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2021年10月31日 (日)

Happy Halloween!!!

Happy Halloween!

今日は総選挙の投票日です。今日は昼過ぎから出かける予定なので、私はすでに期日前投票を済ませています。

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2021年10月30日 (土)

今週の読書は大恐慌に学ぶ経済書のほか計2冊にとどまる!!!

今週の読書は、昨日取り上げた河﨑信樹・河音琢郎・藤木剛康[編著]『現代アメリカ政治経済入門』(ミネルヴァ書房)に加えて、恒例の本日土曜日では、米国の大恐慌時のエピソードを集めた経済書と新書の2冊だけでした。以下の通りです。それから、いつもお示ししている本年の読書の進行ですが、このブログで取り上げた新刊書だけで、1~3月期に56冊、4~6月も同じく56冊、7~9月で69冊と夏休みの時期があって少しペースアップし、さらに、先週までの10月分が17冊に、昨日・今日と取り上げた3冊を加えて、合計197冊になりました。年間予想の200冊を超えるのは時間の問題かと思います。

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まず、玉手義朗『大恐慌の勝者たち』(日経BP) です。著者は、外為ディーラーなどの経験のあるジャーナリストであり、TBSのデスクなどを務めていたりします。タイトル通り、本書では、1929年10月24日の暗黒の木曜日に始まる世界大恐慌においても、がっちり稼いだ投資家や事業家などのエピソードを、CASE1~12の12人紹介しています。最初は、ケネディ家の「王朝の創始者」ジョセフ P. ケネディであり、靴磨きの少年がお買い得の株の話をし始めたので、大暴落の前に手仕舞って損失を免れた、という余りにも有名なエピソードから始まります。ほかにも、バリュー株への投資、あるいは、事業会社ではホテル王ヒルトンや石油王ゲティ、映画のディズニー、はたまた、ケインズ的な政策を実践した日本の高橋是清などを取り上げています。ただ、最後の政策編では、高橋是清や米国のローズベルトなどとともにヒトラーが経済政策面で称賛されていて、しかも、大恐慌下では民主主義よりも独裁政権の方が恐慌脱出には効率的と取れる表現もあり、私はやや不愉快な気もしました。経済学を大学で教える身としても、下部構造といわれていても、経済が国民生活のすべてではありません。恐慌や不況克服には独裁制の方が好ましいかもしれませんが、たとえそうであっても、民主主義を選択するのが私の考え方である点は強く指摘しておきたいと思います。

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次に、いきなり最後で、塩田潮『解剖 日本維新の会』(平凡社新書) です。著者は、団塊の世代に属するノンフィクション作家であり、私は大昔の『霞が関が震えた日』に強く感銘した記憶があります。本書はタイトルそのままであり、総選挙まっただ中の日本維新の会について取りまとめています。この平凡社新書のシリーズでは青木理の『日本会議の正体』なんて、とても批判的な方向からのノンフィクションもあるのですが、本書については、事実を多く並べてはいるものの、基本的に、提灯持ちの方向であると私は考えています。例えば、最後のインタビューはすべて維新の会の関係者ばかりですし、インタビューアーの著者が維新の会の政策をホメていたりします。日本維新の会は、「大阪都構想」や地方自治体の改革志向が本質なのではなく、その成り立ちが大阪の自民党から分派したものであり、ハッキリと、政権与党の別働隊、あるいは、補完勢力と考えるべきです。読者は、本日取り上げた2冊はいずれも、それなりの批判的な精神をもって読み進む必要あるかもしれません。

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2021年10月29日 (金)

ご寄贈いただいた『現代アメリカ政治経済入門』(ミネルヴァ書房) を読む!!!

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ご寄贈いただいた河﨑信樹・河音琢郎・藤木剛康[編著]『現代アメリカ政治経済入門』(ミネルヴァ書房) を往復の新幹線で読みました。3人の編著者のうちの1人が、私の勤務する大学の学部長だったりします。なお、この編著者は3人とも関西にある大学の研究者なのですが、チャプターごとの著者の中には関西圏以外の研究者も入っていたりします。出版社からして学術書なのですが、明確に「社会科学系学部の2~3回生を対象」とされていますので、通常のビジネスパーソンにもそう難しくなく読みこなせるのではないかと思います。3部構成であり、経済、政治・政策、国際関係の順となっています。
実は、私は平成元年1989年版でまだ当時存在していた『世界経済白書』を役所で、担当課のアメリカ班長として執筆しています。その準備でもないのですが、白書作成の直前には米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FED)のリサーチ・アシスタントもごく短期間ながら経験していたりします。ですから、30年余り前には霞が関の狭い社会では米国経済のオーソリティと見なされていたのかもしれません。
特に、私が田舎の大学に勤務していることもあって、私の知る限り、こういった米国の政治経済に関する解説書はとても貴重といえます。例えば、三菱総研によるIMD「世界競争力年鑑2021」の解説によれば、世界64か国を対象とした競争力のランキングで、日本は真ん中へんの総合31位である一方で、個別項目での日本の順位がラストの64位となっているクラスター項目は、「企業の意思決定の迅速性」、「国際基準から見た中小企業の効率性」、「管理職の国際経験」、「高齢化」、「対内直接投資ストック(対GDP比)」の5項目となっています。あれほど強く指摘される「財政赤字(対GDP比)」ですら59位にとどまっているにもかかわらず、「管理職の国際経験」は64か国中の64位とドンジリだったりするわけで、実は、私の見る限り、大学教員でも企業経営者とご同樣、ないしかなり近い、という気がしなくもないのですが、それは別としても、繰り返しになるものの、留学や海外勤務は誰でも経験できるわけではありませんから、こういった米国の政治経済に関する解説書は国際経験を補うためにも貴重といえます。

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2021年10月24日 (日)

またまた京都を離れます!!!

事情により、京都を離れて新幹線で東に向かいます。しばらくブログは更新しないと思います。今週は月末週で政府統計の発表が目白押しなのですが、悪しからず。

今日は阪神が広島に勝ったみたいです。消化試合に入っているので興味を失っていたのですが、ひょっとしたらまだ阪神のリーグ優勝の可能性が残っているのかもしれません。

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2021年10月23日 (土)

今週の読書は道尾秀介のミステリほか計5冊!!!

今週の読書は、経済書、良質のミステリに加えて、さまざまな分野を対象とする新書が3冊、計4冊です。それから、いつもお示ししている本年の読書の進行ですが、このブログで取り上げた新刊書だけで、1~3月期に56冊、4~6月も同じく56冊、7~9月で69冊、さらに、先週までの10月分が12冊に、今日取り上げた5冊を加えて、合計194冊になりました。たぶん、あくまでたぶん、ですが、年末を待たずに近く200冊を超えるのではないかと予想しています。

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まず、神田眞人[編著]『図説 ポストコロナの世界経済と激動する国際金融』(財経詳報社) です。編著者は、財務省の公務員であり、今夏の人事異動から次官級の財務官に就任しています。そして、おそらく、極めて多数の財務省の公務員が執筆にあたっているのだろうと私は想像しています。本書は、基本的に、国際金融の制度的な枠組みや気候などについて解説をしている本であり、国際金融を分析している学術書ではありません。ただ、国際組織や国際感の合意文書などについて、おそらく、政府の立場から公式見解を解説しているわけで、こういった事実関係も含めた情報は、ある意味で、とても有り難い場合もあります。もちろん、物足りないという読者も多そうな気はします。例えば、国際金融の枠組みとして「ワシントン・コンセンサス」という言葉があり、ある時は称賛され、別の時には大きな批判を加えられたりしますが、この「ワシントン・コンセンサス」というのは、まあ、何と申しましょうかで、公式な文書で使われる用語ではありません。ですから、本書には一切登場しません。その意味で、物足りない読者もいるでしょうし、逆に、事実関係を確認するために重宝する読者もいるかもしれません。私が10年ほど前まで勤務していた長崎大学経済学部には「国際機関論」という講義科目がありました。そんなのが大学の講義になったりするのか、と私は大いに不思議だったのですが、実に、おそらくは本書の著者たちとよくにたキャリアコースをたどっていたであろう財務省からの出向者が担当していたりしました。ですから、学問分野として、やや不思議な印象はあるものの、それなりのニーズはあるのかもしれません。本書では事実関係だけを取りまとめているので、おそらく、売れ行きがよければ毎年のように改定がなされるのかもしれません。本書の出版社は『【図説】日本の財政』なんかを出しているところですが、なぜか、本書はこの出版社のホムページには現れません。本書の後に出版された本は掲載されているのですが、何かあるのでしょうか。謎です。出版社からはやや冷たい扱いを受けているのかもしれませんが、財務省の広報誌である「ファイナンス」には、当然のように、好意的な書評が掲載されたりしています。その書評によれば、本書は2015年の『図説 国際金融』のアップデートを土台にしているそうです。私は読んでいないのでよく判りません。何ら、ご参考まで。

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次に、道尾秀介『雷神』(新潮社) です。作者は、大いに売れているミステリ作家で、私が紹介する必要もないくらいです。特に、注目を集めたのが『向日葵の咲かない夏』だったんですが、私は本書を読むまで映画化もされた『カラスの親指』をもって、この作者の最高傑作と考えていました。しかし、おそらく、現時点では本書がこの作者の作品の中で最高傑作と呼ぶべきと考えを改めています。それほど、素晴らしい出来だと思います。ということで、主人公は埼玉で小料理屋を営む中年男性ですが、昭和の終わりの母の不審死、そして、15年前の妻の事故死、いろいろと降りかかる事件や事故の真相を解き明かすべく、姉とともに子供時代を過ごし古い因習の残る新潟県で調査を行います。父親の手紙とか、家族構成の妙とか、いろんな要素を巧みに織り込んで、主人公を始めとする登場人物、さらに、読者も混乱に巻き込み、ミスリードを広げて、終盤に一気にどんでん返しが待っている構成はお見事です。大雑把に、ネタバレにならない範囲で書いておくと、父親が娘に対する愛情からいろいろと調べて回る、ということになります。善意と悪意が複雑に交錯し、真相が明らかにされて行きます。ほぼほぼ、とても良質なミステリといえます。ただ、私の場合は、ジェフリ・ディーヴァーのような最後のどんでん返しのツイストっぽいストーリーよりは、徐々に徐々に、玉葱の皮がむかれるように真相が明らかになるタイプのミステリが好きなのですが、本作品はそうではありません。最後の最後に一気に真相が、おそらくは、読者の想像とは違う方向で明らかにされます。それはそれで、良質のミステリに仕上がっています。繰り返しになりますが、私以外にも、この作品が作者の最高傑作と見なすミステリ読者は決して少なくないように感じます。

