較、そして、下が 政策分野別社会保障支出の対GDP比の国際比較 となっています。社会保障支出の中の割合として、日本では40%近くが「高齢」区分に支出されており、他の先進国と比べても見劣りしませんが、「家族」区分はわずかに7%と、米国を例外とすれば大きく見劣りします。しかも、これを対GDP費で見ると、「高齢」が9%近くを占めて、北欧の高福祉国であるスェーデンに近い大盤振る舞いなんですが、「家族」区分が2%に達しないのは、これまた、米国に次いで少なくなっています。従来からの私の主張ですが、スェーデン並みの3%超とはいわないまでも、せめてドイツやフランス並みに対GDP比であと+0.5%か、+1.0%くらい、額にすれば+3兆円から+5兆円くらい「家族」区分に上乗せできないものか、と考えています。
先日、広く報じられたところですが、渋谷の若者向けワクチン接種で大きな混乱がありました。政府CIOポータルによる新型コロナワクチンの接種状況では、65歳以上は8月31日時点で1回目88.95%、2回目86.84%のワクチン接種を終えている一方で、若者へのワクチン接種はあの有り様です。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)については、罹患した場合に高齢者の方が死亡率や重篤度が高いとはいえ、それでも、ここまで高齢者を優遇し、若者を冷遇する政府というのは、少子高齢化の大きな要因ではないでしょうか。総選挙でその審判が下されるのを私は待ち望んでいます。
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