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2021年10月20日 (水)

2か月連続で赤字を記録した貿易統計の先行きをどう見るか?

本日、財務省から9月の貿易統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列で見て、輸出額が前年同月比+13.0%増の6兆8411億円、輸入額も+38.6%増の7兆4639億円、差引き貿易収支は▲6227億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計について報じた記事を引用すると以下の通りです。

9月の貿易統計、自動車輸出4割減 全体では13%増
財務省が20日発表した9月の貿易統計速報によると、輸出額は前年同月比13.0%増え6兆8411億円だった。自動車は4割減り、その影響で米国向け輸出は7カ月ぶりのマイナスになった。自動車各社は東南アジアでの新型コロナウイルス感染の再拡大を背景にした部品調達難で大規模な減産に踏み切っていた。
輸出額の伸びは4カ月連続で縮小しており、9月は季節調整値でみると前月比で3.9%の減少だった。自動車輸出は前年同月比40.3%減の5863億円。台数ベースでも35.2%減った。減産は11月も続く見込みで、影響は長引きそうだ。
米国向けの輸出額は1兆1555億円で3.3%減った。自動車が47.0%減り、航空機の部分品や電池の輸出も減った。自動車はほぼ全地域向けで減少したが、中国向け輸出は半導体集積回路などが伸びて1兆4794億円と10.3%増えた。アジア向け全体でみても韓国向けの鉄鋼などが急増したため21.3%増の4兆942億円と底堅かった。欧州連合(EU)向けも12.1%増えた。
輸入額は38.6%増の7兆4639億円。原油の輸入が価格高を反映して90.6%増えた。原油は数量ベースでも15.1%増えた。石炭や医薬品も増え、輸入額は全体で見ると9月として過去最高を記録した。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は6227億円の赤字。赤字は2カ月連続となる。
財務省が同日発表した2021年度上半期(4~9月)の貿易統計は、輸出額が34.2%増の41兆4647億円だった。輸入額も41兆8545億円と30.3%増えた。いずれも新型コロナで落ち込んだ前年同期からの反動が大きかった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

photo

まず、季節調整していない原系列の統計で見て、貿易赤字は2か月連続なんですが、上のグラフに見られるように、季節調整済みの系列の貿易赤字は今年2021年5月から5か月連続となります。しかも、貿易赤字の棒グラフが下向きに拡大しているのが見て取れます。輸出入に分けて見ると、季節調整していない原系列のデータでも、季節調整済みの系列でも、輸入については増加のトレンドにあるように見える一方で、輸出については、特に、季節調整済みの系列のグラフで見て、やや減少し始めた可能性があるのが読み取れます。ただ、それほど大きな悲観材料とはならないと私は受け止めています。まず、輸入についてはワクチン輸入という特殊要因もあるとはいえ、石油価格の前年からの上昇が我が国輸入額の増加に寄与している印象です。なお、ワクチンを含む医薬品の輸入額は季節調整していない原系列の前年同月比で+84.1%増を記録しています。他方、輸出については輸出全体では前年同月比で+13.0%増ながら、我が国の主力輸出品である自動車が何と▲40.3%減、乗用車に限れば▲-46.6%減と、半減近くまで落ち込んでいます。輸出を全体としてみれば、主として欧米の景気回復に従って我が国の輸出は今後とも増加基調を続けるものと私は予想していますが、中国は別としても、特に東南アジアで新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のデルタ株による感染拡大が深刻となってきている点については注意が必要であり、アジア域内の需要サイドではなく供給サイドの要因で、半導体の供給制約から自動車生産が停滞しており、この先の輸出に一定の影響を及ぼす可能性が大きくなっています。例えば、一般機械+23.7%増や電気機械+16.9%増と比べて、我が国のリーディング・インダストリーのひとつであり、競争力も十分と考えられる自動車が▲40.3%減というのは、需要サイドにそれほど差がないとすれば、供給面の制約と考えるべきです。この先行きも、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大が再び生じるのか、その経済的な影響も無視できませんが、このあたりはエコノミストの守備範囲を超えているような気がします。

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