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次に、岡部伸『第2次大戦、諜報戦秘史』(PHP新書) です。著者は、産経新聞のジャーナリストであり、駐英時代に英国国立公文書館に通って公文書の発掘に努めたとされています。ということで、かつて世界の海を支配した大英帝国の派遣を支えたインテリジェンスについて、特に第2次大戦の前後に関心を寄せて本書は書かれています。極めて大雑把には、世間一般で流布されているウワサ通りの内容と考えてよさそうです。特に、大きな例外というわけでもありませんが、第2次大戦については、諜報活動を軽視する陸軍などを取り上げて、我が国は情報戦で敗北した、などといわれる場合もある一方で、シンガポール攻略などで、むしろ、英国を凌駕するような情報戦の勝利を上げているという事実も本書では含んでおり、それはそれで興味深いところです。内容としては、そのシンガポール攻略に役立った情報、真珠湾攻撃についての予測情報、インパール作戦とインドのチャンドラ・ボースの足跡、中立国からの外電、ヤルタ密約に関する情報戦、などなどで、理由はハッキリしませんが、なぜか、amazonのサイトが極めて詳細に本書を章別で紹介しています。とても、私の及ぶところではありません。何ら、ご参考まで。

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次に、和田秀樹『適応障害の真実』(宝島社新書) です。著者は、ご存じの通り、灘高から東大医学部を卒業して、現在は精神科医なのですが、経歴から理解できるように、受験に関する著作も少なくありません。ということで、なぜか、深田恭子の適応障害による休養から話を始めています。私もファンですから、いいのですが、私は日本人の中では相対的ながらウッダーソンの法則が当てはまる方ですので、数年前に彼女が30歳の誕生日を迎えた、という芸能ニュースに接した際に軽いショックを受けた記憶があります。話をもとに戻しますと、適応障害は症状もうつ病に似ていて、「新うつ病」などと呼ばれることもあるようですが、その違いについて明確にするとともに、薬物治療ではなくカウンセリングによる治療を強く強く推奨しています。私のこの書評も大きく脱線しましたが、本書でも、適応障害のタイトルから大きく脱線して、精神科医の薬物治療依存を批判したり、あるいは、群馬大学病院の医療ミスを取り上げたり、果ては、医学部入試の問題点を指摘したりと、脱線しまくっていて、本筋がやや希薄な本だという気はします。でも、「新うつ病」いわれるくらいですので、適応障害は真面目で、他人に迷惑をかけることを嫌い、完璧主義で臨もうとするような好人物がかかってしまう病気のようです。ベーシック・インカムも推奨されており、その点からも、私は適応障害になる可能性はやや低いのかな、という気はしました。

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最後に、辻田真佐憲『超空気支配社会』(文春新書) です。著者は、評論家・著述家であり、近現代史の研究もしているようです。私はこの著者が同じ文春新書から出している『古関裕而の昭和史』を読んだと記憶しています。タイトル通りに、空気が支配する同調圧力の強い日本社会について、出版社の通りに、『週刊文春』などに掲載された著者のコラムなどを収録しています。ですから、必ずしも統一感はありませんが、決してバラバラのコラムやエッセイを収録しただけ、というわけでもありません。右派と左派などの対立軸を導入するといった視点も盛り込まれていますが、基本的には、SNSによって同調圧力が強まったとか、極端に走る言論が増加したとか、議論お加熱が発生しやすくなったとか、まあ、世間一般で認識されている内容が多いと私は感じました。いずれにせよ、健全な常識が重要な役割を果たすわけですし、極論を排して熟議する必要性はいつでも変わりません。ただ、本書の著者の視点にないように感じましたが、安倍政権から菅政権にかけて、いわゆる「一強」支配のために、ネットのSNS以上に極論が出やすい雰囲気があったように、私は考えています。今月末の総選挙から少しずつではあっても軌道修正が図られることを願っています。

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2021年10月22日 (金)

1年半ぶりにプラスを記録した消費者物価指数(CPI)上昇率の先行きやいかに?

本日、総務省統計局から9月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+0.1%を記録しています。1年6か月ぶりのプラスです。ただし、エネルギー価格の高騰に伴うプラスですので、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は▲0.5%と下落しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

9月の全国消費者物価、1年6カ月ぶりプラス エネルギーが大幅上昇
総務省が22日発表した9月の全国消費者物価指数(CPI、2020年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が99.8と前年同月比0.1%上昇した。ガソリンや電気代などを含むエネルギーが大幅に伸び、CPIを押し上げた。プラスは2020年3月以来、1年6カ月ぶり。QUICKがまとめた市場予想の中央値(0.1%上昇)と同じだった。
原油価格の高騰を背景に、エネルギーは前年同月比7.4%上昇と2018年11月(8.1%上昇)以来の高水準だった。「灯油」や「ガソリン」が2桁の上昇となったほか、原油相場の影響がガソリンより遅行する「電気代」も4.1%上昇した。
政府による前年の観光需要喚起策「Go To トラベル」の反動で「宿泊料」は前年同月比43.1%上昇した。火災・地震保険料の上昇もプラスに寄与した。
一方、携帯電話の通信料は前年同月比44.8%下落した。NTTドコモのオンライン専用プラン「アハモ」など、携帯大手各社による新料金プランが影響した。
生鮮食品を除く総合指数の前月比は0.1%上昇だった。生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は前年同月比0.5%下落した。マイナスは6カ月連続。生鮮食品を含む総合は0.2%上昇し、1年1カ月ぶりのプラスとなった。

いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも+0.1%の予想でしたのでジャストミートしています。基本的に、国際商品市況における石油価格の上昇に伴って、ガソリン・灯油などのエネルギー価格が前年同月比で+7.4%の上昇を見せて、ヘッドライン上昇率に対して+0.52%の寄与を示した一方で、通信料(携帯電話)が前年同月比▲44.8%の下落で、▲1.23%の寄与となっています。エネルギー価格の上昇と政策要因に近い携帯電話通信料の下落のバランスで、エネルギー価格の上昇と波及が上回ってのプラスという結果であると私は受け止めています。ただ、これも引用した記事にあるように、別の政策要因というか、何というか、昨年のGoToトラベルによる値引きの反動で、宿泊料が前年同月比+43.1%の上昇を見せ、寄与度も+0.28%あります。先行きの物価動向を考えると、国際商品市況における石油価格の上昇に加えて、国内外の景気回復とともに、物価は緩やかに上昇幅を拡大していくものと私は考えています。例えば、日銀から公表されている企業物価指数の国内物価も、最近時点では+5%を軽く超える前年同月比上昇率を示しています。物価は上昇基調にあると考えるべきです。
さて、ここで、はなはだ、私の専門外ながら、石油天然ガス・金属鉱物資源機構のリポート、また、みずほ証券のリポートなどから、石油価格について情報を取りまとめておきたいと思います。まず、石油価格上昇の背景にあるのは天然ガス価格の上昇です。すなわち、発電分野で天然ガスへのシフトが一気に進んだため、欧州の天然ガス価格は一時、原油換算で1バレル当たり200ドルを突破し、その後も160ドル台と高止まっています。この価格水準はWTI原油先物価格の約2倍に相当することから、相対的に割安な石油へのシフトが進み、発電需要から石油価格が上昇している面があります。加えて、今冬は厳寒が予想されていることもあり、需要面から石油価格上昇がもたらされています。さらにさらにで、OPECとロシアなどの大産油国からなるOPECプラスによる供給拡大のペースが鈍く、増産幅が日量40万バレルで据え置かれたままになっていて、供給面から需要を満たすほどの増産がなされていません。従って、年末にかけてさらに石油価格は上昇し、1バレル当たり90ドルを突破する可能性が十分あるとの見方が広がっています。

我が国のデフレの初期に「悪い物価下落」と「いい物価下落」という二分法が幅を利かせた時期があります。今回も石油価格上昇に伴うインフレですので、同じような二分法の議論も聞かれます。しかし、私は我が国にとってはデフレ脱却の機会である可能性もあることから、政府や日銀の政策当局の適切な判断を期待しています。

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2021年10月21日 (木)

三菱UFJリサーチ&コンサルティング「原油価格の上昇が国内の物価動向に与える影響」のリポートを読み解く!!!

昨日10月20日、三菱UFJリサーチ&コンサルティングから「原油価格の上昇が国内の物価動向に与える影響」と題するリポートが明らかにされています。石油価格は最近時点で1バレル80ドル程度まで上昇してきており、欧米先進国ではインフレ懸念が高まっています。もちろん、我が国でも石油価格のインパクトは小さくなく、このリポートでは石油価格の上昇が日本の消費者物価(CPI)に及ぼす影響が試算されています。簡単にグラフを引用しつつ取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから 図表1.原油価格の推移 を引用しています。見れば明らかな通り、石油価格は世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響により、2020年4月に1バレル当たり20ドルを下回る水準まで落ち込んでいます。その後、世界景気の持ち直しや石油輸出国機構(OPEC)とロシア等の非OPEC産油国で構成するOPECプラスによる協調減産を受けて持ち直し、2021年10月半ばの時点では1バレル当たり80ドル程度とCOVID-10パンデミック前の水準を上回って推移しています。どこまで上昇するのでしょうか?

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続いて、上のグラフはリポートから 図表3.消費者物価指数の推移 を引用しています。消費者物価指数(CPI)のうちの生鮮食品を除くコアCPI上昇率は、2021年8月統計では前年比横ばいにとどまっています。もっとも、エネルギーを除いた日銀版CPIコア(生鮮食品及びエネルギーを除く総合)では前年比▲0.5%とマイナス圏のままですから、石油価格の上昇を受けた+5.5%のエネルギー価格の上昇が消費者物価を下支えしている形になっています。

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続いて、上のグラフはリポートから 図表5.原油価格が1割上昇した場合の産出価格の上昇率 (個別業種) を引用しています。2015年基準の産業連関表から石油価格が10%上昇した際に、輸入コストの増加分がすべて価格に転嫁されると仮定すると、企業の産出価格は総平均で+0.4%程度の上昇となるとの試算結果を示し、その個別業種ごとに石油価格上昇の影響を上のグラフではプロットしています。当然、石油・石炭製品や電力・ガス・熱供給が大きな影響を受けます。そして、全体としての消費者物価指数(CPI)は+0.3%程度、石油価格の+10%上昇により押し上げられる、と試算しています。この弾性値をもって試算すると、ドバイ原油が過去最高の1バレル当たり124.5ドルまで上昇した場合、消費者物価指数(CPI)は2021年1~9月期対比で+2.9%程度押し上げられる、と結論しています。

このリポートの試算は、あくまで、産業連関分析が基本となっていて、瞬時にすべての価格転嫁がフルでなされる前提ですから、実際には、一定のタイムラグ、企業のコスト削減努力、流通段階での競争圧力、などなどにより物価上昇幅は圧縮される可能性が高いと考えるべきですが、いつも、私がこのブログで主張しているように、我が国の物価は金融政策よりも石油価格により敏感に反応する、という現実は忘れるべきではありません。

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2021年10月20日 (水)

2か月連続で赤字を記録した貿易統計の先行きをどう見るか?

