今年の年末ボーナス予想はほぼ前年から横ばいか?
先週半ばに、例年のシンクタンク4社から2021年年末ボーナスの予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下のテーブルの通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因で決まりますので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。なお、「公務員」区分について、みずほリサーチ&テクノロジーズのみ国家公務員+地方公務員であり、日本総研と三菱リサーチ&コンサルティングでは国家公務員ベースの予想、と明記してあります。
機関名 | 民間企業 (伸び率) | 国家公務員 (伸び率) | ヘッドライン |
日本総研 | 37.9万円 (▲0.4%) | 61.1万円 (▲6.5%) | 人流抑制策が非製造業の売上にマイナスに作用。輸出企業では、円安が収益押し上げに作用する例が散見されるものの、自動車産業をはじめ、半導体などの部品不足が生産回復の重石に。さらに資源価格の上昇が、幅広い産業の収益を圧迫。また、大企業では、新型コロナの感染拡大前に昨年度の支給額が妥結済であった影響で、今年度に新型コロナの影響が本格化。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | 38.4万円 (+0.8%) | 67.9万円 (▲6.3%) | 2021年冬はボーナス算定のベースとなる所定内給与がほぼ前年並みにとどまる一方で、支給月数が増加する結果、民間企業の一人当たりボーナス支給額(支給事業所における一人当たり平均)は前年比+0.8%の増加を予想する。昨冬の減少幅(同▲2.6%)に比べると小幅な伸びにとどまり、コロナ前の水準を取り戻せない見通しだ。 |
第一生命経済研 | 38.3 (+0.7%) | n.a. | 今冬のボーナスは増加が見込まれるものの、あくまで昨年の大幅な落ち込みからの反動の域を出ず、昨年の落ち込み分を取り戻すには至らない。コロナ前である19年よりも水準は低いままであり、ボーナスの回復は依然道半ばといえる。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | 38.0万円 (▲0.1%) | 60.8万円 (▲7.0%) | 2021年冬の民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)のボーナスは、前年比-0.1%とコロナ禍の影響が一巡し、減少に歯止めがかかろう。もっとも、業績の改善が先行している製造業では回復の動きがみられる一方、非製造業では底ばいが続こう。 |
ということで、ほぼほぼ前年からの横ばい圏内で推移するんではないか、と予想されているようです。すなわち、ヘッドラインで取った文言にあるように、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響が一巡して下げ止まったと見るか、底ばいが続いていると見るか、ややビミョーなところです。でも、COVID-19前の2019年と比較すれば大きく減少していることは事実であり、個人消費を喚起するためにも賃上げが必要との私の見方に変わりありません。特に、ここ何年か最低賃金が政策的な誘導もあってそれなりの伸び率を維持している中で、ボーナスがこういう形で伸び悩んでいると、特に、耐久消費財には影響が出そうな気がします。昨日取り上げた7~9月期のGDP統計速報1次QEで消費が大きなマイナスを記録したのは、自動車が半導体部品の供給ショックで生産が減少したためであると考えるべきですが、高度成長期の3種の神器、すなわち、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、そして、3C、すなわち、自動車、クーラー、カラーテレビといった耐久財が消費の伸びを牽引した姿を想像することが難しくなってきている気がします。私自身は技術的なイノベーションが停滞して、魅力的な製品が出なくなったとはまったく思いません。需要が、そして、その基礎をなす所得が伸び悩んでいるのが我が国の成長率鈍化の大きな要因です。その根底にはデフレがあるわけですが、デフレ脱却のためにも、政策的に高圧経済を実現するとともに、民間企業の賃上げを促進するようなパラダイムの転換が必要です。
最後に、下のグラフは日本総研のリポートから引用しています。
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