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2021年9月 1日 (水)

法人企業統計に見る設備投資の伸びをどう評価するか?

本日、財務省から4~6月期の法人企業統計が公表されています。法人企業統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は2年ぶりの増収で+10.4%増の314兆4060億円、経常利益は2四半期連続の増益となりほぼ倍増の+93.9%増の24兆736億円、特に製造業は2.6倍増だったりします。そして、設備投資は+5.3%増の10兆1465億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資についても前期比+3.2%増の11兆9483億円となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短かに引用すると以下の通りです。

4-6月期の設備投資、前年同期比5.3%増 法人企業統計
財務省が1日発表した4~6月期の法人企業統計によると、金融業と保険業を除く全産業の設備投資額は前年同期比5.3%増の10兆1465億円だった。プラスは5四半期ぶり。このうち製造業は4.0%増、非製造業は5.9%増だった。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となるソフトウエアを除く全産業の設備投資額(金融業、保険業を含む)は、前年同期比で3.7%増だった。
全産業の売上高は前年同期比10.4%増の314兆4060億円で、うち製造業が20.1%増、非製造業は6.8%増。経常利益は93.9%増の24兆736億円で、うち製造業が2.6倍、非製造業は64.2%増だった。
今回の結果は、8日公表の4~6月期のGDP改定値に反映される。

いつもながら、コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上高と経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2020年5月ないし4~6月期を直近の景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。

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ということで、法人企業統計の結果を短く表現すると、企業活動や企業業績はかなりの程度に回復が見られる、ということになろうかと思います。加えて、世界の景気回復の恩恵を受ける製造業と首都圏や関西圏をはじめとする緊急事態宣言を受けた国内景気の停滞の影響が強い非製造業の違いが、従来よりもさらに鮮明になった気がします。引用した記事の季節調整していない原系列の前年同期比の計数とはかなり印象が異なりますが、いずれも季節調整済みの系列やその前期比で見て、売上高は製造業が+2.0%増と4四半期連続の増収であったのに対して、非製造業は▲0.9%と2四半期連続の減収でしたし、経常利益も製造業がこれまた4四半期連続で+7.4%増の増益を記録したのに対して、非製造業は逆に▲1.9%減の減益に陥っています。加えて、非製造業では売上高の減収以上に減益であったのは、非製造業における企業活動の停滞を示唆していると私は受け止めています。ただし、製造業と非製造業を合算した全産業レベルで見て、経常利益水準は1~3月期の20兆6292億円に続いて、4~6月期も20兆9918億円に達して20兆円を超え、景気後退局面に入ったり、COVID-19パンデミックの拡大の前の2019年1~3月期の22兆8391億円や4~6月期の20兆2490億円の水準にほぼほぼ回帰しています。企業活動のひとつの重要な指標である経常利益では景気後退局面入りする前の水準に企業活動水準は復活している点は見落とすべきではありません。さらに、設備投資も今年2021年1~3月期の前期比+0.8%増に続いて、4~6月期も2四半期連続の前期比プラスの+3.2%増と増加が加速しているように見えます。本日公表された法人企業統計だけでなく、例えば、8月5日に明らかにされた日本政策投資銀行の「2021年度設備投資計画」の調査結果でも、2021年度の国内設備投資計画は前年度比+12.6%増となっていて、設備投資の増加傾向が示唆されています。ただ、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響による2020年度の大きな設備投資の落ち込みの反動という面もあり、加えて、注意が必要な点があります。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。見れば明らかなんですが、労働分配率とともに設備投資/キャッシュフロー比率が大きく低下を示しています。すなわち、設備投資は季節調整済みの前期比で+3.2%増と伸びが加速しているように見えているものの、実は、キャッシュフローほどには設備投資は増加していない点には注意が必要です。他方で、ストック指標なので評価に注意が必要とはいえ、利益剰余金も伸び悩みが続いています。労働分配率が大きく低下していることから、賃金に回しているわけではなく、キャッシュフローほどには設備投資も伸びていない中、やや不思議な現象だと私は受け止めています。

最後に、本日の法人企業統計を受けて、来週9月8日に内閣府から4~6月期のGDP統計速報2次QEが公表される予定となっています。私は1次QEから設備投資を中心に上方修正されるであろうと考えています。2次QE予想については、また、日を改めて取り上げたいと思います。

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