米国雇用統計の雇用者増は物足りない数字に終わったか?
日本時間の今夜、米国労働省から8月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は今年2021年に入って着実にプラスを記録していたのですが、本日公表の8月統計では+235千人増にとどまっています。ただし、失業率は前月の5.4%から8月には5.2%にわずかに低下しています。まず、長くなりますが、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を最初の5パラだけ引用すると以下の通りです。
Economy added 235,000 jobs in August amid COVID cases surge, worker shortage. Unemployment fell to 5.2%
Hiring slowed sharply in August as employers added a disappointing 235,000 jobs, with COVID-19 surges dampening both consumer demand and Americans' willingness to return to work.
Restaurants and bars, which had been driving record employment gains, shed jobs.
The unemployment rate, which is calculated from a different survey, fell from 5.4% to 5.2%, the Labor Department said Friday.
Economists had estimated that 750,000 jobs were added last month, according to a Bloomberg survey.
So far, the U.S. has recovered 17 million, or 76%, of the 22.4 million jobs lost in the spring of last year, leaving the nation 5.3 million jobs below its pre-pandemic level.
長くなりましたが、まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは今年2020年2月を米国景気の山と認定しています。ともかく、2020年4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

引用した記事の4パラ目にもあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスでは+750千人の雇用増が予想されていましたので、+235千人増は記事の最初のパラにあるようにdisappointingな数字と受け止められています。他方で、失業率は今年2021年年初には6%前後だったんですが、最近では5%近くまで低下を示しています。ということで、やはり、8月統計については新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック拡大の影響で雇用改善にブレーキがかかった、というのが大方のエコノミストの見方ではないでしょうか。特に、7月統計の雇用者数が上方修正されて前月差で+100万人超の増加を見ていただけに、落差を大きく感じるのも事実です。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が進んでいたところに、バイデン政権の大幅な財政拡大があって、雇用改善が進んでいたわけなんですが、やはり、財政政策だけではデルタ株によるCOVID-19のパンデミックには十分ではなかった可能性があります。この先、いくつか考慮すべき事項があり、第1に、労働市場の動向です。9月4日に失業手当の週300ドルの特別加算が終了します。学校が開始されていることから、労働市場に再参入する働きに拍車がかかる可能性が十分あります。第2に、金融政策の動向です。すなわち、先月下旬のいわゆるジャクソン・ホール会議で米国連邦準備制度理事会(FED)のパウエル議長が年内のテーパリング開始を強く示唆したのですが、9月21-22に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で、この米国雇用統計を踏まえてどのような議論がなされるのか、インフレンもにらみつつ、とても気にかかるところです。
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