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2021年12月30日 (木)

今年最後の読書感想文!!!

今年最後の読書感想文は以下の通り計7冊です。
このブログで取り上げた新刊書だけで、1~3月期に56冊、4~6月も同じく56冊、7~9月で69冊と夏休みの時期があって少しペースアップし、さらに、その後、本日の7冊を含めて10~12月で65冊、今年の総計で246冊になりました。200冊は軽く越えるとして、やや250冊には届かない、ということで、私としては標準的な読書だった気がします。今年のベスト経済書は、私自身がどこかの経済週刊誌に回答した野口旭『反緊縮の経済学』が抜群だと思うのですが、私の見方は決して多数意見ではないようで、例えば、日経新聞のサイトでは「エコノミストが選ぶ 経済図書ベスト10」と題して、ロバート J. シラー『ナラティブ経済学』、櫻川昌哉『バブルの経済理論』、ショシャナ・ズボフ『監視資本主義』などが並んでいます。純粋に経済書ではないかもしれませんが、マイケル・サンデル『実力も運のうち』などもトップテンに入っています。さすがに、私はほぼほぼこれらは読んでいるのですが、『監視資本主義』だけは積ん読になっています。来年早々にも読みたいと思っています。
以下、最後の読書感想文を手短に抑えておきます。

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まず、辻村雅子・辻村和佑『マクロ経済統計と構造分析』(慶應義塾大学出版会) です。著者は、立正大学と慶應義塾大学の研究者です。私が公務員試験の準備でマクロ経済学の勉強を始めた時のテキストは、SNA統計が冒頭に置かれていたように記憶していますが、本書も、SNA統計を軸にして幅広いマクロ経済学を対象に議論を展開しています。出版社からみても、明らかに学術書なので一般読者を想定しているわけではないのでしょうが、上回生の学部生や博士前期課程1回生あたりの大学院生のマクロ経済学のテキストとしても利用な可能なレベルであると私は受け止めています。

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次に、日経BP[編]『世界を変える100の技術』(日経BP) です。冒頭の第1章を別にすれば、7章構成で100項目の技術を取り上げており、、エネルギー、ヘルスケア、IT、ライフ&ワーク、マテリアル&フード、セキュリティ、トランスポーテーション、となっています。私のようなエコノミストには理解の難しいテクノロジーが少なくなかったのですが、印象に残ったのは、35番ヘルスケアの「ころんだときだけ柔らかくなる床」、54番ライフ&ワークの「民間デジタル通貨」、57番これもライフ&ワークの「幸福度計測」といったあたりでした。

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次に、玉木俊明『金融化の世界史』(ちくま新書) です。著者は、京都産業大学の研究者で、私はこの著者の歴史研究成果の新書は大好きでいっぱい読んでいます。ただ、本書は、少し金融化の視点が違っている気がします。特に、タックスヘブンを強引に割り込ませている点が少し残念です。税制と金融に関する本書の議論は、ほとんど説得力ないと感じざるを得ませんでした。この両者を切り分けて考えた方がいいような気がします。

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次に、栗田路子ほか『夫婦別姓』(ちくま新書) です。著者は、海外在住で日本にルーツのあるジャーナリストが寄稿しています。各国事情としては、英国、フランス、ドイツ、ベルギー、米国とキリスト教国が並んだ後に、東アジアの中国と韓国が配されています。イスラム圏はダメだったんだろうか、という気がしてなりません。ただ、本書でも指摘されているように、法律で夫婦同姓を矯正する数少ない日本に住む身として、私は熱烈に選択的夫婦別姓を支持していますが、かならずしも、海外の例を参考に引く必要もなさそうな気もします。日本は日本で独自の選択的夫婦別姓の制度を構築すればいいだけ、と考えるのは私だけでしょうか?

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次に、高木和子『源氏物語を読む』(岩波新書) です。著者は、東大の研究者であり、平安文学を専門としています。『源氏物語』は、私も円地文子現代訳で飛読んだことがありますが、全体像をこのようにコンパクトに解説してもらえれば、とても参考になります。ただし、解説書で止まっているのではなく、現代訳のいくつか出ているところですし、『源氏物語』そのものも読むべきであろうと私は受け止めています。

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次に、立石博高『スペイン史10講』(岩波新書) です。著者は、東京外国語大学の学長も務めた研究者であり、スペイン近代史の専門家です。私は、在チリ日本大使館勤務の経験がありますので、それなりにスペイン語には親しみを持っていますが、まだ、スペインを訪れたことはありません。ファシズム期の人民戦線、フランコ独裁から民主化、そして、左翼政権での改革の推進と、日本並みにドラスティックな戦後史を持つスペインをコンパクトに解説しています。

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最後に、倉山満『ウルトラマンの伝言』(PHP新書) です。著者は、皇室史や憲政史の研究者として大学で憲法を教えていた経験もあるそうです。そして、本書は、『ウェストファリア体制』と『ウッドロー・ウィルソン』に続く3部作の完結編だそうですが、私は前2作を読んでいませんので、よく判りません。そういった周辺事情はさておき、私も決して嫌いではないので、趣味の範囲で、阪神タイガース、ポケモン、などとともにウルトラマンは興味を持って情報に接しているのですが、ここまで的を得て幅広いウルトラマンの解説書は初めてであり、一級品といえます。倅どもは、当然ながら、かなりの程度に私と趣味を同じくしているわけで、2人に共通してポケモン、そして、上の倅は阪神タイガース、下の倅はウルトラマンなのですが、下の倅にもオススメしたいと考えています。

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引越しました!!!

年末の忙しい時期ながら、引越しました。かなり、パタパタと決めましたので、固定電話もネットの接続も来年の正月明けになってしまいます。しばらく、ブログの更新もお休みです。今日は、荷物の整理も一段落しましたので、ネット接続環境のある場所に来て、ブログの更新だけ済ませておきます。

引越ししたのは、60歳の還暦を大きく過ぎて、50代までのように1時間をかけた通勤が体力的に難しくなったのが最大の理由です。実は、先日の夕方、大学から最寄りの駅まで30分あまりかけて歩いていたところ、同僚教員に追いつかれてしまいました。年齢的には60歳過ぎの私よりも数歳年下の50代半ばながら、体格的にも体力的にも私でもまだ遜色ないと高をくくっていただけに、それなりに思うところがありました。ここまで体力が衰えるとは思ってもみませんでした。
今の大学は65歳が定年で、その後、民間企業でいえば定年後の嘱託社員のような形の特任教員として70歳まで勤務する道があります。ややめずらしくも、人生で2度定年を迎えることになるわけです。それはともかく、私自身は、京都に住み続けて65歳定年で隠居生活に入ることを夢見ていたのですが、カミさんが許してくれません。大学=職場に近い住まいに引越してでも、70歳まで働き続けるよう私に要求するわけです。まあ、私も20歳前後の若い大学生に囲まれた大学での教員生活が、それなりに楽しくないわけでもなく、もちろん、イヤなことも決して少なくありませんが、カミさんとしても引越をしてまでサポートをしてくれるわけで、結局、「70歳までしっかり稼げ」という圧力に屈してしまったわけです。

ということで、70歳まで残すところ数年あります。私は関東とは箱根の東、関西は関ケ原の西、と、勝手に考えていますが、その意味では今の住まいも立派な関西圏内です。引き続き、大学での教員生活をしっかりと楽しみたいと思います。

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2021年12月21日 (火)

すっかり忘れていた「OECD経済見通し」やいかに?

師走の名のごとく、教師として走り回っている12月も末近くになって、何と、3週間も前の12月1日に、経済協力開発機構(OECD)から「経済見通し」OECD Economic Outlook が出ていたことを今ごろになってようやく気づきました。誠にお恥ずかしい限りです。
プレス向けのプレゼン資料から2枚だけスライドを引用して、軽く済ませておきます。プレゼン資料2枚めの Real GDP growth projections と21枚めの Inflation projections です。私の方で結合処理しています。今年2021年から来年2022年、さらに、さ来年2023年を並べてみて、どちらをどう見ても、我が日本は先進国であるOECD加盟国の中でも、あるいは、G20の中で見ても、成長率が低くてインフレ率も低い、ということが理解できます。他の国以上に高圧経済が必要であることが理解できます。

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実は、諸般の事情により、明日からしばらく更新を休止し、出来れば、年内のうちに再開したいと予定しています。

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2021年12月20日 (月)

阪神タイガースの2022年チームスローガンは「イチにカケル!」

昨日、阪神タイガースの2022年チームスローガンが明らかにされています。
イチにカケル!」だそうです。公式サイトからその意味を引用すると以下の通りです。

2022年チームスローガンについて
2022年チームスローガン「イチにカケル!」
1を意識し、1にこだわる、その思いを1に「カケル」という言葉にしました。
また赤い数字の1は、イノチをかけて勝利を目指す執念を、また「カケル!」の「ル!」には「心」という文字も表しています。
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私は感性がニブイのか、判ったような、判らないような...

何はさておき、来シーズンは、
がんばれタイガース!

