2か月連続でプラスを記録した消費者物価指数(CPI)の動向をどう考えるか?
本日、総務省統計局から10月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+0.1%を記録しています。1年6か月ぶりのプラスです。ただし、エネルギー価格の高騰に伴うプラスですので、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は▲0.5%と下落しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
10月の全国消費者物価、2カ月連続上昇 エネルギーが大幅上昇
総務省が19日発表した10月の全国消費者物価指数(CPI、2020年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が99.9と前年同月比0.1%上昇した。上昇は2カ月連続。ガソリンや電気代などを含むエネルギーの上昇幅が11.3%と、08年9月(14.7%)以来、13年1カ月ぶりの上昇率となりCPIを押し上げた。QUICKがまとめた市場予想の中央値(0.1%上昇)と同じだった。
原油価格の高騰を背景に、エネルギー関連の上昇が同指数を押し上げた。「灯油」(25.9%上昇)や「ガソリン」(21.4%上昇)は、前月から伸び率が拡大した。「都市ガス代」は、19年8月以来2年2カ月ぶりにプラスに転じた。原油相場の影響がガソリンより遅行する「電気代」も7.7%上昇した。
政府による前年の観光需要喚起策「Go To トラベル」の反動で「宿泊料」は前年同月比59.1%上昇した。火災・地震保険料の上昇もプラスに寄与した。
一方、携帯電話の通信料は前年同月比53.6%下落し、下げ幅は過去最大となった。携帯大手各社による新料金プランが影響した。
生鮮食品を除く総合指数は前月比で0.1%低下した。生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は前年同月比0.7%下落した。マイナスは7カ月連続。生鮮食品を含む総合は0.1%上昇し、2カ月連続のプラスとなった。
いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも+0.1%の予想でしたので、実に、ジャストミートしています。基本的に、国際商品市況における石油価格の上昇に伴って、ガソリン・灯油などのエネルギー価格が前年同月比で+11.3%の上昇を見せて、ヘッドライン上昇率に対して+0.79%の寄与を示した一方で、通信料(携帯電話)が前年同月比▲53.6%の下落で、▲1.47%の寄与となっています。エネルギー価格の上昇と政策要因に近い携帯電話通信料の下落のバランスで、エネルギー価格の上昇と波及が上回ってのプラスという結果であると私は受け止めています。ただ、これも引用した記事にあるように、別の政策要因というか、何というか、昨年のGoToトラベルによる値引きの反動で、宿泊料が前年同月比+59.1%の上昇を見せ、寄与度も+0.35%あります。先行きの物価動向を考えると、国際商品市況における石油価格の上昇に加えて、国内外の景気回復とともに、物価は緩やかに上昇幅を拡大していくものと私は考えています。例えば、日銀から公表されている企業物価指数の国内物価も、10月統計では前年同月比上昇率で+8%に達しています。物価は上昇基調にあると考えるべきです。
さて、ここで、国際商品市況における石油や天然ガス価格の動向については、先月のCPIを取り上げた際などに論じていますので、今日のところはパスしておきます。
我が国のデフレの初期に「悪い物価下落」と「いい物価下落」という二分法が幅を利かせた時期があります。今回も石油価格上昇に伴うコストプッシュのインフレですので、同じような二分法の議論も聞かれます。しかし、私は我が国にとってはデフレ脱却の機会である可能性もあることから、政府や日銀の政策当局の適切な判断を期待しています。
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