本日、財務省から9月の貿易統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列で見て、輸出額が前年同月比+13.0%増の6兆8411億円、輸入額も+38.6%増の7兆4639億円、差引き貿易収支は▲6227億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計について報じた記事を引用すると以下の通りです。

9月の貿易統計、自動車輸出4割減 全体では13%増
財務省が20日発表した9月の貿易統計速報によると、輸出額は前年同月比13.0%増え6兆8411億円だった。自動車は4割減り、その影響で米国向け輸出は7カ月ぶりのマイナスになった。自動車各社は東南アジアでの新型コロナウイルス感染の再拡大を背景にした部品調達難で大規模な減産に踏み切っていた。
輸出額の伸びは4カ月連続で縮小しており、9月は季節調整値でみると前月比で3.9%の減少だった。自動車輸出は前年同月比40.3%減の5863億円。台数ベースでも35.2%減った。減産は11月も続く見込みで、影響は長引きそうだ。
米国向けの輸出額は1兆1555億円で3.3%減った。自動車が47.0%減り、航空機の部分品や電池の輸出も減った。自動車はほぼ全地域向けで減少したが、中国向け輸出は半導体集積回路などが伸びて1兆4794億円と10.3%増えた。アジア向け全体でみても韓国向けの鉄鋼などが急増したため21.3%増の4兆942億円と底堅かった。欧州連合(EU)向けも12.1%増えた。
輸入額は38.6%増の7兆4639億円。原油の輸入が価格高を反映して90.6%増えた。原油は数量ベースでも15.1%増えた。石炭や医薬品も増え、輸入額は全体で見ると9月として過去最高を記録した。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は6227億円の赤字。赤字は2カ月連続となる。
財務省が同日発表した2021年度上半期(4~9月)の貿易統計は、輸出額が34.2%増の41兆4647億円だった。輸入額も41兆8545億円と30.3%増えた。いずれも新型コロナで落ち込んだ前年同期からの反動が大きかった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、季節調整していない原系列の統計で見て、貿易赤字は2か月連続なんですが、上のグラフに見られるように、季節調整済みの系列の貿易赤字は今年2021年5月から5か月連続となります。しかも、貿易赤字の棒グラフが下向きに拡大しているのが見て取れます。輸出入に分けて見ると、季節調整していない原系列のデータでも、季節調整済みの系列でも、輸入については増加のトレンドにあるように見える一方で、輸出については、特に、季節調整済みの系列のグラフで見て、やや減少し始めた可能性があるのが読み取れます。ただ、それほど大きな悲観材料とはならないと私は受け止めています。まず、輸入についてはワクチン輸入という特殊要因もあるとはいえ、石油価格の前年からの上昇が我が国輸入額の増加に寄与している印象です。なお、ワクチンを含む医薬品の輸入額は季節調整していない原系列の前年同月比で+84.1%増を記録しています。他方、輸出については輸出全体では前年同月比で+13.0%増ながら、我が国の主力輸出品である自動車が何と▲40.3%減、乗用車に限れば▲-46.6%減と、半減近くまで落ち込んでいます。輸出を全体としてみれば、主として欧米の景気回復に従って我が国の輸出は今後とも増加基調を続けるものと私は予想していますが、中国は別としても、特に東南アジアで新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のデルタ株による感染拡大が深刻となってきている点については注意が必要であり、アジア域内の需要サイドではなく供給サイドの要因で、半導体の供給制約から自動車生産が停滞しており、この先の輸出に一定の影響を及ぼす可能性が大きくなっています。例えば、一般機械+23.7%増や電気機械+16.9%増と比べて、我が国のリーディング・インダストリーのひとつであり、競争力も十分と考えられる自動車が▲40.3%減というのは、需要サイドにそれほど差がないとすれば、供給面の制約と考えるべきです。この先行きも、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大が再び生じるのか、その経済的な影響も無視できませんが、このあたりはエコノミストの守備範囲を超えているような気がします。

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2021年10月19日 (火)

赤ちゃん出生数の都道府県別減少率やいかに?

昨日10月18日に、ニッセイ基礎研から「1970年から2020年の半世紀でみる出生数減少率・都道府県ランキング」と題するリポートが明らかにされています。国連のSDGsを考える上で、我が国のサステイナビリティでもっともリスクの大きい項目のひとつが人口ではないかと私は考えています。

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上のテーブルから明らかな通り、もっとも赤ちゃんの出生数が減少したのは秋田県であり、▲75%、すなわち、¼に減少しています。リポートの表現を借りれば、50年前と比べて小学校のクラスが4組から1組に減ったということになります。グループとしては、約7割減少に続いて、約6割減少、約5割減少と続いて、4割以下に3県が入っています。中でも、関西圏の滋賀県が▲33%減と、全国都道府県の中でもっとも減少率が緩やかになっています。▲50%に達しないのは、わずかに6県にとどまっています。ほかの41都道府県では、赤ちゃんの誕生数は半減よりさらに減少しているというわけです。
滋賀県は、リポートによれば、「滋賀府民」とという言葉あるほど大阪府や京都府への通勤車が多くてベッドタウン化しているようです。ただし、関西圏では滋賀県を別にして大阪の通勤範囲と考えられる京都府・兵庫県・奈良県が約6割減少、和歌山県に至っては▲68%減少と約7割減少のグループに分類されており、東京都をはじめとする首都圏に比べて関西圏の地盤沈下が如実に出ている気がします。

いつか、何かで書きましたが、私は関西に引越してから、電車以外は何かにつけて時間がかかるのを実感しており、その当たりの生産性の低さも関係しているのか、していないのか、少し気にかかるところです。

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2021年10月18日 (月)

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)はイノベーションを促進したか?

先週金曜日の10月15日に、文部科学省から「全国イノベーション調査2020年調査統計報告」が公表されています。原則として、従業者数10人以上を有する企業442,978社を対象母集団とし、国際基準である『オスロ・マニュアル』に準拠した我が国公式の統計調査です。多岐にわたるリポートなのですが、1点だけ新型コロナウィルス感染症(COVID-19)との関係だけ注目しておきたいと思います。

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上のグラフは、リポートp.14 図1.1 COVID-19 対応イノベーション実現企業率 を引用しています。規模別には、大企業ほどイノベーションを行っているのですが、産業別には、製造業ではなくてサービス業での実施が多くなっています。それだけ、コロナ被害がサービス業で大きかったことの現れ、と私は受け止めています。「必要は発明の母」という言葉を思い出しました。ただし、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)がイノベーション活動に与えた影響としては、「効果・影響なし」が80%前後と圧倒的多数を占めるものの、規模別でも、製造業・サービス業別でも、コロナはイノベーションを「促進」するよりは「阻害」の影響の比率が高くなっています。当然です。

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2021年10月16日 (土)

今週の読書はノーベル経済学賞受賞エコノミストによる経済書をはじめ計4冊!!!

今週の読書は、ノーベル経済学賞受賞のエコノミストによる新たな角度からの経済書、教養書や専門書に加えて新書まで、以下の通りの計4冊です。それから、10月2日付けで読書感想文を明らかにした竹下隆一郎『SDGsがひらくビジネス新時代』(ちくま新書) が本日の朝日新聞の読書欄で取り上げられていました。そして、いつもお示ししている本年の読書の進行ですが、このブログで取り上げた新刊書だけで、1~3月期に56冊、4~6月も同じく56冊、7~9月で69冊、さらに、先週までの10月分が8冊に、今日取り上げた4冊を加えて、合計189冊になりました。たぶん、あくまでたぶん、ですが、11月中には200冊を超えるのではないかと予想しています。

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まず、ロバート J. シラー『ナラティブ経済学』(東洋経済) です。著者は、2013年にノーベル経済学賞を受賞した米国イェール大学のエコノミストです。本書の英語の原題は Narrative Economics であり、2019年の出版です。基になる論文は、2017年1月の米国経済学会会長演説であり、Robert J. Shiller (2017) "Narrative Economics," American Economic Review 107(4), April 2017, pp. 967-1004 に収録されています。ということで、ナラティブ経済学とは、私の受け止めでは、行動経済学のひとつとして、何らかの不合理な経済行動が、マイクロな個人の選択行動だけではなく、マクロの景気循環などに対しても、何らかの影響を及ぼす、という考え方ではなかろうかという気がします。特に、「ナラティブ」ですので、何らかの物語の影響を考慮しているわけです。ナラティブがバイラルになる点が重要視されています。もちろん、すべてのナラティブがバイラルになるわけではないものの、いくつか、説得的なエピソードもあるにはあります。でも、例えば、日本のバブル後の長期停滞については、バブル経済期に良寛の「清貧」思想が広まって、その後の消費減退につながった、という視点はまったく同意できません。キチンとした経済合理的なマイクロ・マクロな経済主体の行動がバックグラウンドにあると考えるべきです。もしも、我が国のバブル崩壊後の長期停滞について、何らかの非合理的な要素を見出そうとすれば、むしろ、日銀の恐ろしく合理性に欠ける金融政策運営ではなかったかと私は考えています。ただ、現時点では行動科学については、行動経済学をはじめとして、例のアリエリー教授の捏造データを基にした研究などから、ひどく胡散臭い印象を持たれていることも事実です。当然ながら、本書の執筆や邦訳時点では、こういった行動科学に対する懐疑的な見方は少なかったでしょうから、やや気の毒ではあります。いずれにせよ、やっぱりノーベル経済学賞受賞者のアカロフ教授との共著である『アニマル・スピリット』でもそうでしたし、純粋な機会的判断ではなく何らかの消費者や投資家のマインドが、単独でも集合的にでも、経済に大きな影響を及ぼす可能性はあります。特に、バブル経済の発生については十分考えられることですし、バブルの発生を防止するという観点からはナラティブがバイラルになる研究もアリかもしれません。もっとも、著者自身も自覚しているようですが、かなり大量のデータを数十年に渡って収集し、それらを間違いない形でデータ分析できるだけのキャパを必要とするわけで、どこまで主流派の合理的な経済学に対抗できるかどうか、私はやや不安です。さらに、タイトルはあくまで経済学を対象として始まっていて、本書冒頭でも経済学を俎上に載せてナラティブがバイラルになるプロセスを考慮しているように見受けたのですが、途中から、対象は経済学ではなくて経済にすり替わっています。やや理論展開の整合性にも問題あるかもしれません。ただ、地に落ちた感のある行動経済学に代替するポスト行動経済学、すなわち、個々人のマインドを質問した調査結果から分析を始めるのではなく、本書でもデータを取っているGoogle NgramsやProQuestなどのような報道やSNSなどからより信頼性が高い、というか、捏造されにくいデータを用いたポスト行動経済学としての期待ができそうな気がします。