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2021年12月19日 (日)

年末年始休みの読書案内

昨年から大学の教員に再就職して、今年も経済に関する新書の年末年始の読書案内を学生諸君に差し上げています。すべて出版社のサイトからの引用ですが、今年は全部で10冊、以下の通りです。

年末年始休みの読書案内
  1. 吉川洋 『人口と日本経済: 長寿、イノベーション、経済成長』 (中公新書)
    (出版社のサイトから)
    人口減少が進み、働き手が減っていく日本。財政赤字は拡大の一途をたどり、地方は「消滅」の危機にある。もはや衰退は不可避ではないか――。そんな思い込みに対し、長く人口問題と格闘してきた経済学は「否」と答える。経済成長の鍵を握るのはイノベーションであり、日本が世界有数の長寿国であることこそチャンスなのだ。日本に蔓延する「人口減少ペシミズム(悲観論)」を排し、日本経済の本当の課題に迫る。
  2. 福田慎一 『21世紀の長期停滞論: 日本の「実感なき景気回復」を探る』 (平凡社新書)
    (出版社のサイトから)
    21世紀型の長期停滞は、本来の実力より低いGDP水準に加え、「低インフレ」「低金利」状態が長期にわたって続くという特徴を持つ。
    日本では、アベノミクス以降、雇用関連など力強い経済指標は存在するが、賃金の上昇は限定的で、物価上昇の足取りも依然として重い。さらに、少子高齢化や財政赤字の拡大など懸念が増す一方である。
    日々高まる経済の現状への閉塞感から脱却するためにも、その原因を丁寧に検証し、根本的な解決策を探る。
  3. 斎藤幸平 『人新世の「資本論」』 (集英社新書)
    (出版社のサイトから)
    人類の経済活動が地球を破壊する「人新世」=環境危機の時代。
    気候変動を放置すれば、この社会は野蛮状態に陥るだろう。
    それを阻止するには資本主義の際限なき利潤追求を止めなければならないが、資本主義を捨てた文明に繁栄などありうるのか。
    いや、危機の解決策はある。
    ヒントは、著者が発掘した晩期マルクスの思想の中に眠っていた。
    世界的に注目を浴びる俊英が、豊かな未来社会への道筋を具体的に描きだす!
  4. 宮崎勇ほか 『日本経済図説 第5版』 (岩波新書)
    (出版社のサイトから)
    経済発展の軌跡、国土と人口、産業構造、労働、金融、財政、国際収支、国民生活まで幅広く日本経済の実態を点検できる定番図説の改訂版。日銀の金融緩和策とアベノミクス、米中貿易戦争、パンデミック下で迫られるデジタルトランスフォーメーション、脱炭素化などの構造変革など、2013年の第4版以降の激変を加味した。
  5. 橘木俊詔 『日本の構造』 (講談社現代新書)
    (出版社のサイトから)
    ・男女間、役職者と一般社員、正規と非正規、大卒と高卒……、賃金格差は?
    ・なぜ日本の開廃業率は他国の3分の1しかないのか?
    ・高年収家庭は低年収家庭の3倍、学校外教育費に支出
    ・60代後半の就業率、男性は50%超、女性は30%超
    ・社会保障給付、高齢者・遺族への給付が51.2%
    ・なぜ日本では必要な人の10~20%しか生活保護を申請しないのか?
    ・資産額5億円以上は8.7万世帯
    ・東京の地方税収入は長崎県の2.3倍
    ・学力調査トップは秋田県と北陸3県……
    数字からいまの日本が浮かび上がる!
  6. 竹下隆一郎 『SDGsがひらくビジネス新時代』 (ちくま新書)
    (出版社のサイトから)
    SDGsの時代が始まっている。「働きがいも経済成長も」「ジェンダー平等を実現しよう」など一七の目標からなるSDGsに取り組む企業が増えてきた。消費者たちもSNSを通じて自らの価値観を積極的に発信し、企業はその声を無視できなくなっている。そして企業側も、SNSを通じて自らの社会的価値を発信するようになってきた。こうした流れは今、巨大なうねりとなって世界を変えようとしている。経営トップから「SDGs市民」まで幅広く取材し、現代社会が、そしてビジネスがどこへ向かおうとしているのか、鋭く考察。学生からビジネスパーソンまで必読の書!
  7. 永濱利廣 『経済危機はいつまで続くか』 (平凡社新書)
    (出版社のサイトから)
    新型コロナウイルスによるパンデミックによって、世界経済はリーマン・ショックを超える危機に見舞われている。大国アメリカが矢継ぎ早に大規模な経済対策を打ち出したことで、各国の経済は落ち着きを取り戻しつつある。だが日本の場合は、消費増税に加え、オリンピックの延期で内需はより悪化しているのだ。コロナ禍によって落ち込んだ景気は、どのタイミングで回復するのか。
    過去のデータや事例を駆使しながら、世界と日本経済のその後を予測する。
  8. 坂本貴志 『統計で考える働き方の未来: 高齢者が働き続ける国へ』 (ちくま新書)
    (出版社のサイトから)
    年金はもらえるのか?貯金はもつのか? 「悠々自適な老後」はあるのか? それとも、生活していくために死ぬまで働かなければいけないのか? 現在、将来の生活や仕事に対し、多くの人が不安を抱いている。しかし、本当に未来をそんなに不安に思う必要などあるのだろうか?本書は、労働の実態、高齢化や格差など日本社会の現状、賃金や社会保障制度の変遷等を統計データから分析することで、これからの日本人の働き方を考える。働き方の未来像を知るのに必読の一冊。
  9. 岩田規久男 『「日本型格差社会」からの脱出』 (光文社新書)
    (出版社のサイトから)
    1990年代以降、日本では格差が広がり続けている。例えば、非正規社員の増加は賃金格差を招き、ひいてはその子供世代の格差も助長している。さらに、世代ごとに受給額が下がる年金制度は、最大6000万円超の世代間格差のみならず、相続する子供・孫世代の世代内格差の原因に。所得再分配政策は、高齢者への社会保障に偏っており、現役世代の格差縮小にはほとんど寄与していない。
    そして、こうした格差はすべて、戦後、世界で日本しか経験していない長期デフレが根本にあり、そういった意味で他国とは異なる「日本型格差」といえる特徴的な格差である。では、この「日本型格差」を縮小し、成長を取り戻すにはどうすればよいのか。本書では、日銀副総裁を務めた著者が具体的な政策とともに提言。より生きやすい日本の未来を模索する。
  10. 森永卓郎 『グローバル資本主義の終わりとガンディーの経済学』 (集英社インターナショナル新書)
    (出版社のサイトから)
    行きつく先は破壊的な事態が生じるハードランディング!
    これから我々が標榜するのは、人と地球を救う経済学だ。 大型で猛烈な台風が次々と日本を襲う最大の理由は地球温暖化で海面温度が上昇しているから。温暖化は待ったなしだ。
    国連サミットのSDGs(持続可能な開発目標)の目標は格差をなくし地球を守ることだが、世界はこの理念とは真逆の方向に進んでいる。
    そこに新型コロナウイルスのパンデミックが追い打ちをかけ、グローバル資本主義の限界が露呈した。
    これから世界を救うのはガンディーの経済学だ。それは環境問題に加え、貧困や格差もなくす「隣人を助ける」原理である。

何ら、ご参考まで。

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2021年12月18日 (土)

今週の読書は新書なしの経済書・専門書と重厚な小説だけで計4冊!!!

今週の読書は、久しぶりに、新書はなく、経済書や教養書とともに、重厚な小説まで計4冊です。このブログで取り上げた新刊書だけで、1~3月期に56冊、4~6月も同じく56冊、7~9月で69冊と夏休みの時期があって少しペースアップし、さらに、その後、本日の4冊を含めて今週までに10~12月で48冊、今年の総計で229冊になりました。

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まず、ペリー・メーリング『21世紀のロンバード街』(東洋経済) です。著者は、米国ボストン大学の経済学者です。英語の原題は The New Lombard Street であり、2011年と10年前の出版です。もちろん、英国人のバジョットの古典的な名著である『ロンバード街』になぞらえたタイトルです。2011年の出版ですから、2007-08年のサブプライム・バブルの崩壊の後の金融危機の解明を試みています。ただ、その解明については成功しているとはいい難く、そのために邦訳が大きく遅れたともいえます。まあ、出版社の営業的な見方かもしれませんが、このコロナ禍の中で日本語版への序言を含めて出版される運びになったんではないか、と私はゲスの勘ぐりをしていたりします。やや言葉の遊びではないかと見えるレッテルの貼り替えで経済の本質を説明しようとし過ぎているきらいがあります。経済学ビューとファイナンシャル・ビューを対立させて中に著者のマネー・ビューを紛れ込ませたり、金融危機の際の銀行への流動性供給に関しても、バジョット的な適格担保に対する懲罰的な高金利による「最後の貸し手」機能に対置させる最後のディーラーなんて、どの程度の経済学的な意味があるのかは不明です。確かに、2008年からの金融危機の際には、インターバンクの取引が機能不全に陥ったために、民間銀行が中央銀行に開設している準備預金口座残高に付利して中央銀行の準備預金口座に流動性を確保した上で、それらを民間銀行に還流させるという手法が取られたことは確かですが、その後、欧州のECBや日銀では準備預金の一部なりともマイナス金利を適用する試みが続けられていますし、果たして、中央銀行が本書でいうところの「最後のディーラー」機能を発揮しているとはいい難い気もします。マイナス金利の登場前、というか、本格的なマイナス金利の分析が行われる前に本書は出版されていますので、スコープには含まれていません。10年前の出版物にそこまで期待するのは酷というものでしょうから、ある程度の制約があるものと理解した上で読み始めるのが吉かもしれません。また、米国人エコノミストの著作ですから、英国の実際のロンバード街、というか、イングランド銀行や米国の連邦準備制度理事会(FED)の活動の本質、あるいは、歴史的な考察にまで幅広く取り上げているわけではありません。ちょっと、物足りないかね、という気はします。強くします。

