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2021年10月13日 (水)

成長率が下方修正された「IMF世界経済見通し」をどう見るか?

日本時間の昨夜、今週末の世銀・IMF総会に合わせて国際通貨基金(IMF)から「IMF世界経済見通し」IMF World Economic Outlook が公表されています。世界の経済成長率見通しは前回から少し下方修正され、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による健康上の懸念とともに供給面での混乱、さらに、インフレの懸念が基調として取り上げられています。当然のように、pdfの全文リポートもアップされています。国際機関のリポートに着目するのは、私のこのブログの特徴のひとつであり、簡単に見ておきたいと思います。

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まず、上のテーブルはIMFのサイトから成長率見通しの総括表 Latest World Economic Outlook Growth Projections を引用しています。見れば明らかな通り、世界経済の成長率は2021年に+5.9%、2022年にも+4.9%を記録すると見込まれています。この2021年成長率予測は直近の7月時点の予測から▲0.1%ポイント下方改定されています。要因としてあげられているのは、供給の混乱が一因で先進国の成長見通しが下方改定されるとともに、低所得途上国においてもデルタ変異株の影響などによりCOVID-19パンデミックの状況が悪化したためです。ただし、1次産品を輸出する新興市場国や発展途上国の一部において短期的な見通しが強まったことが、こういった下方改定要因を一部相殺しています。我が日本は今年2021年+2.4%成長と、7月から▲0.4%ポイント下方改定されています。先進国平均の▲0.4%ポイントの下方修正幅よりも大きいのは、東京オリンピック・パラリンピックを強行開催してCOVID-19パンデミックを拡大した影響と私は考えています。

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次に、上のグラフはリポートから Figure 1.15. Medium-Term Prospects: Output and Employment を引用しています。今回の見通しでは、とても興味深いことに、こういった中期の見通しを明らかにしています。2024年までにパンデミック以前の水準に復帰するかどうかについて、特に後半の 3. Output Losses Relative to Pre-Pandemic Trend, 2024 や 4. Employment Losses Relative to Pre-Pandemic Trend, 2024 でグラフが示されており、米国をはじめとする先進国や中国と比較して、新興国などの回復が遅れる点が明らかとされています。基本的には、ワクチン格差による景気回復テンポの違いであると考えるべきです。

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最後に、上のグラフはリポートから Figure 2.12. Headline Inflation with Adverse Sectoral and Commodity Price Shocks and Adaptive Expectations Shock を引用しています。日本でエコノミストをしていると、まったく実感がないのですが、世界的にはインフレの懸念が高まっています。すなわち、景気の回復に伴い、需要が堅調に推移する一方で、一部に供給制約が明らかとなり、国際商品市況における石油価格の急上昇などにより、インフレが急速に加速しているのは事実です。今回の見通しでは、インフレ率の上昇はさらに数か月間続き、2022年半ばにはCOVID-19パンデミック前の水準に戻る可能性が高いと予測していますが、インフレ加速のリスクはまだ払拭されていません。

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