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次に、ファリード・ザカリア『パンデミック後の世界 10の教訓』(日本経済新聞出版) です。著者は、インド出身でCNNの報道番組のホストなどを務める米国のジャーナリストです。英語の原題は Ten Lessond for a post-Pandemic World であり、2020年の出版です。まず、単純に10の教訓を並べると以下の通りです。

LESSON 1
シートベルトを締めよ
LESSON 2
重要なのは政府の「量」ではない、「質」だ
LESSON 3
市場原理だけではやっていけない
LESSON 4
人々は専門家の声を聞け、専門家は人々の声を聞け
LESSON 5
ライフ・イズ・デジタル
LESSON 6
アリストテレスの慧眼 - 人は社会的な動物である
LESSON 7
不平等は広がる
LESSON 8
グローバリゼーションは死んでいない
LESSON 9
二極化する世界
LESSON 10
徹底した現実主義者は、ときに理想主義者である

要するに、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック後に考えるべき教訓は10あるわけですが、パンデミックから何を学習するかという視点も重要で、私の印象に残ったのは、やはり、経済学的な観点から第3店目の市場原理だけではダメというポイントです。パンデミックに限定しても、1980年代からの米国レーガン政権や英国サッチャー内閣の新自由主義的な経済政策により、考え方によれば現在の日本でも、市場原理を医療分野に徹底すればユニバーサルな医療は失われ、経済力のあるなしで医療を受けられる程度が決まってしまい、従って、命に軽重が出る、ということです。ただ、それほど取材に基づく文章ではないジャーナリストの出版物ですので、かなり漠たる印象論を述べるにとどまっているポイントも少なくありません。世界の経済や医療やパンデミックの実態はとても複雑なのですから、同時に、経済学的な用語で言えば「一般均衡論」的に解法を探さねばならないのです、ややその点でヌケがあるような気がしてなりません。

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次に、加藤陽子『この国のかたちを見つめ直す』(毎日新聞出版) です。著者は、日本近現代史を専門とする東大教授であり、同時に、昨年の菅内閣による日本学術会議任用拒否の6人の1人でもあります。ということで、本書は毎日新聞に毎月連載された著者のエッセイとコラムを中心に収録されていて、著者の専門分野である「国家と国民」、「天皇と天皇制」、「戦争の記憶」などをはじめとして、「東日本大震災」や「世界と日本」などのテーマまで幅広くを論じています。長期に渡った安倍内閣から役所の行政まで含めて、日本の統治機構、というか、政治経済のシステム全体が大きく劣化したと感じているのは私だけではないと思いますが、著者の専門分野である近現代史における天皇制の視点から、あるいは、21世紀の震災やチョコッとだけながらパンデミックまで含めて、幅広く論じられています。どうしても、新聞のコラムですのでひとつのテーマに対するボリュームとして圧倒的に不足しており、やや物足りない気はします。歴史学者ですので、全体像をもう少し示して欲しかった気がしますが、かなり限定した取扱に終止している気がします。というのも、安倍内閣以来のヘンなやり方として、都合のいい事実だけに着目して都合の悪い点を排除し、もしくは、目をつぶって、総合的・包括的な観点から政治や行政を進めるやり方ではなく、あくまで、少数派の都合のいい方向でしか物事を進めない、というのがありましたから、もう少しボリュームをとって歴史の包括的な理解を示し、場合によっては、反対の見方も提示しつつ議論を進めた上で、正統的な解釈を示して欲しかった気がするからです。例の「ごはん論法」に見られるように、歴史も切り取り方によっては別の見方が出来てしまう場合もあり得ないことではありません。ですから、幅広い観点からの歴史解釈のためには、新聞で許されるスペースの枠内でのエッセイでは物足りない気がして仕方ありませんでした。

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最後に、崔吉城『キリスト教とシャーマニズム』(ちくま新書) です。著者は、韓国出身の社会人類学者で、広島大学の名誉教授です。キリスト教徒でもあります。ということで、私もほのかにしか知らなかったのですが、韓国ではキリスト教徒が人口の30%近くを占めていて、宗教信徒としては最大勢力だそうですが、その韓国でのキリスト教の浸透ぶりのバックグラウンドにあるシャーマニズムについて取り上げています。著者だけでなく、私の目から見ても、呪術的なシャーマニズムや土着的な迷信っぽい物が非科学的に見え、まあ、宗教ですから、キリスト教が科学的とはまったく思わないのですが、伝統社会のシャーマニズムからすれば、キリスト教の方がよっぽど近代的な装いに見えることは確かです。おそらく、聖徳太子の時代の日本では仏教がそのような目で見られていて、仏教徒とは進歩的な勢力、という受け止めだったのだろうと想像しています。他方で、日本と違って韓国でここまでキリスト教が受容された背景として著者はこのシャーマニズムを指摘しています。やや逆説的な気もするのですが、本書での議論はそれなりに説得的です。総じて、韓国におけるキリスト教の受容とシャーマニズムの関係は複雑ながら、近くて遠い国である韓国の宗教事情には参考になったものの、私は韓国に限らず一般的なキリスト教とシャーマニズムの内容を期待していただけに、少し肩透かしを食ったような気になってしまいました。

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2021年10月15日 (金)

またまた京都を離れる!!!

本日またまた、朝から東京行きの新幹線に乗って京都を離れました。8月に続いて、今年はよくでかけます。ようやく、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の新規感染者数も減少し、ひとつのチャンスかもしれません。
明日の土曜日恒例の読書感想文はポストしたいと思いますが、日曜日はお休みするかもしれません。悪しからず。

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2021年10月14日 (木)

G20財務相・中央銀行総裁会議コミュニケを読む!!!

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イタリアがホストするG20財務相・中央銀行総裁会議が開催され、昨日、10月13日にコミュニケを採択しています。コミュニケのリンクは以下の通りです。

コミュニケでは冒頭のパラで、"Central banks are monitoring current price dynamics closely. They will act as needed to meet their mandates, including price stability, while looking through inflation pressures where they are transitory and remaining committed to clear communication of policy stances." とされているインフレ警戒感ですが、我が国の報道でも、法人最低税率などとともに広く報じられいるところ、海外報道ではハンパありません。G20コミュニケだけでなく、幅広く見ると以下の通りです。

それに引き換え、我が国はいつになったら本格的にデフレを脱却できるのでしょうか?

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2021年10月13日 (水)

予想を下回る大きなマイナスを記録した8月機械受注の先行きをどう見るか?

本日、内閣府から8月の機械受注が公表されています。統計のヘッドラインとなる変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+0.9%増の8597億円を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を引用すると以下の通りです。

8月の機械受注、前月比2.4%減 市場予想は1.7%増
内閣府が13日発表した8月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比2.4%減の8393億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1.7%増だった。
製造業は13.4%減、非製造業は7.1%増だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は17.0%増だった。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に変更した。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、このブログのローカルルールにより勝手に直近の2020年5月を景気の谷として暫定的に同定しています。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て、前月比で+1.7%増でしたので、実績の▲2.4%減は、レンジの下限▲0.4%も下回っていて、大きく下振れた印象があります。特に、3か月前の5月+7.8%増の後、6月▲1.5%減とリバウンド小さく、7月も+0.9%増の後の8月統計の▲2.4%減ですから、まあ、何と申しましょうかで、横ばい圏内から大きく下振れたわけではなく、先行きを悲観する必要も小さい、と私は考えています。上のグラフのうちの上のパネルの6か月後方移動平均の太線から見ても、横ばいないしややプラスと思います。ですから、引用した記事にあるように、統計作成官庁である内閣府が基調判断を「持ち直しの動きに足踏み」と半ノッチ引き下げるまでの必要があったかどうかはやや疑問です。加えて、業種別に見ても、製造業は前月比▲13.4%減に対して、非製造業は+7.1%ぞうですから、明らかに、半導体の供給制約による自動車生産の停滞の影響によるマイナスであり、我が国のリーディング産業のひとつである自動車の動向は気にかかりますが、現在の落ち込みは一時的なものであり、より少し長い目で見るとペントアップの挽回生産も含めて、増加に向かう可能性は十分あると私は考えています。

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成長率が下方修正された「IMF世界経済見通し」をどう見るか?

日本時間の昨夜、今週末の世銀・IMF総会に合わせて国際通貨基金(IMF)から「IMF世界経済見通し」IMF World Economic Outlook が公表されています。世界の経済成長率見通しは前回から少し下方修正され、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による健康上の懸念とともに供給面での混乱、さらに、インフレの懸念が基調として取り上げられています。当然のように、pdfの全文リポートもアップされています。国際機関のリポートに着目するのは、私のこのブログの特徴のひとつであり、簡単に見ておきたいと思います。

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まず、上のテーブルはIMFのサイトから成長率見通しの総括表 Latest World Economic Outlook Growth Projections を引用しています。見れば明らかな通り、世界経済の成長率は2021年に+5.9%、2022年にも+4.9%を記録すると見込まれています。この2021年成長率予測は直近の7月時点の予測から▲0.1%ポイント下方改定されています。要因としてあげられているのは、供給の混乱が一因で先進国の成長見通しが下方改定されるとともに、低所得途上国においてもデルタ変異株の影響などによりCOVID-19パンデミックの状況が悪化したためです。ただし、1次産品を輸出する新興市場国や発展途上国の一部において短期的な見通しが強まったことが、こういった下方改定要因を一部相殺しています。我が日本は今年2021年+2.4%成長と、7月から▲0.4%ポイント下方改定されています。先進国平均の▲0.4%ポイントの下方修正幅よりも大きいのは、東京オリンピック・パラリンピックを強行開催してCOVID-19パンデミックを拡大した影響と私は考えています。

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次に、上のグラフはリポートから Figure 1.15. Medium-Term Prospects: Output and Employment を引用しています。今回の見通しでは、とても興味深いことに、こういった中期の見通しを明らかにしています。2024年までにパンデミック以前の水準に復帰するかどうかについて、特に後半の 3. Output Losses Relative to Pre-Pandemic Trend, 2024 や 4. Employment Losses Relative to Pre-Pandemic Trend, 2024 でグラフが示されており、米国をはじめとする先進国や中国と比較して、新興国などの回復が遅れる点が明らかとされています。基本的には、ワクチン格差による景気回復テンポの違いであると考えるべきです。

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最後に、上のグラフはリポートから Figure 2.12. Headline Inflation with Adverse Sectoral and Commodity Price Shocks and Adaptive Expectations Shock を引用しています。日本でエコノミストをしていると、まったく実感がないのですが、世界的にはインフレの懸念が高まっています。すなわち、景気の回復に伴い、需要が堅調に推移する一方で、一部に供給制約が明らかとなり、国際商品市況における石油価格の急上昇などにより、インフレが急速に加速しているのは事実です。今回の見通しでは、インフレ率の上昇はさらに数か月間続き、2022年半ばにはCOVID-19パンデミック前の水準に戻る可能性が高いと予測していますが、インフレ加速のリスクはまだ払拭されていません。

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2021年10月12日 (火)

上昇率を高める企業物価指数(PPI)の先行きをどう見るか?