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次に、宮路秀作『経済は統計から学べ!』(ダイヤモンド社) です。著者は、代々木ゼミナール地理講師であり、2017年には『経済は地理から学べ!』を出版しています。この前著は私は未読であり、なかなかに興味深いタイトルなのですが、本書については、経済学が統計から学べるのはあまりにも当然ですから、まあ、そんなもんかという気がします。別の観点からロスリング『FACTFULNESS』の影響を受けているのは明らかです。ということで、経済を6つの視点から読み解こうと試みています。すなわち、人工、資源、貿易、工業、農林水産業、環境です。特に、貿易については日本は世界でも有数世界第4位の貿易高を有している、というのは、この数字を意外と思う人はかなり経済に関してシロートだという気がします。私は経済学部生向けの今週の授業でも取り上げましたし、この授業の最初の方の回で「日本は経済大国である」と明らかにしています。まあ、ついでに「軍事大国でもある」と付け加えたかったのですが、授業のスコープ外でしたのでヤメにしました。本書に視点を戻すと、そもそも本書は大学受験を控えた高校生向け、ないし、経済学の初学者向けでしょうから、それなりの読みどころはありそうで、私のように、逆に、大学で経済学を教えているエコノミストやビジネスパーソンには物足りないのは、ある意味で、当然かもしれません。ただ、高校の社会科でも学習するように、ペティ-クラークの法則などからも明らかで、非製造業が取り上げられていないのはやや不安に感じます。でも、さはさりながら、こういった良書を読んで経済学を志す高校生が増えてくれることを願っています。強く願っています。

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次に、ドミニク・フリスビー『税金の世界史』(河出書房新社) です。著者は、英国人の金融ライターであり、コメディアンでもあると紹介されています。やや、私には理解不能だったりします。日本ではこういう人は少ないような気がしますが、でも、コメディアンで家電に強い、といった人は少なからずいたりしますので、家電が金融に置き換わっているだけかもしれません。英語の原題は Daylight Robbery となっており、2019年の出版です。ということで、英語の原題は本書冒頭にあるように、著者の本国である英国で中世に窓に対して課税したため、窓の少ない家が建築されて日光の取り込みが出来なく不健康になった故事に加え、税金が白昼堂々の泥棒行為に近いという比喩の意味も込めて付けられているようです。ただ、さすがに、中世の窓税などは経済学的な観点ではなくエピソード的な役割を果たしているだけで、経済学的な意味からはさすがに近代以降の税金、特に、金本位制下の税金と現在のような不換紙幣制における税金では、かなり意味が違いますから、より現在に近い税制に私は興味を持ちました。もちろん、20世紀に入ってからも、本書にあるように、ラッファー・カーブのように、ブードゥー経済学に近い扱いを受けている税制理論もあったりします。ですから、税制に関する経済学的な理論解明、というよりは、いろんなエピソードを楽しみながら税金について考える、あるいは、リバタリアン的に政府や税制を揶揄して溜飲を下げる、といった利用が想定されているのかもしれません。例えば、ということでは、米国の南北戦争はホントは奴隷制を争点にした南北の対立から生じたわけではなく、北部諸州の関税確保のための武力行使だった、とかです。ほかに、リバタリアン的な観点から管理者のいないビット・コインが解説されていたり、デジタル・プラットフォームを運営するシェアリング・エコノミー業者、例えば、UberやAirbnbとかの企業活動と課税の問題などもいい線いっている気がします。税金については永遠に話題性が失われることはありませんし、読んでおいて損はないような気もします。

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最後に、小池真理子『神代憐れみたまえ』(新潮社) です。著者は、ミステリやホラーの分野を得意とする小説家ですが、本書はそういったミステリやホラーの要素はそれほど強くはありません。主人公は1951年生まれの百々子であり、大手製菓企業のご令嬢として大学までピアノを勉強します。しかし、小学校6年生のときに大手製菓会社の跡取りの両親を惨殺され、お手伝いさんの家でその一家に囲まれて生活して成人します。ほぼほぼ、ミステリの要素はありませんが、この主人公の両親の殺人事件の犯人、そしてその犯人の殺人の動機は、最後に名探偵が一気にどんでん返しに明らかにするのではなく、私の好きなパターンで、小説の進行とともに徐々に明らかにされて行きます。そして、私とほぼ同年代の主人公が60歳過ぎになった段階で、かなり特殊な終わり方をします。主人公が若年性痴呆症と診断されるのです。最後の終わり方が壮絶であるのは好みによりますが、主人公の人生そのものがかなり波乱万丈であっただけに、私の好みとしては、もっと淡々と終結を迎える方がよかった気もします。もちろん、こういった壮絶な終わり方を好む読者もいっぱいいそうな点は私のような不調法者にも理解できます。先ほど、極めて単純に「波乱万丈」と、私らしく貧弱な表現をしてしまいましたが、人生の進行に伴って生じるプラスのエピソードとマイナスのイベント、私のような単純で平凡な人生ではなく、いかにも小説になりそうな「塞翁が馬」的な人生、12歳の小学校高学年のころから、私のような平凡なサラリーマンであれば定年を超えた60歳過ぎまで、昭和に生まれて平成の終わりころまでの50年間を追った圧巻の一代記です。

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2021年12月17日 (金)

スティグリッツ教授の提言によりドイツはWTOの知的財産権に関する規定の一時免除に合意するか?

一昨日、12月15日付けの英国高級紙 The Guardian に米国のスティグリッツ教授がドイツの新しいショルツ総理に対して、"If Olaf Scholz is serious about progress, he must back a patent waiver for Covid vaccines" と題して新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のワクチン製造に関して、WTOの知的財産権に関する規定の一時免除を訴える記事を投稿しています。The Guardian のサイトから私が重要と考える3パラだけを引用すると以下の通りです。

If Olaf Scholz is serious about progress, he must back a patent waiver for Covid vaccines
As the country's new chancellor, he must take a second step in the interest of global fairness. So far, Germany has not been able to bring itself to do its part to ensure the availability of Covid-19 vaccines for everyone in the world. Doing so is imperative to global public health - but it is also in Germany's self-interest.
What is needed is for Germany to agree to a temporary exemption from the World Trade Organization's intellectual property rules. These currently stifle the worldwide production of Covid-19 vaccines and antiviral treatments. If this barrier were removed, more vaccine doses could be produced in, and for, developing countries. That is exactly what the world needs, as the emergence of the Omicron variant is proving, all over again.
So far the German government has been the main drag on agreeing to the patent waiver within the WTO. While major EU countries such as France, Italy and Spain support the exemption, the German government is actively lobbying other EU member states to reject granting the waiver. It is encouraging that Karl Lauterbach, an SPD politician and epidemiologist who has clearly spoken out in favour of the WTO waiver, has been appointed Germany's health minister. But now Scholz needs to act.

スティグリッツ教授は、世界でのワクチン接種の現場につき、"while about 56% of the world's 7.9 billion people have received at least one dose of Covid-19 vaccine, the figure is 7.2% in low-income countries" と数字を上げつつ、特に低い("particularly low")のはアフリカである、と指摘しています。私はスティグリッツ教授と違って、ショルツ首相に提言するような立場にはありませんが、思いはまったく同じです。途上国におけるCOVID-19の感染拡大抑制のため、自国の特定企業の利益だけに着目するのではなく、先進国はなすべきことに取り組まねばなりません。

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2021年12月16日 (木)

資源高で赤字の続く貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から11月の貿易統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列で見て、輸出額が前年同月比+20.5%増の7兆3670億円、輸入額も+43.8%増の8兆3218億円、差引き貿易収支は▲9548億円となり、4か月連続で貿易赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインについて報じた記事を手短に引用すると以下の通りです。

