労働政策研究・研修機構「コロナ禍における仕事・生活とメンタルヘルス」やいかに?
やや旧聞に属する話題ながら、11月2日に労働政策研究・研修機構(JILPT)から「コロナ禍における仕事・生活とメンタルヘルス」と題するリポートが公表されています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が長期化する中で、仕事・生活状況とメンタルヘルスについて、2021年6月時点における感染不安や行動自粛にともなうストレス、加えて、所得減少等にともなう生活不安についての分析結果をリポートしています。
中でも私が注目したのが、メンタルヘルスの悪化要因を計量分析した上のテーブルです。もちろん、労働政策研究・研修機構(JILPT)のサイトから引用しています。メンタルヘルスはK6スコアで計測されています。K6スコアとは、うつ病・不安障害などの精神疾患をスクリーニングすることを目的としてKesslerらが開発した6項目の尺度であり、その中でも、メンタルヘルス悪化をK6スコア5点以上になる確率でみて、ロジット・モデルで推計しています。テーブルの限界効果の欄で見て取ることが出来ます。属性として、年齢が高かったりするとメンタルヘルスは悪化せず、有配偶の場合もメンタルヘルスには好影響との結果が示されていますが、経済的な要因としては、COVID-19の経済的影響によって自身の収入減少の場合にはK6スコアが5点以上になる確率が8%高くなり、本人ではなく世帯の生活水準が低下すると22%も確率が高くなります。経済的要因のほか、周囲にCOVID-19罹患者がいる場合、罹患者がいない場合と比べて、K6スコアが5点以上になる確率が7%高くなり、持病があると12%ほど確率がアップするようです。行動自粛もわずかな確率上昇ながら統計的に優位なメンタルヘルス悪化要因といえます。ただ、ワクチン接種がメンタルヘルスの悪化防止につながっていない結果が示されていますが、これは、本年2021年6月段階で、ワクチン接種の広がりが限定的だった可能性があり、現在では違う結果が得られるかもしれません。
いずれにせよ、COVID-19は典型的にフィジカルな病気であって、肺炎から死に至る可能性もあるわけであり、医学的な課題なのでしょうが、同時に、これだけの広範な影響が各方面に及ぶことになれば、経済的な影響も含めて、COVID-19に罹患しなくてもメンタルヘルスに悪影響を生じることもあり得るわけで、その詳細が分析されることは意義あることだという気はします。
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