本日、日銀から9月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+6.3%まで上昇幅が拡大しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に引用すると以下の通りです。

9月の企業物価指数、前年比6.3%上昇 前月比0.3%上昇
日銀が12日発表した9月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は106.4で前年同月比で6.3%上昇、前月比で0.3%上昇だった。市場予想の中心は前年比5.9%上昇だった。
円ベースで輸出物価は前年比11.0%上昇、前月比で0.3%上昇した。輸入物価は前年比31.3%上昇、前月比で1.1%上昇した。

とてもコンパクトに取りまとめられています。続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期であり、2020年5月を直近の景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。

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このところ、消費者物価指数(CPI)でみても、本日公表の企業物価指数(PPI)でみても、いずれも、順調に足元で物価が下げ止まりつつあると私は評価しています。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスではPPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比で+5.9%の上昇と予想されていましたからやや上振れた印象です。国際商品市況における石油をはじめとする資源価格の上昇に起因するとはいえ、このところ、順調に物価上昇率が拡大しています。もっとも、この動きが一巡すれば上昇率で計測した物価も元に戻ることは覚悟せねばなりません。ということで、国内物価について品目別で前年同月比を少し詳しく見ると、木材・木製品が+48.3%、石油・石炭製品が+32.4%、非鉄金属が+27.0%、鉄鋼+17.8%、化学製品+12.7%などが2ケタ上昇となっています。ただし、これら品目の上昇幅拡大の背景にある原油価格の前年同月比上昇率は、今年2021年5月の+238.8%をピークに、6月+173.2%、7月+102.8%、8月+68.6%と来て、最新の9月統計では+63.3%ですから、前年同月比上昇率で見ればピークアウトに向かっている印象を私は持っています。繰り返しになりますが、基本的に、国際商品市況における石油ほかの1次産品をはじめとして、中国などの新興国における景気回復に伴って、基礎的な資源価格の上昇が背景にあると考えるべきです。つまり、必ずしも日本ではなく世界のほかの国の景気回復により、我が国の物価が上昇幅を拡大している、というわけなのかもしれません。

なお、昨夜、ノーベル経済学賞の受賞者が明らかにされています。以下の3人です。

  • David Card, University of California, Berkeley for his empirical contributions to labour economics
  • Joshua D. Angrist, Massachusetts Institute of Technology (MIT) and Guido W. Imbens, Stanford University for their methodological contributions to the analysis of causal relationships

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2021年10月11日 (月)

電車をはじめとする関西の移動について考える?

東京から京都に引越して1年半が経過し、いろいろと慣れないことも多いながら、電車だけは東京より格段に快適です。関西、というか、京都に引越して「何をするにも時間がかかる」と思うのですが、電車だけは速いです。特にひどく時間がかかるのはファストフードで、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックのためにドライブスルーとかデリバリーを強化した結果なのだろうと考えられますが、ともかく時間がかかります。それに対して電車はさすがに素早い対応なのですが、時折、というか、私の利用する京都線や琵琶湖線はトラブルが多いのを除けば、とても速く着きます。JRの京都線や琵琶湖線はスピードを出しているのだろうと想像しています。その上、おそらく、まだまだ輸送キャパに余裕があるため、座れる確率も高い気がします。かなりの高校生はやせ我慢かどうか、優先席には座ろうとしません。私は60歳を超えていますので、堂々と優先席に座ります。東京でしたら、特に朝夕のラッシュ時には優先席に座ってくれないと、逆に、混み具合がひどくなります。繰り返しになりますが、関西はまだ輸送キャパに余裕ある気がします。
東京も関西もともに、電車やバスでスマホをいじっていいる人が多数を占める点は変わりありません。ただ、私なんかは空いている時間帯に乗るにもかかわらず、電車やバスでほとんど足を組んでいる人を見かけません。私自身は空いていれば足を組むのがデフォルトになっているのですが、関西では女性も足を組む人は少ない気がします。そして、同じくとても少ないのが網棚の利用です。これも輸送キャパとの関係かもしれませんが、床に荷物を置く人が多い気がします。網棚に荷物を置くのはほぼほぼ私に限られているような気がしないでもありません。それから、電車とは直接の関係ないのですが、折りたたみ傘の利用が進んでおらず、長い傘を電車やバスに持ち込む人がやたらと目立ちます。

一定のカルチャーなのか、輸送キャパから導かれる理由ある反応なのか、定かではない例もいくつかありますが、関西、特に、京都の電車事情でした。ヒマがあれば、またまた東京と京都の比較をしてみたいと考えます。

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2021年10月10日 (日)

ものすごい上り坂をがんばって太陽が丘に行く!!!

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実は、今日ではないんですが、いいお天気に誘われて宇治市にある京都府立山城総合運動公園、通称、太陽が丘に自転車で山登りをしてきました。私は京都に引越した今でこそ、上の写真に見るように、クロスバイクに乗っていますが、東京のころにはマウンテンバイクでしたので、スキーと同じで、上りは自転車を運んで下りを楽しむ、という方式でした。まあ、実は、ほとんど舗装路を走っていたんですが、マウンテンバイクはそういうものです。
ものすごい上り坂でした。その割には、上り切ってしまうと、それほど自転車で走れるスペースはなかったりします。その昔、2007年5月のゴールデンウィークには一家そろって太陽が丘の近くに宿泊して、このあたりで遊んだ記憶があります。

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2021年10月 9日 (土)

今週の読書は経済学の学術書をはじめとして新書も含めて計4冊!!!

今週の読書は、小難しい経済学の学術書を筆頭に新書を3冊の合計4冊でした。そして、いつもお示ししている本年の読書の進行ですが、このブログで取り上げた新刊書だけで、1~3月期に56冊、4~6月も同じく56冊、7~9月で69冊、さらに、先週までの10月分が4冊に、今日取り上げた4冊を加えて、合計185冊になりました。たぶん、あくまでたぶん、ですが、11月中には200冊を超えるのではないかと予想しています。今日は、大学の就職セミナーが10時からあり、普段よりも少し早めにポストします。

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まず、杉山敏啓『銀行業の競争度』(日本評論社) です。著者は、江戸川大学の研究者であり、本書は学術書と考えるべきです。すんわち、日本の銀行についてオーバーバンキングの観点から邦銀の低収益性について分析を進めています。競争とオーバーバンキングについては、2つの角度からの分析が可能であり、本書でも示されている通り、マークアップの価格面からの分析と市場集中度の構造面からの分析です。本書では後者の構造面については、地域別にハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)を算出して分析しています。ただし、オーバーバンキングとしては収益面からの私的であることが多く、やはり、価格面からの分析がより重要となると私は考えます。しかしながら、我が国の現状では、ホントに競争によるオーバーバンキングから、すなわち、過剰競争によって銀行が低収益に苦しんでいるのか、それとも、金融政策に起因して低金利やフラットなイールドカーブにより利ざやが得られないのか、は判然としない恐れがあります。今世紀に入ってから、メガバンクに限定せずとも、地域の地方銀行においても銀行の合併が進んでいることは明らかであり、店舗数も面積も減少していて、おそらく、私の直感では構造的には競争度が低下している可能性が高いと考えています。通常は競争度が低下し独占度が高まれば、希少性の高まりとともに価格設定が有利になって収益が上がる、と経済理論では想定しているわけですが、実際には銀行の収益はむしろ日銀オペなどによって国債から発生しているように私は見ています。ただし、他方で、本書の第6章とかの最後の方でも分析されているように、プルーデンス的には経営の安定性は増すことが実証されており、低収益ながらも経営安定は崩れない、という点は指摘しておきたいと思います。1990年のバブル崩壊後に当時の大蔵省は、いわゆる護送船団方式を放棄して、実際に、破綻に追い込まれる金融機関が出ましたが、金融機関の合併による構造的な競争回避行動は、こういった破綻防止の観点からは有益であったと考えられます。銀行の特殊性は、何といっても、決済機能に由来しており、システミック・リスクを発生させないというプルーデンスの観点も重要です。最後に、ですから、いわゆる too big to fail (TBTF) 原則が金融機関に適用される場合があるわけですが、逆に、足利銀行の例を引いて、地域で巨大な役割を果たす TBTF 銀行であるがゆえに、ゾンビ的な地域企業を支える必要があり、そのために破綻に瀕する可能性が高まる、というのも何となく理解できる気がします。

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次に、金井利之『コロナ対策禍の国と自治体』(ちくま新書) です。著者は、東京大学の研究者であり、自治体行政学と紹介されています。本書では、昨年来の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)への地方公共団体の対応について、災害対応とも比較しつつ、中央政府と地方政府の関係も踏まえた分析が示されています。国や地方自治体の災害対応については、常時十分な対応体制を取ることはムダが多いのかもしれませんが、でも、東京都のようにCOVID-19パンデミックが目の前に見えている昨年2020年4月1日をもって都立病院の独立行政本陣化を進めるなど、コストセクターの削減を露骨に進めた点については、私は評価低いと考えざるを得ません。資源効率を重視することはそれなりに重要ですが、COVID-19対応のように業務が急速に拡大するおそれある分野については、通常の平時から一定の余裕をもたせた対応も必要です。特に、災害と同じで感染症対応についても地域住民の生命がモロにかかっている点を考慮すれば、余裕持った対応が求められることを忘れるべきではありません。本書で指摘するように、災害対応と同じようにCOVID-19対応についても法的根拠や財政の裏付けがないとして回避するがごとき対応をとってる地方自治体は少なくない印象を私は持っており、そういった地方政府の対応が感染症終息の大きな障害になっていることも事実です。逆に、中央政府を差し置いて東京都や大阪府が主導権を握らんとするような落ち着きない対応もCOVID-19パンデミック初期には見られた部分もあって、中央と地方の連携が重要だと改めて気付かされた気がします。

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最後に、半藤一利『歴史探偵 忘れ残りの記』『歴史探偵 昭和の教え』(文春新書) です。著者は、『週刊文春』や『文藝春秋』の編集長を務め、『日本のいちばん長い日』などの歴史小説でも有名なジャーナリストです。今年2021年1月に亡くなっています。その著者のエッセイのうち、アチコチのコラムなどに掲載されたものを編集して新書にしています。この2冊で終わるのか、さらに何冊か出版されるのか、現時点で私は情報を持ち合わせませんが、この2冊もやや取りとめないながら、なかなか洒脱な軽い読み物に仕上がっています。もともとは、『文藝春秋』の「新刊のお知らせ」とか、朝日新聞の「歴史探偵おぼえ書き」などに掲載されたコラムです。主として、昭和史、編集者のころに関係した文豪、文藝春秋社のあった銀座の街、あるいは、筆者の生まれ育った東京の下町や中学校に通った新潟県長岡などなど、ひとつのテーマに従ったエッセイ集ではありませんが、いくつかはとてもいい仕上がりになっていますし、何より、時間つぶしにはもってこいです。その意味で、とてもオススメです。ただし、私だけかもしれませんが、ほとんど頭には残りません。

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2021年10月 8日 (金)

雇用者増が20万人足らずに終わった米国雇用統計をどう見るか?