11月の貿易収支、9548億円の赤字 資源高で輸入額は過去最大
財務省が16日発表した11月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9548億円の赤字だった。赤字額は2020年1月(1兆3154億円)以来1年10カ月ぶりの大きさ。貿易赤字は4カ月連続となる。QUICKがまとめた民間予測の中央値は6750億円の赤字だった。原油など資源価格の上昇の影響で、輸入額が遡ることができる1979年1月以来過去最大となり、貿易赤字の拡大につながった。
輸入額は前年同月比43.8%増の8兆3218億円と10カ月連続で増加した。価格上昇で原粗油が同2.3倍、液化天然ガス(LNG)が同2.4倍、石炭は同3倍と大幅に上昇した。
輸出額は前年同月比20.5%増の7兆3671億円で、11月としては過去最大だった。韓国向けなどの鉄鋼が同87.8%増となったほか、中国向けが伸長した半導体等製造装置は同44.7%増だった。
地域別では対アジアが輸出入金額とも過去最大となった。輸出は鉄鋼や半導体等製造装置が伸び、輸入は半導体等電子部品やLNGが増えた。対中国では、輸出は半導体等製造装置や半導体等電子部品の伸びで前年同月比16.0%増、輸入は衣類や有機化合物などが増えて同17.2%増となった。輸入額は過去最大だった。
品目別では世界的な半導体や部品不足により減少が続いていた自動車の輸出金額が前年同月比4.1%増と3カ月ぶりに増加に転じた。数量はまだ減少している。EU向けやアジア向けが伸びた一方、米国や中国向けでは減少が続いた。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、貿易赤字が▲7000億円弱でしたので、実績の▲9548億円の赤字は、予想レンジの下限である▲9111億円を超えて、かなり大きな貿易赤字だという印象です。季節調整していない原系列の統計で見て、貿易赤字は4か月連続なんですが、上のグラフに見られるように、季節調整済みの系列の貿易赤字は今年2021年5月から7か月連続となります。しかも、貿易赤字の棒グラフが下向きに拡大しているのが見て取れます。輸出入に分けて見ると、季節調整していない原系列のデータでも、季節調整済みの系列でも、輸入については増加のトレンドにあるように見える一方で、輸出については、特に、季節調整済みの系列のグラフで見て、停滞し始めているのが読み取れます。ただ、それほど大きな悲観材料とはならないと私は受け止めています。まず、輸入についてはワクチン輸入という特殊要因もあるとはいえ、最近時点での国際商品市況における石油をはじめとする資源価格の上昇が我が国輸入額の押上げに寄与していることは明らかです。例えば、原油及び粗油の11月の輸入額は7205億円と前年同月比で+129.2%の大きな増加を記録していますが、数量ベースでは+8.6%増にとどまっています。価格が大きく上昇していますから、それほど価格弾力性が大きくないとはいえ、需要曲線に沿って輸入量が伸び悩んでいるわけです。実に、経済学の知見通りの結果です。なお、ついでながら、私は専門外ながら、ワクチンを含む医薬品の輸入額は3621億円となり、季節調整していない原系列の前年同月比で+47.8%増と、引き続き大きな伸び率を示しています。
他方、輸出については輸出全体では前年同月比で+20.5%増ながら、我が国の主力輸出品である自動車が+4.1%増にとどまり、乗用車に限れば+0.8%増と、引き続き、半導体などの部品供給の制約から停滞を示しています。輸出を全体としてみれば、主として欧米の景気回復に従って我が国の輸出は今後とも増加基調を続けるものと私は予想していますが、中国は別としても、特に東南アジアで新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大が深刻となってきている点については注意が必要であり、アジア域内の需要サイドではなく供給サイドの要因で、半導体の供給制約から自動車生産が停滞しており、この先も輸出に一定の影響を及ぼす可能性が大きくなっています。例えば、一般機械の+22.6%増や電気機械の14.2%増と比べて、我が国のリーディング・インダストリーのひとつであり、競争力も十分と考えられる自動車が+0.8%増にとどまっているのは、これら製品の需要サイドにそれほど差がないとすれば、供給面の制約と考えるべきです。

ですから、貿易、特に、輸出の先行きについては、世界経済の回復とともに、自動車生産のペントアップも含めて、私は緩やかな増加を見込んでいますが、この見通しも、オミクロン変異株をはじめとする新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大が再び生じるのか、また、需給両面での経済的な影響も含めて、それほどの見識を有しているわけではありません。このあたりはエコノミストの守備範囲を超えている、とやや諦め気味です。

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2021年12月15日 (水)

帝国データバンク調査による今冬のボーナス支給やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週12月7日付けで帝国データバンクから2021年冬のボーナスに関する調査結果リポートが明らかにされています。私のこのブログでは11月16日付けでいくつかのシンクタンクのリポートから年末賞与の予想を取りまとめていて、前年からほぼ横ばいとの結果となっていました。帝国データバンクの調査は2020年に続いて2回目なので、それほどの内容はありませんが、簡単に取り上げておきたいと思います。まず、調査結果の要約を2点帝国データバンクのリポートから引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 2021 年の冬季賞与、企業の18.5%で平均支給額が前年より「増加」
  2. 新型コロナショック下においても企業の5.1%で賞与が2 年連続増加

年末賞与の昨年と比べた増減については、「賞与があり、増加する(した)」企業は18.5%、「賞与があり、変わらない」企業は42.4%、「賞与はあるが、減少する(した)」企業は19.4%となっています。特に、増加企業は精密機械や医療器具、鉄鋼・非鉄・鉱業など製造業で高く、2020年と比べると賞与が増加する企業の割合は10%ポイント以上上昇ています。一方で、「賞与はない」企業が12.0%で、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響の大きかった「旅館・ホテル」は5割超となっています。その産業別に、冬季賞与が増加する企業の割合をプロットしたのグラフを帝国データバンクのリポートから引用すると下の通りです。世界経済の回復を背景にして輸出をテコに回復が進む製造業の姿が浮き彫りになっています。

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最後に、注意が必要なのは、この調査からは年末ボーナスの総額は不明です。1人当たり支給額に支給対象者数を乗じた積が支給総額であり、この支給総額が消費の基となる所得なわけです。もっとも、恒常所得ではないので、消費に対してそれほど大きなインパクトは持たない、とする考え方も成り立ちます。もちろん、いずれにせよ、所得が大きい方が消費にはプラスのインパクトを及ぼすことは当然ですので、政府で検討中の賃上げ税制とともに賃金水準の動向は気にかかるところです。

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2021年12月14日 (火)

World Inequality Report 2022 に見る新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的影響やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週12月7日に World Inequality Database (WID) から World Inequality Report 2022 が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。なお、この研究所は『21世紀の資本』で著名なピケティ教授が同僚研究者のサエズ教授らととも共同所長を務めています。この研究所のサイトから Key Messages を5点引用すると以下の通りです。

Key Messages
  • MENA (Middle East and North Africa) is the most unequal region in the world, Europe has the lowest inequality levels.
  • Nations have become richer, but governments have become poor, when we take a look at the gap between the net wealth of governments and net wealth of the private and public sectors.
  • Wealth inequalities have increased at the very top of the distribution. The rise in private wealth has also been unequal within countries and at the world level. Global multimillionaires have captured a disproportionate share of global wealth growth over the past several decades: the top 1% took 38% of all additional wealth accumulated since the mid-1990s, whereas the bottom 50% captured just 2% of it.
  • Gender inequalities remain considerable at the global level, and progress within countries is too slow.
  • Ecological inequality: our data shows that these inequalities are not just a rich vs. poor country issue, but rather a high emitters vs low emitters issue within all countries.

200ページを遥かに超える膨大なリポートであり、しかも、英仏語で書かれていて、とてもすべてに目を通せるわけではない上に、上の Key Messages でも明らかなように、経済学的な所得や資産の不平等だけではなく、男女間不平等や環境格差なども含まれています。とても、私の手には負えませんので、リポートからひとつだけグラフを引用して簡単に取り上げておきたいと思います。P.16にある The share of wealth owned by the global top 0.01% and billionaires, 1995-2021 です。


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ここで注目すべきは、最近の2020年以降の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響です。約25年間の世界の超富裕層0.01%と10億ドルクラスの個人資産を有するビリオネアが世界全体の富に占める割合をプロットしているわけですが、2008-09年のリーマン証券破綻後の金融危機でややシェアを下げた後も、基本的に上昇トレンドにあったとはいえ、最近のCOVID-19パンデミックでさらに超富裕層のシェアの上昇が加速しているように見えます。私が従来から主張しているように、このコロナ危機のもっとも重要な経済的帰結のひとつは格差や不平等の拡大であることを実証していると私は受け止めています。

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2021年12月13日 (月)

12月調査の日銀短観では大企業非製造業の景況感が大きく改善!!!

本日、日銀から12月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査から横ばいの+18を示した一方で、大企業製造業では9月調査の+2から12月調査では+9に大きく改善しています。また、本年度2021年度の設備投資計画は9月調査から変化なく、全規模全産業で前年度比+7.9%の増加が見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業景況感、製造業横ばい 12月日銀短観
日銀が13日発表した12月調査の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス18と、9月調査比で横ばいだった。新型コロナウイルスの感染者が減ったが、世界的な物流の混乱が続く中、エネルギー価格の上昇も重なり、コストが上昇した。大企業非製造業の業況判断DIはプラス9と、6期連続で改善した。緊急事態宣言が解除され、飲食などで客足が回復した。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値だ。12月調査の回答期間は11月10日~12月10日。コロナの変異型「オミクロン型」の感染の確認以前に届いた回答が多い。
大企業製造業の業況判断DI(プラス18)はQUICKが集計した市場予想の中央値とも同じ水準だった。コロナ禍の2020年6月にマイナス34まで大きく低下したあと、21年9月まで5四半期連続で改善を続けてきた。
12月調査では資源価格の上昇を背景に石油・石炭製品の業況が改善した。ただ、資源高はコスト上昇にもつながり、企業のマインドには逆風となる面もあった。世界的な物流停滞で、半導体など部材の調達に時間がかかっており、自動車やはん用機械は前回調査より業況が小幅悪化した。
大企業非製造業の業況DI(プラス9)は市場予想(プラス6)を上回った。東京都などの緊急事態宣言が9月末に解除され、外食の営業規制が段階的に解除された。感染者が抑えられる一方、コロナワクチンの接種も進み、接客業の需要が持ち直した。ただ、コロナ感染拡大前の19年12月(プラス20)と比べると、なお低い状況が続く。
業種別では宿泊・飲食サービスがマイナス50と、9月から24㌽改善した。対個人サービスも9月のマイナス45だったのが今回はマイナス9と、急回復した。
全規模全産業の業況判断DIはプラス2となり、コロナの感染拡大後で初めてプラスに浮上した。
2021年度の経常利益の計画は全規模全産業で前期比28.0%増と9月調査と比べ11.3㌽改善した。21年度の想定為替レートは1ドル=109円09銭で、9月調査(107円64銭)から円安方向に修正された。設備投資計画は前期比7.9%増と9月調査比から横ばいだった。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、昨日12月12日付けのこのブログでも日銀短観予想を取り上げ、ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIにせよ、設備投資計画にせよ、大きな変化はなさそうだが、非製造業は大きく改善する見込みとの結果をお示ししていたところです。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じく大企業製造業の業況判断DIが+18と前回9月調査から横ばいと報じられていて、ジャストミートした一方で、大企業非製造業では+6と予想されていましたので、実績の+9はやや上振れた印象です。もちろん、業種別にはバラツキが大きく、非製造業の中でも、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の緊急事態宣言解除を受けて、対個人サービスは9月調査から12月調査にかけて+36ポイントの大幅改善を示し、さらに、先行きでも+5ポイント改善の見込んでいます。しかし、まだ業況判断DIの水準は12月調査で▲9、先行きでも▲4と水面下だったりします。大企業製造業では、半導体などの部品調達の制約から、自動車が12月調査で▲1ポイントの低下を示しましたが、逆に、部品調達の制約緩和を見込んで先行き見通しは+10ポイントの大幅な改善を見込んでいます。大企業製造業・非製造業で、これら自動車と対個人サービス以外にもう少し詳しく産業別に景況判断DIを見ておくと、まず、特異な動きを示しているのが石油・石炭製品です。12月調査では+13ポイント改善の+31でしたが、先行きでは▲18ポイント悪化の+13が見込まれています。国際商品市況にける石油価格の動向を受けてのマインド変化ということになります。製造業では加えて非鉄金属が、12月調査で▲12ポイント悪化の+21の後、先行きもさらに▲3ポイント悪化して+18までプラス幅が縮小すると見込まれています。鉄鋼でも、12月調査で▲6ポイント悪化の+7の後、先行きではさらに▲5ポイント悪化して+2になると見込まれています。このあたりの素材産業は資源価格高騰の影響であろうと考えられます。非製造業では対個人サービスに加えて、宿泊・飲食サービスでも、12月調査で+2ポイント改善、先行きも+22ポイント改善と見込まれていますが、それでも、先行きで景況判断DIの水準はまだ▲28と低かったりします。しかし、これらのサービス業の景況感の改善は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大が抑制されていることに起因しますので、オミクロン変異株の動向次第では先行きは不透明です。

