高い上昇率となった10月の企業物価指数(PPI)の先行きをどう見るか?
本日、日銀から10月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+8.0%まで上昇幅が拡大しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に引用すると以下の通りです。
10月の企業物価指数、前年比8.0%上昇 前月比1.2%上昇
日銀が11日発表した10月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は107.8と前年同月比で8.0%上昇、前月比で1.2%上昇だった。市場予想の中心は前年比7.0%上昇だった。
円ベースで輸出物価は前年比13.7%上昇、前月比で2.1%上昇した。輸入物価は前年比38.0%上昇、前月比で4.1%上昇した。
とてもコンパクトに取りまとめられています。続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期であり、2020年5月を直近の景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。

このところ、消費者物価指数(CPI)でみても、本日公表の企業物価指数(PPI)でみても、いずれも、順調に足元で物価が下げ止まり、ないし、上昇しつつあると私は評価しています。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスではPPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比で+7.0%の上昇と予想されていましたから、実績の+8.0%はやや上振れた印象です。国際商品市況における石油をはじめとする資源価格の上昇に起因するコストプッシュとはいえ、物価の上昇そのものはデフレ脱却には有益な可能性があります。もっとも、この動きが一巡すれば上昇率で計測した物価も元に戻ることは覚悟せねばなりません。ということで、国内物価について品目別で前年同月比を少し詳しく見ると、木材・木製品が57.0%、石油・石炭製品が+44.5%、非鉄金属が+31.2%、鉄鋼+21.8%、化学製品+14.1%が2ケタ上昇となっています。ただし、これら品目の上昇幅拡大の背景にある原油価格の前年同月比上昇率は、今年2021年5月の+238.8%をピークに、6月+173.2%、7月+102.8%、8月+68.6%、9月統計+63.3%と来て、足元の10月統計では+88.7%と上昇率が再拡大しています。私はこの方面に詳しくないものですから、日本総研のリポート「原油市場展望」とか、みずほ証券のリポート「マーケット・フォーカス」とかを見ているんですが、石油に対して暖房需要の高まる冬場を越えて、春からは需給のひっ迫感が和らぐにつれて、原油価格は徐々に水準を切り下げる見込みも示されています。従って、前年同月比上昇率で見ればピークアウトに向かっている動きに大きな変わりはないものと私は楽観しています。言葉を代えれば、国際商品市況における石油ほかの1次産品をはじめとして、中国などの新興国における景気回復に伴って、基礎的な資源価格の上昇が背景にあると考えるべきであり、つまり、必ずしも日本ではなく世界のほかの国の景気回復により、我が国の物価が上昇幅を拡大している、というわけなのかもしれません。
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