日本時間の今夜、米国労働省から9月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は今年2021年に入って着実にプラスを記録していたのですが、本日公表の9月統計では+194千人増にとどまっています。ただし、失業率は前月の5.2%から9月には4.8%に低下しています。まず、長くなりますが、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を最初の6パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy adds disappointing 194,000 jobs in September as schools reopen but COVID spikes linger
Hiring slowed again in September as a surge in COVID 19 cases offset the reopening of most schools and expiration of unemployment benefits, developments that were expected to coax some Americans back to work.
The economy added 194,000 jobs and the unemployment rate, which is calculated from a different survey, fell from 5.2% to 4.8%, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that 488,000 jobs were added last month.
A modest consolation: Job gains for July and August revised up by a total 169,000.
So far, the U.S. has recovered 17.4 million, or 78%, of the 22.4 million jobs lost during the depths of the pandemic in the spring of 2020. That leaves the nation 5 million jobs below its pre-crisis level.
The September report likely captured a labor market still healing from a soft patch after disappointing job gains in August followed blockbuster advances the prior two months, economists said.

長くなりましたが、まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは今年2020年2月を米国景気の山と認定しています。ともかく、2020年4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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引用した記事にもあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスでは約+500千人の雇用増が予想されていましたので、+194千人増は多くのエコノミストから物足りない数字と受け止められているんではないかと私は想像しています。他方で、失業率は今年2021年年初には6%前後だったんですが、最近では5%を下回る水準までまで低下を示しています。ということで、やはり、9月統計については、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミック拡大の影響で雇用改善にブレーキがかかった、というのが大方のエコノミストの見方ではないでしょうか。特に、8月統計の雇用者数がやや上方修正されて前月差で+366万人の増加を見ていただけに、落差を大きく感じるのも事実です。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が進んでいたところに、バイデン政権の大幅な財政拡大があって、雇用改善が進んでいたわけなんですが、やはり、財政政策だけではデルタ株によるCOVID-19のパンデミックには十分ではなかった可能性があります。引用した記事にもあるように、COVID-19パンデミックで失われた雇用が22.4百万人あり、そのうちの17.4百万人、78%しか回復できていません。失業率も9月統計では5%を下回りましたが、パンデミック前には3%台半ばだったわけですから、現状ではまだCOVID-19の影響を脱したとはいえません。
この先、金融政策の動向が焦点となります。11月2~3日に連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されますが、この雇用統計を横目で見て、量的緩和政策の修正、すなわち、テーパリングの開始まで踏み込んだ金融政策運営が出来るかどうか、大いに注目です。

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首位攻防第1戦をなすすべなくアッサリ負けてタイガース終戦!!!

  RHE
阪  神000100000 150
ヤクルト110020000 481

なすすべなくヤクルトに負けて、タイガース終戦でした。
まあ、昨夜の及川投手の被弾-敗戦から予想された流れではありますが、何の抵抗もできませんでした。残り試合は怪我ないように気をつけて下さい。

残りの消化試合はまったりと、
がんばれタイガース!

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大きく改善した景気ウォッチャーと黒字の続く経常収支をどう見るか?

本日、内閣府から9月の景気ウォッチャーが、また、財務省から8月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+7.4ポイント上昇の42.1、先行き判断DIも+12.9ポイント上昇の56.6を記録しています。ともに、大幅な改善を見せています。また、経常収支は、季節調整していない原系列で+1兆6656億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を、景気ウォッチャーについては読売新聞のサイトから、経常収支については日経新聞のサイトから、それぞれ引用すると以下の通りです。

9月の街角景気、2か月ぶり改善...前月比7.4ポイント上昇
内閣府が8日発表した9月の景気ウォッチャー調査によると、景気に敏感な小売店主らに聞いた「街角景気」の現状を3か月前と比べた判断指数(DI、季節調整値)は前月比7.4ポイント高い42.1で、2か月ぶりに改善した。
2~3か月先の景気の見通しを示す先行き判断指数は前月比12.9ポイント上昇の56.6となり、3か月ぶりに改善した。
8月の経常収支、1兆6656億円の黒字 86カ月連続黒字
財務省が8日発表した8月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆6656億円の黒字だった。黒字は86カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆5409億円の黒字だった。
貿易収支は3724億円の赤字、第1次所得収支は2兆4259億円の黒字だった。

短いながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に同定しています。

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ということで、景気ウォッチャーは現状判断DIも、先行き判断DIも、ともに大きくジャンプしました。すべての要因は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的影響の緩和であり、ひとつは新規感染者数の減少により、予定通りに、9月末をもって緊急事態宣言が解除され、しかも、まん延防止等重点措置も講じられることなく、完全解除となりましたから、マインド的には大きなインパクトあったと考えるべきです。そして、もうひとつはそのバックグラウンドとなったワクチン接種の進展です。ですから、現状判断DIの前月差で見て、合計+7.4ポイント上昇で、それはそれとして大きな上昇なんですが、3つのカテゴリーに分けると、家計動向関連が+9.6ポイント上昇したのに対して、企業動向関連はわずかに+2.0ポイントにとどまっています。もちろん、半導体などの自動車部品の供給制約も含めての結果と私は受け止めています。家計動向関連の中でも、飲食関連+12.8ポイント、サービス関連+10.7ポイント、小売関連+8.9ポイント、などとなっています。このため、統計作成館長である内閣府では、基調判断を8月の「持ち直しの期待がみられる」から9月には「持ち直しが続くとみている」に、ビミョーに上方修正しています。ただし、いつもの私の考えですが、経済の先行き見通しは完全にCOVID-19次第となりました。またまた新たな変異株が新規感染者を増加させて緊急事態宣言が出たりすると、元の木阿弥になりかねません。少なくとも、前政権は検査体制を含めて医療体制の整備にはまったく関心を示しませんでしたから、感染拡大に従って緊急事態宣言が出て、感染減少に伴って緊急事態宣言が解除される、という繰り返しでしたが、現在の岸田内閣には、PCR検査の拡充も含めて、何とか抜本的な医療体制整備を図ってほしいと私は考えています。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。引用した記事では、輸出が大幅増としていますが、昨年2020年5~6月ころは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの経済への影響がもっとも大きかった時期ですので、今年2021年年央まで前年同月比で見れば、輸出入とも大きな増加を示している結果となっているだけです。輸出については、我が国は世界経済が順調に拡大している恩恵を享受していて、輸入は国内景気が伸び悩む中で国際商品市況における石油価格の値上がりから増加を示している、ということになります。ただし、8月統計については、マクロでは世界経済の回復が我が国輸出に拡大効果をもたらしているのですが、マイクロな効果として、自動車産業への半導体などの部品供給制約が強まり貿易収支は赤字を記録しています。これも、東南アジアにおける新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響が大きな要因と考えられており、エコノミストには少し先行きが見通しにくくなっている気がします。

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2021年10月 7日 (木)

下降の続く景気動向指数の基調判断が「改善」続く不思議?

本日、内閣府から8月の景気動向指数公表されています。CI先行指数が前月から▲2.3ポイント下降して101.8を示し、CI一致指数も前月から▲2.9ポイント下降して91.5を記録しています。まず、統計のヘッドラインを手短に報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

8月の景気一致指数、2.9ポイント低下 基調判断は据え置き
内閣府が7日発表した8月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比2.9ポイント低下の91.5となった。QUICKがまとめた市場予想の中央値は2.9ポイント低下だった。数カ月後の景気を示す先行指数は2.3ポイント低下の101.8だった。
内閣府は、一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「改善」で据え置いた。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気変動の大きさやテンポを示す。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に同定しています。

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ということで、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では、3月に基調判断を上方改定して、8月統計でも6か月連続で「改善」に据え置きとなっています。基準がどうなっているかというと、「3か月後方移動平均が3か月連続して上昇していて、当月の前月差の符号がプラス」となっています。後者の当月の前月差は先月の7月統計からマイナスに転化し、3か月後方移動平均も同じく2か月連続でマイナスですので、やや不思議な気もします。3か月後方移動平均がマイナスになっているのですから、「足踏み」ではないか、と私は考えます。ただし、あくまで「原則」であって、「足踏み」には加えて、「マイナス幅(1か月、2か月または3か月の累積)が1標準偏差分以上」という基準もありますので、マイナス幅がこの標準偏差まで達していないのであろうと考えています。かなり機械的に判断を下すシステムですので、まさか、総選挙が近いので「改善」の看板を下ろせない、ということはないのだろうと私は考えています。
8月統計について、CI一致指数を詳しく見ると、マイナスの寄与が大きい順に、耐久消費財出荷指数、商業販売額(小売業)(前年同月比)、鉱工業用生産財出荷指数、生産指数(鉱工業)などの系列で大きくなっています。逆に、プラス寄与はトレンド成分で仮り置きし 営業利益(全産業)しかありません。加えて、統計には反映されていないものの、生産や輸出については、半導体の供給制約とアジアにおける新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う部品不足が自動車工業の先行きに影を落としています。我が国の基幹産業であるだけに今後の動向が注目されます。

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2021年10月 6日 (水)

ロハス選手のツーランを先発西投手とリリーフ陣が守りきって5連勝!!!

  RHE
阪  神000200000 280
横  浜000000000 081

投手戦というよりは貧打線に近い内容ながら、横浜に勝って5連勝でした。
繰り返しになりますが、両チームともに塁上を賑わしながら決定打なく、特に、阪神は終盤に決定的なチャンスばかりでしたが、結局は投手力に頼る勝利でした。まあ、仕方ありません。ヤクルトに追いつき、追い越すためには、打線の奮起が不可欠と考えるべきです。

明日とその次のヤクルト戦は、
がんばれタイガース!

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2021年10月 5日 (火)

「経済財政白書」第3章雇用をめぐる変化と課題を読む!!!