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続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。経済学的な生産関数のインプットとなる資本と労働の代理変数である設備と雇用人員については、方向としてはいずれも方向として不足感が広がる傾向にあります。DIの水準として、設備については、昨年2021年年央の+10くらいの過剰感はほぼほぼ解消され、不足感が広がる段階には達したといえます。他方、雇用人員についてはプラスに転ずることなく反転し、足元から目先では不足感が強まっている、ということになります。ただし、何度もこのブログで指摘しているように、賃金が上昇するという段階までの雇用人員の不足は生じていない、という点には注意が必要です。我が国人口がすでに減少過程にあるという事実が、かなり印象として強めに企業マインドに反映されている可能性があると私はと考えています。ですから、マインドだけに不足感があって、経済実態としてどこまでホントに人手が不足しているのかは、私には謎です。賃金がサッパリ上がらないからそう思えて仕方がありません。加えて、オミクロン変異株の動向に起因する不透明感は設備と雇用についても同様です。

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日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。日銀短観の設備投資計画のクセとして、3月調査時点ではまだ年度計画を決めている企業が少ないためか、3月にはマイナスか小さい伸び率で始まった後、6月調査で大きく上方修正され、景気がよければ、9月調査ではさらに上方修正され、さらに12月調査でも上方修正された後、その後は実績にかけて下方修正される、というのがあったんですが、今回公表の12月調査では9月調査から前記墓前産業で横ばいの7.9%増にとどまりました。すなわち、3月調査の設備投資計画が全規模全産業で+0.5%増のプラスで始まった後、6月調査では7.2%増に上方修正され、9月調査では+7.9%増に上方修正され、本日公表の12月調査でも7.9%増のままでした。また、大企業全産業の設備投資計画は+9.3%増と9月調査から下方修正され、しかも、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスの+9.5%増を下回りました。それほど大きな差ではありませんが、やや気にかかるところです。ただし、人手不足もあって、設備投資は基本的に底堅いと考えていますが、最後の着地点がどうなるか、これまた、オミクロン変異株の動向と合わせて不透明です。

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日銀短観を離れて、本日は、内閣府から機械受注が公表されています。民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+3.8%増の8708億円となり、3か月ぶりのプラスを記録しています。グラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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2021年12月12日 (日)

明日公表予定の12月調査の日銀短観の予想やいかに?

明日12月13日の公表を控えて、シンクタンクから12月調査の日銀短観予想が出そろっています。すっかり忘れていましたので、週末の日曜日ながら、簡単に取り上げておきたいと思います。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業/非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下のテーブルの通りです。設備投資計画は今年度2021年度です。ただ、全規模全産業の設備投資計画の予想を出していないシンクタンクについては、適宜代替の予想を取っています。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、可能な範囲で、残りの2021年度も含めた先行き経済動向に注目しました。短観では先行きの業況判断なども調査していますが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン変異株の感染拡大次第という面があり、シンクタンクにより大きく見方が異なることになってしまいました。それでも、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
9月調査 (最近)+18
+2
<+7.9>
n.a.
日本総研+17
+4
<+8.2%>
先行き(2022年3月調査) は、全規模・全産業で12月調査対比+3%ポイントの改善を予想。サービス消費を中心に個人消費が回復に向かうほか、部品不足の解消とともに自動車の挽回生産が本格化することが景況感を下支えする見込み。もっとも、新たな変異株(オミクロン株)の感染が再拡大すれば、サプライチェーンの停滞や活動制限による消費活動の腰折れが懸念されるなど、先行きの不透明感が残る点には注意が必要。
大和総研+19
+4
<+8.5%>
大企業製造業では、供給制約の緩和によって挽回生産を見込む「自動車」の業況判断DI(先行き)が押し上げられよう。ただし、製造業全体としては、資源価格高騰に伴う投入コストの増加が収益を押し下げるリスクへの警戒が必要だ。非製造業に関しては、経済活動の再開に伴う人出増加への期待感が、「小売」、「対個人サービス」、「宿泊・飲食サービス」といった業種を中心にの業況判断DI(先行き)を押し上げよう。ただし、新型コロナウイルスのオミクロン株に関する報道が出始めたのは12月短観の回収基準日である11月29日頃であり、12月短観の業況判断DI(先行き)に同変異株の影響が十分に織り込まれていない可能性がある点には留意が必要だ。
みずほリサーチ&テクノロジーズ+20
+6
<+8.4%>
製造業・業況判断DIの先行きは1ポイントの小幅な改善を予測する。2021年1~3月期は引き続き自動車生産の回復が予想され、業況改善が見込まれる。また、輸出向けを中心に資本財需要は底堅く、生産用機械、はん用機械のDIは高水準を維持するだろう。
非製造業・業況判断DIの先行きは3ポイントの改善を見込む。対人サービス消費の持ち直し継続への期待から、宿泊・飲食サービスや対個人サービス、運輸・郵便は改善が予想される。ただし、一部の消費者に慎重さが残っているほか、インバウンド回復も見込めないことから、これらの業種のDIはマイナス圏(「悪い」超)での推移が続く見通しだ。
ニッセイ基礎研+16
+6
<+7.5%>
先行きの景況感については総じて改善が示されると予想。製造業では部品不足の緩和による生産の回復、非製造業ではコロナ感染抑制に伴う人流のさらなる回復と「Go Toトラベル」等の経済対策への期待感が現れそうだ。中小企業非製造業については、もともと先行きを慎重に見る傾向が強く、先行きにかけて景況感の改善が示されることが極めて稀であるだけに、今回も小幅な悪化が示されると予想している。
ただし、今回の先行きの景況感に関しては、調査時期の関係で、直近発生したオミクロン株の世界的な拡大の影響が十分に織り込まれない点には留意が必要になる。オミクロン株の感染力や毒性はまだ不明だが、同株の拡大によって先行きの不透明感は確実に高まっている。
第一生命経済研+17
+5
<大企業製造業+11.8%>
大企業・非製造業の業況判断は、10月以降のコロナ感染収束を受けて、小売や宿泊・飲食サービスが改善すると見込まれる。そのため、業況判断DIは前回比+3ポイントとなり、さらに先行きも+4ポイントの改善が予想される。
ただ、問題は11月末から突然に現れたオミクロン株の影響である。12月調査では、十分にはそのリスクが織り込まれないとみられる。
三菱総研+16
+4
<+7.8%>
先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業が+16%ポイント(12月時点の業況判断から変化なし)、非製造業は+5%ポイント(12月時点の業況判断から 1%ポイント上昇)と予測する。外出行動が持ち直すなかで消費の回復が見込まれる。一方、新型コロナウイルスの感染拡大による世界の経済活動への悪影響は、引き続き先行きの懸念材料となる。ASEANの一部の国では感染が再拡大しており、部品不足の解消時期には不透明感が残る。感染力の強い変異種の出現によって各国で防疫措置が強まり、世界的に経済活動の抑制度合いが強まる可能性もある。このため、先行きの業況判断はほぼ横ばいにとどまるとみる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+20
+8
<大企業全産業+10.0%>
(大企業製造業)先行きは、部品不足が解消し、挽回生産が期待される自動車で大きく改善するも、素材業種を中心に商品市況の高止まりがコスト高として業績を悪化させかねないとの懸念が強く、22と2ポイントの改善にとどまろう。
(大企業非製造業)先行きは、感染状況が落ち着く中、経済活動の正常化が進むとの期待感から、対面型サービス業を中心に7ポイント改善の15と、製造業よりも大きく改善することが見込まれる。
農林中金総研+19
+7
<+7.5%>
先行きに関しては、製造業・加工業種の一部では一次産品価格の高騰の影響や半導体などの品薄が残ると思われる。また、欧米諸国で新型コロナ感染が急拡大しているほか、11月下旬以降は新たな変異ウイルス(オミクロン株)への警戒が高まり、金融資本市場ではリスクオフの流れが強まった。一方、非製造業では年明け後には再開予定のGoToキャンペーンなどの需要喚起策への期待感も強まっているものの、一部では人手不足によるボトルネックへの懸念が意識されている可能性がある。以上から、大企業・製造業は18、中小企業・製造業は▲4と、いずれも今回予測から▲1ポイントの悪化予想を見込む。一方、大企業・非製造業は10、中小企業・非製造業は▲2と、ともに今回予測から+3ポイントの改善と予想する。

