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2021年9月 8日 (水)

1次QEから上方修正されたものの前期からのリバウンドにも達しない4-6月期GDP統計2次QEをどう見るか?

本日、内閣府から今年2021年4~6月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.5%、年率では+1.9%と、1次QEから上方修正されています。新たな変異株や高齢者以外へのワクチン接種も含めて、先行きはまだ不透明感が残ります。まず、日経新聞のサイトから長い記事を引用すると以下の通りです。

GDP、年1.9%増に上方修正 4-6月改定値
内閣府が8日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質で前期比0.5%増、年率1.9%増だった。8月に公表した速報値(前期比0.3%増、年率1.3%増)から上方修正した。企業の設備投資などが上振れしたのが要因だ。
改定値では財務省が1日発表した4~6月期の法人企業統計を設備投資や民間在庫変動に反映した。設備投資は前期比2.3%増で、速報値(1.7%増)から上方修正した。一方、民間在庫変動のGDP押し上げ効果は速報段階のマイナス0.2ポイントからマイナス0.3ポイントに下方修正した。
政府消費は1.3%増で、速報値(0.5%増)から大きく上振れした。速報段階以降に公表された統計で6月の医療費が当初想定より多かったため、全体を押し上げた。
GDPの半分以上を占める個人消費は0.9%増と、速報値(0.8%増)から小幅上方修正した。8月に行われた消費者物価指数の基準改定や一部のサービス関連の統計を踏まえた結果、上向きに見直された。
名目GDPは前期比0.1%減、年率0.5%減で、速報値(前期比0.1%増、年率0.2%増)から下方修正された。消費者物価指数の基準改定によりGDPデフレーターが下振れしたことが押し下げた。
法人企業統計によると4~6月期の全産業の設備投資は前期比3.2%増で、製造業・非製造業ともに増加していた。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2020/4-62020/7-92020/10-122021/1-32021/4-6
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)▲7.9+5.4+2.8▲1.1+0.3+0.5
民間消費▲7.2+2.7+1.9▲0.6+0.8+0.8
民間住宅+0.6▲5.7+0.0+1.0+1.0+2.1
民間設備▲6.0▲2.1+4.3▲1.3+1.7+2.3
民間在庫 *(+0.1)(▲0.2)(▲0.5)(+0.4)(▲0.2)(▲0.3)
公的需要+1.1+2.3+1.7▲1.6+0.1+0.7
内需寄与度 *(▲5.1)(+2.7)(+1.8)(▲0.8)(+0.6)(+0.8)
外需寄与度 *(▲2.9)(+2.6)(+1.0)(▲0.2)(▲0.3)(▲0.3)
輸出▲17.5+7.3+11.7+2.4+2.9+2.8
輸入▲0.7▲8.2+4.8+4.0+5.1+5.0
国内総所得 (GDI)▲6.9+5.3+2.8▲1.7▲0.1+0.1
国民総所得 (GNI)▲7.1+5.1+3.1▲1.6▲0.0+0.1
名目GDP▲7.6+5.4+2.3▲1.1+0.1▲0.1
雇用者報酬▲3.5+0.8+0.9+2.1▲1.4▲0.7
GDPデフレータ+1.4+1.1+0.1▲0.2▲0.7▲1.1
内需デフレータ▲0.1+0.0▲0.8▲0.5+0.6+0.2

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された今年2021年1~3月期の最新データでは、前期比成長率が小幅ながらプラス成長を示し、GDPのコンポーネントのうち赤の消費と水色の設備投資のプラス寄与が大きくなっています。

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月曜日のこの私のブログでも1次QE予想を取り上げましたが、小幅な上方改定を予想するシンクタンクが多かったように記憶しています。また、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは年率で+1.7%のプラス成長でしたから、大きなサプライズはないとはいえ、やや上振れした印象を持つエコノミストも少なくない気がします。ただし、1~3月期が前期比で▲1.1%のマイナス成長の後の4~6月期の+0.5%のプラス成長ですから、4~6月期は前期のマイナス成長からのリバウンドも半分にも達しません。ですから、潜在成長率と比較すればそれなりのプラス成長とはいえ、決して力強い成長という評価はできません。昨年2020年後半は2020年7~9月期+5.4%、10~12月期+2.8%のそれなりのプラス成長を2四半期続けたのですが、2021年に入って日本経済は停滞を続けていると私は受け止めています。ただし、今回は何が生じているのか、デフレータの動きがやや不思議な気が私はしています。すなわち、伝統的に物価なので、デフレータだけは季節調整していない原系列の前年同期比を取っていて、季節調整済み系列の前期比をで見る成長率とはベースが異なるので、何ともいえませんが、上のテーブルからも明らかな通り、GDPデフレータ上昇率が1次QEの▲0.7%から2次QEでは▲1.1%に下方修正されており、同様に、内需デフレータ上昇率も+0.6%から+0.2%に修正されています。デフレータが下方修正されていて、名目GDP成長率は1次QEの+0.1%成長から▲0.1%に下方修正されています。ただし、実質値のGDIやGNIは上方修正されています。いずれにせよ、実感により近い名目GDP成長率が下方修正されている点は、実質成長率が上方修正されたとはいえ、日本経済の停滞をより強く印象づけているような気もします。加えて、月曜日の2次QE予想でもありましたが、足元の7~9月期はほぼゼロ成長ではないか、と見込むエコノミストも少なくないと私は受け止めています。

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GDP統計のほか、本日、内閣府から8月の景気ウォッチャーが、また、財務省から7月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲13.7ポイント低下の34.7、先行き判断DIも▲4.7ポイント低下の43.7を記録しています。新型コロナ感染症(COVID-19)パンデミックに対応して、首都圏などに緊急事態宣言の影響もあって、大きな低下を見せています。経常収支は、季節調整していない原系列で+1兆9108億円と+2兆円近いの黒字を計上しています。いつものグラフだけ、上の通り示しておきます。上のパネルの景気ウォッチャーのグラフでは、現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールで直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。下の経常収支のグラフでは、青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。いずれも季節調整済みの系列をプロットしています。

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