随分と旧聞に属する話題ですが、先月9月24日に年次経済財政報告、すなわち、今年度の「経済財政白書」が閣議で配布されています。遅ればせながら、私の興味の範囲で第3章雇用をめぐる変化と課題について、特に、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の雇用への影響に注目して簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、COVID-19の雇用への影響を取りまとめると、以下の2点になります。(1) 労働時間は減少、(2) 正規雇用が増加した一方で非正規雇用は減少、です。最初の点は、休業など出勤日数の減少が大きく、第2の点は、業種別に見て、宿泊・飲食サービス業や生活関連サービス・娯楽業では、非正規雇用が大幅に減少した一方で、需要が増加している情報通信業や医療・福祉等では正規雇用が増加していることが要因です。ですから、どこまで非正規雇用から正規雇用にシフトしたのかは疑問があります。

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そして、上のグラフをp.155で第3-1-6図 OECD諸国における感染症の影響が大きい属性、として示して、COVID-19が雇用に及ぼす影響を属性別に見ると、ほぼ国際的に共通した特性が見られると指摘し、(1) パートなど非正規、(2) 年齢的には若年者と高齢者、(3) 性別では男性より女性、(4) 低スキル、 従って、(5) 低賃金、(6) 業種としては、飲食・宿泊サービス、運輸・保管業、卸売・小売業等、製造業、などを上げています。特に上のグラフでは、2009年におけるリーマン・ショック後の労働市場と比較していて、我が国においては、2009年時点では製造業に働く男性雇用者の派遣切りが話題になりましたが、今回はサービス業の女性非正規雇用が影響を受けているのが見て取れると思います。

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最後に、テレワークについては、ルーティン化していない仕事がテレワークに馴染みやすい傾向にある一方で、各種調査で主観的な生産性はテレワークで低下したとする結果が出ていると指摘し、その生産性低下要因を上のグラフのp.164第3-1-10図 テレワークによる生産性の変化とデメリットと題して示しています。在宅勤務実施に必要な環境整備といったハード面ももちろん重要な課題なのですが、ソフト面の課題として、社内での気軽な相談や報告、相対でのみ可能な円滑なコミュニケーションなどが出勤時には可能な一方で、テレワーク実施時には困難である、といった点が考えられると分析しています。

第3章以外にも、第1章 我が国経済の現状とマクロ面の課題、の現状分析や、第2章 企業からみた我が国経済の変化と課題、の企業分析も、役所から印刷物が届き次第読み進みたいと考えています。

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2021年10月 4日 (月)

今週はノーベル賞ウィーク!!!

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広く報じられているように、今週から来週の月曜日にかけてはノーベル賞の公表が相次ぎます。中でも、来週の10月11日は経済学賞の受賞者が明らかにされます。
ノーベル賞にかなり近いといわれているクラリベイトの引用栄誉賞が9月22日に明らかにされていて、経済学については以下の通りです、

nameaffiliationmotivation
David B. AudretschDistinguished Professor, Ameritech Chair of Economic Development, and Director, Institute for Development Strategies, O'Neill School of Public and Environmental Affairs, Indiana Universityfor pioneering research on entrepreneurship, innovation, and competition
David J. TeeceDirector, Tusher Initiative for the Management of Intellectual Capital; Professor of Business Administration, Institute for Business Innovation, Haas School of Business, University of California, Berkeley
Joel MokyrRobert H. Strotz Professor of Arts and Sciences and Professor of Economics and History, Northwestern University, Evanston, Illinois, USAfor contributions to labor economics, especially her analysis of women and the gender pay gap
Carmen M. ReinhartMinos A. Zombanakis Professor of the International Financial System, Harvard Kennedy Schoolfor contributions to international macroeconomics and insights on global debt and financial crises
Kenneth S. RogoffProfessor of Economics and Thomas D. Cabot Professor of Public Policy, Department of Economics, Harvard University

さて、今年のノーベル経済学性は誰の手に?

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2021年10月 3日 (日)

マルテ選手の決勝ソロと先発ガンケル投手のナイスピッチングで中日を3タテ!!!

  RHE
中  日000000000 040
阪  神00100000x 170

なかなか引き締まった投手戦が展開され、結局、得点はマルテ選手の先制ソロの1点だけでしたが、先発ガンケル投手とリリーフ陣のナイスピッチングで、中日を3タテでした。
甲子園に戻って、広島に3タテされた折には、どうなることかと思いましたが、中日を3タテして、荒っぽい展開ながら、何とか首位ヤクルトを追いかけています。それにしても、広島は阪神に3連勝しながら、ヤクルトには3連敗というのは、やや腹立たしい気がします。

次の横浜戦も、
がんばれタイガース!

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2021年10月 2日 (土)

高橋遥人投手の連続完封で中日に連勝!!!

  RHE
中  日000000000 050
阪  神30000000x 350

高橋遥人投手の連続完封で、中日に連勝でした。私はかろうじて江夏投手をリアリタイムで見ていた世代ですが、結果を見ればまさに江夏投手を思い起こさせる出来です。
昨夜までの広島との3連戦は、何と、3タテされてしまい、私も後期授業が始まって大忙しで試合を見る気もなく、ブログでもそれほど取り上げなかったんですが、龍虎同盟は健在のようです。打線は、初回のマルテ選手のスリーランの得点だけだったのですが、高橋投手には3点もあれば十分なのかもしれません。陽の高いうちから缶チューハイを空けて、野球観戦をしっかりと楽しみました。

明日も、
がんばれタイガース!

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今週の読書はマルクス主義哲学・経済学の教養書と新書3冊の計4冊!!!

今週の読書は、マルクス主義哲学ないし経済学の教養書に加えて、新書を3冊という読書で計4冊でした。そして、いつもお示ししている本年の読書の進行ですが、このブログで取り上げた新刊書だけで、1~3月期に56冊、4~6月も同じく56冊、先週取り上げた6冊を含めて7~9月で69冊、さらに、今日の分からは10月カウントとし、4冊ですから、これらを合計して181冊になりました。

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まず、マルクス・ガブリエルほか『資本主義と危機』(岩波書店) です。著者は、著名なマルクス主義に基づく歴史学者、哲学者などで、聞き手も含めて出版社のサイトにある順で、マルクス・ガブリエル、イマニュエル・ウォーラーステイン、ナンシー・フレイザー、アクセル・ホネット、ジョン・ベラミー・フォスター、大河内泰樹、斎藤幸平、ガエル・カーティ、ということになります。最後の3人が基本的に聞き手で、それ以外がインタビューを受ける、という形になっています。出版は今年2021年5月なんですが、ウォーラーステイン教授はすでに一昨年2019年に亡くなっていますし、どこか忘れましたが、2014年のインタビューなんてのもあった記憶があります。マルキストでなくても、例えば、米国クリントン政権の労働長官を務めたライシュ教授なんかでも邦訳タイトルながら『暴走する資本主義』なんて著書もありましたし、現時点で、ネオリベラリズム政策にも起因して資本主義が暴走する危機にある点では、かなりの左派リベラルは一致点が見いだせると思います。ですからこそ、日本の近づく総選挙でも野党共闘が成立したりしているわけです。おそらく、経済的な格差や貧困の観点から、現在の経済が大きな危機に陥っていることは間違いありません。決して左派・リベラルとはいえない主流派エコノミストも、「長期停滞論」の観点から現在の経済が戦後の黄金時代の経済、我が国でいえば高度成長期の経済から大きく変質している点はムリなく合意できると思います。その観点からマルキストはどう考えるか、ただし、エコノミストというよりは主として哲学の方面からの見方・考え方が中心に置かれていますが、それなりに経済への示唆も含まれています。各インタビューの冒頭で、インタビューを受ける著者の資本主義感が述べられていることがあり、私にはなかなか興味深いものがありました。特に、第2章のホネット教授が指摘するように、資本主義とは市場社会の特定の形式に過ぎず、生産、金融、土地資本といった固有の収益率を持つ私有財産に結びついた形式であると述べているのは、まさにその通りという気がします。ハーディンの「共有地の悲劇」"Tragedy of the Commons" やノーベル経済学賞も受賞したノース教授などの制度学派の歴史的な見方が典型であるように、私有財産制度が市場経済の基礎をなしており、すなわち、共有地などのコモンがすべて私有財産として分割され切ったのが資本主義で、それぞれの私有財産の収益率により経済的な格差が生じているわけで、もっとも人口に膾炙したのがピケティ教授の r>g なわけです。そして、私なんかは、市場における価格だけでなく、外部経済のスピルオーバーも含めた本来の社会的な価値に従って分配を是正したりすることが必要と考えていますし、おそらく、マルキストは私有財産の部分からコモンの部分への再分配を通じて格差や貧困を是正する方向なんではないか、という気もします。典型的に、ベーシックインカムはコモンの部分を拡大して個人に分配しようとするものです。もっとも、私は今はマルクス主義とは遠い位置にありますので、私の理解が正確かどうかは自信がありません。そして、格差や貧困と並んで、そのもっとも重要な課題のひとつが、いうまでもなく、地球環境問題・気候変動問題です。これは市場システムでは解決できるとは私には到底思えません。ただし、脱成長の概念がマルクス主義から離れていて、マルクス主義はあくまで永遠の成長論であるとする見方は余りに二元論的な気もします。難しいところですが、私の専門外ながら、なかなかに示唆を得ることが出来た読書だったと思います。

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次に、竹下隆一郎『SDGsがひらくビジネス新時代』(ちくま新書) です。著者は、朝日新聞やハフポストのジャーナリスト出身で、今は経済コンテンツサービスを創業する予定らしいです。本書では、やや、SNSに代表されるネットメディアとSDGsが混同されているきらいもありますが、いずれにせよ、私の目から見て、ネットのSNSから個人が発信する上方の重要性に対して、少し楽観的に過ぎる好意を持って書かれている気もします。世間は本書ほどナイーブではないと私は考えています。ということで、本書では、SDGsとともに、アイデンティティという用語をキーワードにして、個人がネットのSNSから情報発信が出来るようになって、それなりの情報支配力を持つ可能性が生まれ、従って、企業は優等生的になった、と冒頭で紹介しています。まあ、SNSからの発信であって、それ自体としてはSDGsとは直接の関係ありませんが、後段で、SDGsがこういった情報発信に乗っかるという方向に議論が進みます。ただ、ネットのSNSを利用した個人の情報発信までは、本書で取り上げているように実例もいくつかありますから、100歩譲って認めるとしても、企業が「優等生化」した、という点はどうでしょうか。個別具体的な企業名は上げませんが、特に、オーナー企業でトップが差別的な情報発信をしたり、上司が部下のワクチン接種に業務を超えて支持を出したりといった例は、まだまだ散見されます。そして、本書でも軽く指摘されているように、育休制度が実際には経営体力に余裕ある大企業や公務員だけの「特権」的な存在になりつつある恐れも残されており、同様に、SDGsに取り組むのも同じような余裕ある企業だけ、という可能性も懸念されます。ただ、2000年から2015年までのMDGsが基本的に政府レベルの開発計画だったのにに比べて、SDGsは本書での視点通りにビジネスを巻き込んだ動きになった点は大いに評価されるべきだと私は考えます。おそらく、SDGsについての意識がもっとも低いのは、私が属しているような大学をはじめとする教育機関ではないか、という気すらします。私は本学に赴任してその点を痛感し、愕然とした思いをした記憶があります。もっとも、大学だから意識が低いのか、あるいは、書とから遠く離れているから意識が低いのか、についてはまだ判断を下しかねています。