ということで、大企業製造業の業況判断DIについては、改善・悪化どちらも見かけますが、かなり横ばいに近いラインではないかと私は受け止めています。設備投資計画も上方修正・下方修正どちらも混在しています。それに対して、大企業非製造業の業況判断DIは明確に改善を示すと予想されています。強行開催した東京オリンピック・パラリンピックも終了し、9月いっぱいで新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う緊急事態宣言が解除され、現時点ではCOVID-19の感染拡大はかなりの程度に抑制されていますから、この非製造業のマインド改善の予想は当然であろうと考えるべきです。加えて、先行きも現時点でのCOVID-19の感染拡大抑制が続けば、製造業・非製造業ともにマインドは着実に改善に向かうと考えられます。ただし、大きな前提があって、COVID-19の感染拡大の抑制が継続するかどうかはオミクロン変異株の動向次第です。ですから、年明け1月以降の経済活動もオミクロン変異株次第、ということになりそうです。私はエコノミストとして、この先行き予想については何ら見識を持ちません。悪しからず。
最後に、下のグラフは日本総研のリポートから業況判断DIの推移を引用しています。

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2021年12月11日 (土)

今週の読書は一般向け経済書をはじめとして計4冊と通常通り!!!

今週の読書は、シンクタンクのエコノミストの著書をはじめとして新人作家のミステリなどなど、以下の通りの計4冊でした。このブログで取り上げた新刊書だけで、1~3月期に56冊、4~6月も同じく56冊、7~9月で69冊と夏休みの時期があって少しペースアップし、さらに、その後、本日の4冊を含めて今週までに225冊になりました。今年中にはあと10冊前後ではないかと思います。なお、来週の学部生向けの授業で、昨年と同じように、新書を並べて「年末年始休みの読書案内」を示そうと予定しています。また、このブログでも紹介する予定ですが、今年は少し入れ替えをして10冊くらいを推薦することとしています。ゼミの学生には無理やりにでも読ませようと考えていますが、果たして、授業に出てきている学生諸君は読書するんでしょうか?

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まず、新家義貴『経済指標の読み方』(日本経済新聞出版) です。著者は、第一生命経済研のエコノミストです。なかなかに面白かったです。というのは、私はいわゆる官庁エコノミストの世界から大学の研究者という学術界に転身を図りましたので、ある意味で、両方の世界を知っているつもりなのですが、シンクタンクのエコノミストというのは、どうも、経済学的な思考のバックグラウンドにモデルを持っていないような気がします。ですから、いわゆる世間知の世界になります。逆に、学術界である大学の研究者は現実の経済を知らないわけではありませんが、モデルを分析対象にしています。ですから、専門知になります。これは経済学だけでなく、物理学なんかでも同じで、ホーキング博士は宇宙を研究していたわけですが、いわゆる目に見える宇宙をモデル化したものを、おそらくは、かなりの程度に数式で表されている宇宙のモデルを研究していたわけです。どうでもいいことながら、私が身をおいていた官庁エコノミストはこの中間か、ややが軸術会に近い印象を私自身は持っています。戻って、ですから、学術界の専門知の世界においては再現性というものが重視される一方で、世間知の世界においては各個人により出て来る結果はバラバラな可能性があります。「STAP細胞はあります!」と叫んでも、再現テストに合格しなければ博士号を剥奪されたりするわけです。ですから、私なんぞはモデルを展開するだけであればともかく、何らかの実証的な推計を含む研究成果を公表する際には、データとプログラム・ファイルを何年も保管しておいて、再現性のテストに耐えるようにしていたりします。でも、本書で展開されているのは世間知の経済指標の見方や予測のやり方であって、各人バラバラであろうかという気がします。ですから、本書の読ませどころは第5章までであって、特に、第6章の予測の部分は、個人のやり方の世界にとどまっていて、一般性、というか、科学的な再現性がないのは明白です。でも、こういったシンクタンクでメディアなんかにも露出したエコノミストは、喜んで雇う大学もあるんだろうと想像しています。最後に、とてもつまらないことを2点だけ追加すると、私は前の長崎大学の時に、2年生向けに経済指標を調べるゼミを持っていました。そこで教科書として使っていたのは、久保田博幸『ネットで調べる経済指標』(毎日コミュニケーションズ)だったんですが、絶版になってしまっているようです。誠に残念です。それから、本書で取り上げている経済指標の中に、なぜか、株価、為替、金利、貨幣供給といった金融関係の指標がスッポリと抜け落ちています。金利や貨幣供給なんかは、日銀の異次元緩和の下で指標としての有効性が低下したという気がしなくもないものの、株価は内閣府の景気動向指数の先行指数に組み込まれていますし、為替もテレビのニュースで毎日のように流されていて広く一般に知れ渡った指標です。おそらく、私が前と同じような経済指標に関する少人数のクラスを持つことになれば、たとえ異次元緩和の下で現時点では指標としての有効性が落ちているとしても、包括的に貨幣供給や金利も含めた経済指標を勉強させると思います。何故落としたのか、そのあたりは不明です。

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次に、寺尾文孝『闇の盾』(講談社) です。著者は、警察官から危機管理、というか、トラブル解決の専門家となって、今は日本リスクコントロールという会社の社長だそうです。ほぼほぼ、長らく公務員をして定年退職し、今は教員をしている身としては、大きなリスクに遭遇した経験も乏しく、それなりの興味を持って読み始めたのですが、まあ、基本的に、ややお年を召した方がご自分の半生を振り返っての「自伝」で自慢話しを展開している、というのに近い気がします。もちろん、その自慢話しがそれなりに興味を引き立てるものであるからこそ大手出版社から本で出ていることはいうまでもありません。著者が恩師と仰ぐ秦野元参議院議員をはじめとして、実に、ほぼほぼ実名で登場する人物が多く、私のような不勉強なものにも田中角栄元総理とか、上の表紙画像に見えるお二人とか、有名人も多く登場します。私のような一般ピープルはそれほど多くのトラブルに巻き込まれるわけではないのかもしれませんが、著名人であればそれなりのトラブルもあるでしょうし、そのトラブルから受けかねない潜在的なダメージも決して小さくないのだろうと想像できます。ただ、エコノミストの目から見て、本書の読ませどころはバブル期の経済事案です。イトマン事件をはじめとして、どうも、東京をホームグラウンドとする著者にしては関西案件が多いような気もしますが、バブル期に土地・ゴルフ会員権・絵画といった資産に群がって、しかも、それら資産を借入れでファイナンスして値上がりで利益を上げる、という、まあ、それほど健全とは思えない経済・金融活動で日本中が賑わっていた事実を感じ取ることが出来ます。私は大学の授業で景気変動を経済政策、すなわち、財政政策や金融政策で平準化させることを教えていて、不景気から景気浮揚を図る政策については説明しやすい一方で、逆に、好景気を冷やす必要性についてはついつい口ごもってしまうケースもあったりすることもあります。まあ、インフレが生じたら景気を冷やす必要がある、とは教えるのですが、デフレがマダ完全には脱却できていないわけですから、バブルのような好景気もインフレも、今の20歳前後の学生諸君には想像が及ばないのも判らなくもありません。それにしても、バブル期というのは、私自身が30歳前後で浮かれていて、バブル崩壊が一般的に認識される前に外交官として海外赴任してしまったものですから、今さらながらに、何だったのか、という疑問は残っています。

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次に、新川帆立『元彼の遺言状』(宝島社) です。著者は、新人ミステリ作家であり、この作品は上の表紙画像に見えるように、本年2021年第19回の『このミステリがすごい!』大賞受賞作です。主人公は20代後半のエリート女性弁護士であり、事務所から支給されるボーナスが250万円にダウンしたことで事務所を辞めて、タイトル通り、元カレの遺言状の謎を解くことを始めます。その元カレというのは、製薬会社のオーナー一族の御曹司であり、見た目も素晴らしい好男子であると設定されています。ただし、小説の出だしから、もう死んでいたりします。そして、何よりも奇妙な遺言状というのが、その元カレが死ぬ際に、元カレを殺した人物に全財産を譲る、ということになっています。もちろん、本書でも弁護士である主人公が指摘するように、それなりの遺留分というのはあるわけで、ホントにすべての遺産を相続できるわけではありません。その上、警察はすでに元カレの死因を自然死と公表しており、従って、元カレを殺した人物を捜査しようという意図もなく、一族がオーナーをしている製薬会社の代表者が、元カレの殺人者を認定する、ということになっています。もちろん、主人公が代理人を務める人物以外にも、数十億を超えるような遺産を目当てに自ら犯人を名乗り出る人がいっぱいいて、選考過程もコミカルに表現されています。すなわち、ホントに誰が殺人者であるかという真実ではなく、犯人が相続する株式の行方を重視して犯人が選考される、ということになります。プロットとしては、それほど、というか、少なくとも目を見張るような鮮やかな展開ではありませんし、いろいろとストーリーが流れた挙げ句に、最後の最後に、割とつまんない理由で犯人が判明したりするので、玉葱の皮をむくように徐々に少しずつ犯人が明らかになるタイプのミステリが好きな私からすれば、それほど高く評価できる内容ではありません。もちろん、新人ミステリ作家ですから、あまりな高望みは禁物であることは自覚しているつもりです。ただ、謎解きミステリとしては、まだまだ不十分かもしれませんが、人物像はよく描けており、キャラは立っています。ストーリーの運びはやや不自然な部分がなくはないものの、全体としては評価できるところです。ただ、ミステリの肝である謎解きだけが少し常識的に過ぎる、という気がしてなりません。新人作家のチャレンジなのですから、もう少し派手な展開もあっていいいような気も、併せて、しなくもありません。

