6か月連続の前年比プラスを記録した企業向けサービス価格指数(SPPI)の動向をどう見るか?
本日、日銀から8月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+1.0%を記録し、変動の大きな国際運輸を除く平均も+0.9%の上昇を示しています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックに対応した緊急事態宣言が8月中は首都圏や関西圏などで続いていましたが、昨年の4~6月期が経済活動の底でしたので、その反動の影響がやや薄れつつある印象です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
8月の企業向けサービス価格、前月比0.1%下落 3カ月ぶりマイナス
日銀が27日発表した8月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は105.0と、前月から0.1%下落した。前月比でマイナスとなるのは3カ月ぶり。テレビ広告などの価格が軟調だった。
同指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。テレビ広告では東京五輪の裏番組を中心に企業の出稿意欲が減退し、価格が下がった。一方、外航貨物輸送はオーストラリア産鉄鉱石の好調な荷動きを背景に上昇。強弱材料が交錯し、全体での下げ幅は限定的だった。
前年同月比では1.0%上昇し、6カ月連続のプラスだった。日銀は「(新型コロナウイルスの)ワクチン接種の進捗などで経済活動が再開すると、サービス需要の回復が期待される」と分析している。
調査の対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは79品目、下落は28品目だった。
いつもながらよく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。いずれも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。

上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率は、2019年10月の消費税率引上げの効果が剥落した昨年2020年10月からマイナスに陥っていましたが、今年2021年2月統計では保合いになり、3月統計でプラスに転じました。直近で利用可能な8月統計では+1.0%の上昇を記録しています。基本的には、石油をはじめとする国際商品市況の上昇がサービスにも波及していると私は考えていますし、加えて、昨年2020年4~6月期が我が国では第1次の緊急事態宣言の中で経済活動の水準がほぼ底だったため、その反動で今年2021年5~6月くらいまでは前年同月比上昇率が上がっていて、特に、前年同月比上昇率は今年2021年5月の+1.5%で直近のピークを付け、その後、緩やかに上昇率は低下しているものの、+1.0%を記録した8月統計にもその影響が残っている、という動向ではないかと私は受け止めています。もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づく前年同月比上昇率と8月統計のヘッドライン上昇率+1.0%への寄与度で見ると、景気に敏感なテレビ広告をはじめとする広告が+0.40%、石油価格の影響が強い運輸・郵便が+0.28%、宿泊サービスや土木建築サービスなどの諸サービスが+0.25%、などとなっています。前年同月比上昇率でも、特に、広告はテレビ広告の+16.4%、雑誌広告+13.6%、インターネット広告+10.8%などをはじめとして広告全体で+9.4%の上昇を示しています。昨年のCOVID-19による経済への影響の反動が含まれているとはいえ、景気に敏感な広告の上昇率が高いのはひとつの特徴かと考えています。逆に見て、いわゆる人手不足要因とは必ずしも考えられないともいえます。ただし、繰り返しになりますが、先月統計から前年同月比上昇率は少し鈍化していますし、引用した記事のタイトルでも、前月比マイナスが強調されている点は忘れるべきではありません。
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