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次に、津田一郎『数学とはどんな学問か?』(ブルーバックス) です。著者は、北海道大学などで数学の研究者をしています。ですから、というわけでもありませんが、数学の教師・研究者らしく、副題が「数学嫌いのための数学入門」となっていて、自分たち以外の一般ピープルは数学が苦手で嫌いなのだろうという思い込みから始まっています。私も統計や数学やについてお話する機会が少なくないもので、まあ、仕方ないかもしれません。ですから、教師らしい上から目線で書かれており、評価は分かれます。典型的には、AMAZONのレビューを私が見たときには、レビュアーがたったの4人だったのですが、5ツ星1人、4ツ星1人、3ツ星がいなくて、2ツ星1人、1ツ星1人、という見事なまでに散らばった評価が出ていました。加えて、私が必ずしもオススメしないのは、実生活上の応用の観点がまったくないことです。三角形の2辺の和は1辺より長い、と、指数対数でウィルス感染者数の増加曲線、くらいで、数学が実用的でないことを自ら実証しているような気さえしました。いずれにせよ、小学校の算数が文字式を使わずに鶴亀算なんかで解いていたのに対して、中学校に上がって数学になれば文字式、というか、方程式を組んで解く方式に変わるわけで、本書でも数式がいっぱい出てきて、どこまでの理解を前提としているのかが、副題との関係で非常に不可解でした。たぶん、それほど深い考えなしに執筆するとこうなるんだという気がします。さらに、上から目線でエラそうにしていると感じたのは、数学者が詐欺に引っかからないとか、数学に強いと就職に有利とかの無神経な記述が散見され、まあ、サブタイトルとは似ても似つかない高慢ちきな内容に仕上がっています。決してオススメしません。読む前から判っていた気もしますが、少し残念な読書でした。

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最後に、稲田和浩『江戸のいろごと』(平凡社新書) です。著者は、大衆芸能脚本家、ライター、作家となっています。私は前にこの著者の同じ平凡社新書の『江戸落語で知る四季のご馳走』という本を読んだ記憶があります。そこでは、「江戸落語」となっていて、本書では「江戸」なしの「落語で知る男と女」がサブタイトルですから、当然、上方落語も加わります。もちろん、タイトル通りに吉原から始まって、品川・板橋・千住・新宿の江戸四宿、さらに、いろいろと男女のお話が続きます。江戸期は、まあ、ひょっとしたら今でもそうなのかもしれませんが、「いろごと」に関して日本人、というか、江戸の人はそれなりに寛容であることが明らかにされています。江戸だけでなく上方も含めて、基本はは、落語から題材をとっていますので、多くのエピソードは町民、というか、一般庶民なんですが、中には大金持ちの大商人や大名を始めとする支配階級である武士のエピソードもあります。時代も違うわけですし、どこまでが江戸期の実態を表しているのかは不明ですが、落語で語り伝えられているだけに、やや笑いに茶化した部分が少なくないとはいえ、それ相応の説得力はあります。すぐに読み終わりますが、まあ、適当な時間つぶしには悪くないと思います。ただし、落語にまつわる古典芸能的なウンチクは身につかなさそうな気もしないでもありません。

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2021年10月 1日 (金)

予想外の改善を示した日銀短観ともたつき目立つ雇用統計!!!

本日、日銀から9月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは6月調査から+4ポイント改善して+18を示した一方で、本年度2021年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比+7.9%の大幅な増加となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業景況感、製造業4ポイント改善 9月日銀短観
日銀が1日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス18と前回の6月調査のプラス14から4ポイント改善した。改善は5四半期連続。大企業非製造業の同DIはプラス2で小幅に改善した。国内外のIT(情報技術)を中心とした需要増に支えられ足元の景況感は全体としては上向いているものの、半導体不足など原材料の供給制約が重荷になっている。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値。今回の調査は8月26日~9月30日に実施した。東京など19都道府県は緊急事態宣言が発令中だった。
大企業製造業のDIはQUICKが集計した民間予測の中心値(プラス13)を上回った。新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年6月にマイナス34まで落ち込んだものの、その後は改善が続いている。9月調査では主要16業種のうち11業種で改善した。IT需要が後押しし、紙・パルプや業務用機械などの業種が好調だった。一方、東南アジアの感染拡大による部品などの供給制約で、自動車はマイナス7ポイントと10ポイント悪化した。
大企業非製造業のDIはプラス2と、前回のプラス1から小幅に改善した。製造業と同様に5四半期連続で改善したものの、水準はコロナ禍前に戻っていない。緊急事態宣言による行動制限が影響し、対個人サービスは悪化。宿泊・飲食サービスは横ばいだった。主要12業種のうち、改善したのは4業種にとどまった。東京五輪・パラリンピックの警備需要などで対事業所サービスが大きく改善した。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2020年5月、あるいは、四半期ベースでは2020年4~6月期を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで認定しています。

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まず、今週火曜日の9月28日付けのこのブログでも日銀短観予想を取り上げ、ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIにせよ、設備投資計画にせよ、やや停滞気味で大きな改善がなさそうとの見込みという結果をお示ししていましたし、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じく大企業製造業の業況判断DIが+13と前回6月調査から大きな変化なさそうと報じられていましたが、実績が+18ですから、やや上振れた印象です。ほかの主要な経済指標とともに、昨年2020年5月ないし4~6月期が直近の景気の底となっているのは、ほぼほぼ共通しています。もちろん、業種別にはバラツキが大きく、総じて内需や対人接触型セクターのウェイトが高い非製造業では業況感の改善幅が小さく、かつ、水準も低い一方で、それなりに輸出で需要が見込める製造業では改善が大きく、かつ、水準も高い、との結果が示されています。すなわち、大企業カテゴリーの6月調査から9月調査への業況判断DIの変化で見て、電気機械が+2ポイント改善して+30、生産用機械も+8ポイント改善して+34、業務用機械も+8ポイント改善して+16、などに達しています、製造業で唯一の例外といえそうなのは、半導体などの供給制約による減産に追い込まれている自動車であり、▲10ポイント悪化の▲7となっています。対して、非製造業では新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響が大きい業種に注目すると、同じ大企業カテゴリーで見て、宿泊・飲食サービスこそもうこれ以上の悪化のしようがないのか、横ばいの▲74ですが、対個人サービスが▲14ポイント悪化の▲45、小売が▲6ポイント悪化の▲4、などを指摘することが出来ます。ただし、製造業の自動車や非製造業で上げた3業種などは、先行きはそれぞれ改善を見込んでいます。

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続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。経済学的な生産関数のインプットとなる資本と労働の代理変数である設備と雇用人員については、方向としてはいずれも方向として不足感が広がる傾向にあります。DIの水準として、設備については、昨年2021年年央の+10くらいの過剰感はほぼほぼ解消された一方で、まだ不足感が広がるという段階には達していません。他方、雇用人員についてはプラスに転ずることなく反転し、足元から目先では不足感が強まっている、ということになります。ただし、何度もこのブログで指摘しているように、賃金が上昇するという段階までの雇用人員の不足は生じていない、という点には注意が必要です。我が国人口がすでに減少過程にあるという事実が、かなり印象として強めに企業マインドに反映されている可能性があると私はと考えています。ですから、マインドだけに不足感があって、経済実態としてどこまでホントに人手が不足しているのかは、私には謎です。賃金がサッパリ上がらないからそう思えて仕方がありません。特に、雇用に関しては、新卒採用について新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響がもっとも強く出ている可能性があり、新卒採用計画については、直近の6月調査の全規模で見て2020年度の新卒採用計画が前年度比▲6.8%の減少だった一方で、2022年度採用のリバウンドはわずかに+3.3%増にとどまっています。いずれにせよ、就活にいそしむ学生を身近に感じている大学教員のヒガミかもしれませんが、雇用調整助成金で現有勢力の雇用を維持する一方で、新卒一括採用のシステムの中で、学生の就活にしわ寄せが来るのは避けたい気がします。強くします。

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日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。日銀短観の設備投資計画のクセとして、3月調査時点ではまだ年度計画を決めている企業が少ないためか、3月にはマイナスか小さい伸び率で始まった後、6月調査で大きく上方修正され、景気がよければ、9月調査ではさらに上方修正される、というのがあったんですが、昨年度2020年度は大きく通常と異る動きでした。黄色いラインが調査時点とともに下がり続けているのが見て取れます。しかし、今年度2021年度は従来型の動きに戻っている気がします。3月調査の設備投資計画が全規模全産業で+0.5%増のプラスで始まった後、6月調査では7.2%増に上方修正され、本日公表の9月調査では+7.9%増に上方修正されています。COVID-19のショックがもっとも大きかった昨年度2020年度に設備投資を絞ったため、今年度2021年度の設備投資を増やす、という隔年効果があるものと考えられます。ただし、昨年度2020年度の実績見込が▲8.5%減であるのに対して、今年2021年度のリバウインドは現時点ではマラ+8%にも達していませんから、そこは注意が必要です。また、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは大企業設備投資で+9.1%増だったのに対して、実績は+10.1%増でしたので、ほぼこんなもんという気がします。加えて、グラフは示しませんが、設備投資の決定要因としては将来に向けた期待成長率などとともに、足元での利益水準と資金アベイラビリティがあります。9月調査の日銀短観でも、資金繰り判断DIはまだ「楽である」が「苦しい」を上回っていて、金融機関の貸出態度判断DIも「緩い」超のプラスですが、他方で、全規模全産業の経常利益は昨年度2020年度の▲20.1%減の大きなマイナスから、今年度2021年度はリバウンドするとはいえ+15.0%増にとどまっています。人手不足への対策の一環として設備投資は基本的に底堅いと考えていますが、最後の着地点がどうなるか、昨年度のマイナスからのリバウンドの強さは不透明です。

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日銀短観を離れて、本日は、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、内閣府から消費者態度指数が、それぞれ公表されています。雇用統計は8月、消費者態度指数は9月の統計です。失業率は前月から横ばいの2.8%、有効求人倍率は前月から▲0.1ポイント低下して1.14倍と、雇用は改善が足踏みしている印象です。消費者態度指数は前月から▲0.8ポイント低下して36.7を記録しています。いつものグラフだけ、上の通り、お示ししておきたいと思います。上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数、消費者態度指数、となっており、いずれも季節調整済みの系列です。予想外の改善を示した日銀短観に比べて、雇用統計はやや改善が足踏みした印象です。

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