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最後に、高橋克英『地銀消滅』(平凡社新書) です。著者は、証券会社や銀行などで銀行株のアナリストを経験したこともあるようで、今は金融機関向けのコンサルなのではないか、と私は受け止めています。麗々しく、日本金融学会会員、と著者略歴に書いてあるのは微笑ましかったです。ということで、内容はタイトル通りに、地銀の経営が行き詰まりつつあり、今後の合従連衡が進むのではないか、ということが明らかにされています。実は、3週間前の11月20日の読書感想文で取り上げた原田泰『デフレと闘う』にも何度か「地銀は終コン」である、と出ていましたが、私も最近になって、地銀と取引する機会があって、メガバンクとの差が大きいと実感しました。政府が中央政府と地方政府で3層のレイヤーとなっているわけで、銀行はそのままではないとしても、全国レベルのメガバンク、都道府県レベルの地銀=地方銀行、そして、区市町村ではないとしても、都道府県よりもさらに小さいレベルの信金・信組という構造になっていて、『デフレと闘う』ではメガバンクと信金・信組はまだいいとしても、地銀こそが過剰な人員をはじめとする経営リソースを抱えてムダが多い、という議論を展開していたのですが、本書では、メガバンクはともかく、地銀よりも規模の小さな信金・信組に関する議論は何らなされていません。私は公務員として東京でお仕事をして、メガバンク、あるいは、メガバンクの系列の信託銀行などに口座を持って、お給料の振込みや電気ガス料金などの公共料金の引落し、などといった通常業務の他に、マイホーム購入のための住宅ローン借入れなんぞも経験あるのですが、一般に、東京と比べて関西では何ごとにも時間がかかると思っていた矢先に、地銀もそうだと認識する出来事がいくつかありました。東京のメガバンクと関西の地銀の間のギャップについては、これが、メガバンクと地銀の差に帰着するのか、東京と関西の違いに起因するのか、私には定かには判別できませんが、確かに、東京のメガバンクと関西の地銀の差はかなりのもんだと実感しています。それを本書で改めて確認することが出来ました。決して私の偏見に基づく感覚ではないのだろうと思います。

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2021年12月10日 (金)

オイルショック以来41年ぶりの上げ幅を記録した企業物価指数(PPI)をどう見るか?

本日、日銀から11月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+9.0%まで上昇幅が拡大しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に引用すると以下の通りです。

企業物価41年ぶり伸び率 11月9.0%上昇、資源高で
日銀が10日発表した11月の企業物価指数は前年同月比9.0%上昇した。伸び率はオイルショックが影響していた1980年12月以来およそ41年ぶりの大きさ。原油など国際商品価格の上昇に加え、円安で原材料にかかる輸入品が値上がりしている。新型コロナウイルス禍で景気回復の足取りが鈍いなか、企業収益を圧迫する懸念が強まってきた。
企業物価指数は企業間で取引するモノの物価動向を示す。日銀が公表している長期データによると、80年12月(10.4%)以来の伸び率となった。年初にはマイナス圏で推移していたのが3月以降は一転、9カ月連続で前年を上回った。10月の伸び率も速報値の8.0%から修正値は8.3%に加速した。
品目別では、ガソリンや軽油などの石油・石炭製品、鉄鋼や化学製品の値上がりが顕著だった。特に石油・石炭製品の上昇率は前年同月比で49.3%、鉄鋼は23.9%だった。原油価格の上昇が続いたほか、輸送用機器などでは原材料である鋼材の値上がりの影響が出始めている。
円安の影響も強まっている。輸入物価の上昇率はドルなどの契約通貨ベースでは35.7%だったのに対し、円ベースでは44.3%と加速が目立った。
公表している744品目のうち、前年同月比で上昇したのは453品目で下落の207品目を大幅に上回った。物価上昇の動きはおよそ6割の品目におよび、足元では飲食料品など幅広い分野に広がりつつある。
国内では長引くコロナ禍で需要の持ち直しが鈍い。個人消費が冷え込むなか企業は値上げに慎重にならざるを得ず、原材料コストの上昇を販売価格に転嫁できなければ企業収益は圧迫されかねない。

とてもコンパクトに取りまとめられています。続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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このところ、消費者物価指数(CPI)でみても、本日公表の企業物価指数(PPI)でみても、いずれも、順調に足元で物価が下げ止まり、ないし、上昇しつつあると私は評価しています。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスではPPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比で+8.5%の上昇と予想されていましたから、実績の+9.0%はやや上振れた印象です。国際商品市況における石油をはじめとする資源価格の上昇に起因するコストプッシュとはいえ、物価の上昇そのものはデフレ脱却には有益な可能性があります。もっとも、この動きが一巡すれば上昇率で計測した物価も元に戻ることは覚悟せねばなりません。ということで、国内物価について品目別で前年同月比を少し詳しく見ると、木材・木製品が+58.9%、石油・石炭製品が+49.3%、非鉄金属が+32.8%、鉄鋼+23.8%、化学製品+14.1%までが2ケタ上昇となっています。ただし、これら品目の上昇幅拡大の背景にある原油価格の前年同月比上昇率は、今年2021年5月の+238.8%をピークに、6月+173.2%、7月+102.8%、8月+68.6%、9月統計+63.3%ときて、10月+88.7%、11月+116.0%と上昇率が再加速しています。私はこの方面に詳しくないものですから、日本総研のリポート「原油市場展望」とか、みずほ証券のリポート「マーケット・フォーカス」とかを見ているんですが、当面は高値圏で推移するものの、春からは需給のひっ迫感が和らぐにつれて、原油価格は徐々に水準を切り下げる見込みも示されています。加えて、12月7日に米国エネルギー省(DOE)から公表された Short-term Energy Outlook でも、指標となる WTI Crude Oil のバレル当たり価格は2020年の39.17ドルを底として、今年2021年には67.87ドルまで上昇したものの、来年2022年には66.42ドルにわずかながら下落する、と見込まれています。もちろん新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン変異株次第ではありますが、前年同月比上昇率で見ればピークアウトに向かっている動きに大きな変わりはないものと私は楽観しています。言葉を代えれば、国際商品市況における石油ほかの1次産品をはじめとして、中国などの新興国における景気回復に伴って、基礎的な資源価格の上昇が背景にあると考えるべきであり、つまり、必ずしも日本ではなく世界のほかの国の景気回復により、我が国の物価が上昇幅を拡大している、というわけなのかもしれません。

問題は今日発表された企業物価指数(PPI)の上昇が消費者物価(CPI)に波及した場合の対応です。例えば、ということで、国民の生活が苦しくなるのを無視して、政府や労働組合が企業のコストアップに対応するために賃金上昇を抑制するがごとき対応をするなら、日本では本格的なデフレ脱却が遠のくことになります。企業が資源価格上昇によるコストアップを製品価格に転嫁するのであれば、労働者の側でもそれに見合う賃金上昇を要求すべきです。そして、国民の中の物価に対する期待を変化させることができれば、日本経済はさらに本格的なデフレ脱却に近づくと私は考えています。

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2021年12月 9日 (木)

プラスの続く法人企業景気予測調査から何が読み取れるか?

本日、財務省から10~12月期の法人企業景気予測調査が公表されています。統計のヘッドラインとなる大企業全産業の景況判断指数(BSI)は足元10~12月期が+9.6と2期連続のプラス、さらに、続く来年2022年1~3月期も+7.2でプラスが続く見込みです。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10-12月の大企業景況感、プラス9.6 22年1-3月はプラス7.2
財務省と内閣府が9日発表した法人企業景気予測調査によると、10~12月期の大企業全産業の景況判断指数(BSI)はプラス9.6だった。2期連続プラス、前回調査の7~9月期はプラス3.3だった。先行き2022年1~3月期の見通しはプラス7.2だった。
10~12月期は大企業のうち製造業がプラス7.9で、非製造業はプラス10.4だった。中小企業の全産業はマイナス3.0だった。
2021年度の設備投資見通しは前年度比5.3%増だった。前回調査では6.6%増だった。
景況判断指数は「上昇」と答えた企業と「下降」と答えた企業の割合の差から算出する。

いつものように、よく取りまとめられています。続いて、法人企業景気予測調査のヘッドラインとなる大企業の景況判断BSIのグラフは下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。

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この統計のヘッドラインとなる大企業全産業の景況判断指数(BSI)で見ると、2020年4~6月期に、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックに対応した緊急事態宣言によるロックダウンの影響を受けて、▲47.6の大きなマイナスを記録しています。昨年2020年後半はリバウンドしたのですが、今年2021年に入って、COVID-19の感染拡大とともに、1~3月期▲4.5、4~6月期▲4.7と、2期連続でマイナスに陥り、東京オリンピック・パラリンピックの強行開催の影響が出ています。ようやく、7~9月期に+3.3、そして、足元の10~12月期に+9.6と回復しています。ただし、先行きは、来年2022年1~3月期は+7.2、そして、4~6月期も+3.8と低下していくと見込まれていますが、これはこの統計のクセのようなものだと私は受け止めています。少なくとも、COVID-19のオミクロン変異株の先行きが不透明なだけに、その前段階では企業マインドが一息ついているものと私は推察しています。
統計のヘッドラインとなる景況判断BSI以外の注目点を上げると、従業員数判断BSIから見た雇用は大企業、中堅企業、中小企業ともに「不足気味」超で推移しており、人手不足がうかがえます。また、本年度2021年度の設備投資計画は+5.3%増と、前回調査の+6.6%増からやや下方修正されたものの、設備投資増の方向が示されています。製造業+5.4%増、非製造業+5.3%増とほとんど差はありません。もちろん、COVID-19の感染拡大の抑制に伴う景気回復期待も大きいのでしょうが、この統計のクセのようなものも含まれている可能性が十分あると私は考えています。

さて、来週12月13日に公表される予定の12月調査の日銀短観やいかに?

