下降の続く景気動向指数の基調判断が「改善」続く不思議?
本日、内閣府から8月の景気動向指数公表されています。CI先行指数が前月から▲2.3ポイント下降して101.8を示し、CI一致指数も前月から▲2.9ポイント下降して91.5を記録しています。まず、統計のヘッドラインを手短に報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
8月の景気一致指数、2.9ポイント低下 基調判断は据え置き
内閣府が7日発表した8月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比2.9ポイント低下の91.5となった。QUICKがまとめた市場予想の中央値は2.9ポイント低下だった。数カ月後の景気を示す先行指数は2.3ポイント低下の101.8だった。
内閣府は、一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「改善」で据え置いた。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気変動の大きさやテンポを示す。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に同定しています。

ということで、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では、3月に基調判断を上方改定して、8月統計でも6か月連続で「改善」に据え置きとなっています。基準がどうなっているかというと、「3か月後方移動平均が3か月連続して上昇していて、当月の前月差の符号がプラス」となっています。後者の当月の前月差は先月の7月統計からマイナスに転化し、3か月後方移動平均も同じく2か月連続でマイナスですので、やや不思議な気もします。3か月後方移動平均がマイナスになっているのですから、「足踏み」ではないか、と私は考えます。ただし、あくまで「原則」であって、「足踏み」には加えて、「マイナス幅(1か月、2か月または3か月の累積)が1標準偏差分以上」という基準もありますので、マイナス幅がこの標準偏差まで達していないのであろうと考えています。かなり機械的に判断を下すシステムですので、まさか、総選挙が近いので「改善」の看板を下ろせない、ということはないのだろうと私は考えています。
8月統計について、CI一致指数を詳しく見ると、マイナスの寄与が大きい順に、耐久消費財出荷指数、商業販売額(小売業)(前年同月比)、鉱工業用生産財出荷指数、生産指数(鉱工業)などの系列で大きくなっています。逆に、プラス寄与はトレンド成分で仮り置きし 営業利益(全産業)しかありません。加えて、統計には反映されていないものの、生産や輸出については、半導体の供給制約とアジアにおける新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う部品不足が自動車工業の先行きに影を落としています。我が国の基幹産業であるだけに今後の動向が注目されます。
| 固定リンク
コメント