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2021年12月 8日 (水)

下方修正された7-9月期GDP統計2次QEと景気ウォッチャーと経常収支をどう見るか?

本日、内閣府から今年2021年4~6月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は▲0.9%、年率では▲3.6%と、1次QEから下方修正されています。足元では新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大は抑制されていますが、新たなオミクロン変異株の動向など、先行きはまだ不透明感が残ります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月GDP、3.6%減に下方修正 実質年率改定値
内閣府が8日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質で前期比0.9%減、年率3.6%減だった。11月に公表した速報値(前期比0.8%減、年率3.0%減)から下方修正した。2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大下で取り入れていた暫定的な季節調整の処理方法を見直したため、個人消費や民間在庫などが下振れした。
マイナス成長は2期ぶり。内閣府はコロナ感染が拡大し始めた20年1~3月期以降、その影響を捉えるために従来とは異なる方法で季節調整をかけてきた。コロナ禍を経てデータが蓄積されたため、7~9月期の改定値から新たな方法で算出した。
内需の柱である個人消費は前期比1.3%減で、速報値(1.1%減)から下振れした。緊急事態宣言による外出自粛の影響で、消費は冷え込んだ。政府消費は1.0%増で、速報値(1.1%増)から下方修正した。
設備投資や民間在庫変動には、財務省が1日に発表した7~9月期の法人企業統計の数字を反映させた。設備投資は前期比2.3%減で、速報値(3.8%減)からマイナス幅が縮小した。民間在庫変動のGDP押し上げ効果は速報段階は0.3ポイントだったが0.1ポイントとなった。
7~9月期の年額換算の実質GDPは532兆円で、速報段階の534兆円から2兆円減った。20年度の実質成長率はこれまでのマイナス4.4%からマイナス4.5%に落ち込んだ。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2020/7-92020/10-122021/1-32021/4-62021/7-9
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+5.1+2.3▲0.7+0.5▲0.8▲0.9
民間消費+5.0+2.3▲1.1+0.6▲1.1▲1.3
民間住宅▲4.8+0.0+0.9+1.0▲2.6▲1.6
民間設備▲0.4+1.2+0.4+2.0▲3.8▲2.3
民間在庫 *(▲0.5)(▲0.2)(+0.1)(+0.0)(+0.3)(+0.1)
公的需要+2.0+0.7▲0.8+0.0+0.6+0.4
内需寄与度 *(+2.6)(+1.4)(▲0.6)(+0.7)(▲0.9)(▲0.9)
外需寄与度 *(+2.5)(+0.9)(▲0.1)(▲0.2)(+0.1)(+0.0)
輸出+8.7+11.1+2.3+2.5▲2.1▲0.9
輸入▲6.7+5.0+3.2+3.9▲2.7▲1.0
国内総所得 (GDI)+5.0+2.3▲1.3+0.0▲1.4▲1.5
国民総所得 (GNI)+5.0+2.4▲1.2+0.1▲1.4▲1.5
名目GDP+5.1+1.8▲0.7+0.1▲0.6▲1.0
雇用者報酬+0.6+1.5+1.5+0.3+0.1▲0.4
GDPデフレータ+1.1+0.2▲0.1▲1.1▲1.1▲1.2
内需デフレータ+0.1▲0.7▲0.5+0.3+0.6+0.5

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された今年2021年7~9月期の最新データでは、前期比成長率がマイナス成長を示し、GDPのコンポーネントのうち赤の消費と水色の設備投資のマイナス寄与が大きくなっています。

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先月公表の1次QEから大きな景気認識の変化はありませんが、テーブルを作っていて、数字としてはかなり大幅な変更があったことを実感しました。第1に、今年2021年1~3月期までのデータが確報公表に伴って速報値から年次推計値に改定されたことに加え、第2に、季節調整におけるダミー変数が変更されたことによります。前者は毎年例年通りの改定なのですが、後者については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるGDPの大きな変動が季節調整を歪ませることを回避するため、昨年2020年1~3月期以降、ほとんどの需要項目で異常値処理のダミー変数が設定されています。私自身は止むを得ない、というか、むしろ、適切な対応だったと考えていますが、データの蓄積に従ってCOVID-19に起因する異常値処理について精査を行い、ダミーを設定する需要項目、期間等について新たなダミーを用いることとなって、季節調整値を遡及改定したことが少し改定幅を撹乱している気がします。しかし、いずれにせよ、7~9月期については、東京オリンピック・パラリンピックを強行開催したことに伴ってCOVID-19の感染拡大を招き、結果として緊急事態宣言に追い込まれたために消費が大きく減少し、加えて、半導体などの部品調達難から自動車生産が減産したことがマイナス成長の要因です。ただ、先行きに関しては、少なくとも足元の10~12月期はかなりの高成長で、ひょっとしたら年率+10%成長くらいのリバウンドを見せる可能性が十分あると私は見込んでいます。ただし、年明け2022年1月からはオミクロン変異株の国内感染拡大がどこまで進むか、に大きく依存します。何とも、エコノミストには見通しがたく感じています。

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GDP統計のほか、本日、内閣府から11月の景気ウォッチャーが、また、財務省から10月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.8ポイント上昇の56.3となった一方で、先行き判断DIは▲4.1ポイント低下の53.4を記録しています。先行きのマインド悪化の要因として、内閣府ではコスト上昇懸念とCOVID-19のオミクロン変異株を上げています。経常収支は、季節調整済みの系列で+1兆259億円と10月の+7627億円を上回る黒字を計上しています。いつものグラフだけ、上の通り示しておきます。上のパネルの景気ウォッチャーのグラフでは、現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影を付けた部分は景気後退期を示しています。下の経常収支のグラフでは、青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。いずれも季節調整済みの系列をプロットしています。

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今日は上の倅の誕生日!!!

今日は、我が家の上の倅の誕生日です。
就職して一人暮らしをしていて、なかなか顔を合わせる機会がありませんが、達者にしていることと思います。子育てとしては完全に終わっていて、後は結婚してほしいと願うだけです。

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2021年12月 7日 (火)

4か月振りに上昇した10月統計の景気動向指数の先行きやいかに?

本日、内閣府から10月の景気動向指数公表されています。CI先行指数が前月から+1.9ポイント上昇して102.1を示し、CI一致指数も前月から+1.2ポイント上昇して89.9を記録しています。どちらも4か月振りの上昇です。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから手短に引用すると以下の通りです。

10月の景気一致指数、1.2ポイント上昇 市場予想は1.2ポイント上昇
内閣府が7日発表した10月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比1.2ポイント上昇の89.9となった。QUICKがまとめた市場予想の中央値は1.2ポイント上昇だった。数カ月後の景気を示す先行指数は1.9ポイント上昇の102.1だった。
内閣府は、一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「足踏み」に据え置いた。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気変動の大きさやテンポを示す。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています

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ということで、統計作成官庁である内閣府では、3月に基調判断を上方改定して、8月統計まで6か月連続で「改善」に据え置いた後、引用した記事にもあるように、先月公表の9月統計から「足踏み」に下方修正して、10月統計でも据え置かれています。基準がどうなっているかというと、「3か月後方移動平均が3か月連続して上昇していて、当月の前月差の符号がプラス」となっています。8月統計からすでに3か月後方移動平均がマイナスになっていたのですから、内閣府の公式発表ではなく、8月統計公表の時点から「足踏み」ではなかったのか、と私は考えます。10月統計について、CI一致指数を詳しく見ると、プラスの寄与が大きい順に、耐久消費財出荷指数、鉱工業用生産財出荷指数、輸出数量指数、生産指数(鉱工業)などとなっており、先月統計でマイナス寄与が大きかった系列がリバウンドして、そのままの順でプラス寄与に並んでいたりします。逆に、マイナス寄与も大きい順に、商業販売額(卸売業)(前年同月比)、投資財出荷指数(除輸送機械)、有効求人倍率(除学卒)などとなっています。基本的に、9月いっぱいで新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大防止のための緊急事態宣言が解除されたことに伴う景気の拡大であると考えるべきです。ただ、11月統計ではまだ顕在化しないでしょうが、足元の12月にはオミクロン変異株が世界的に感染拡大しており、先行き景気はまったく不透明です。

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2021年12月 6日 (月)

2021年7-9月期GDP統計2次QEの予想やいかに?

先週の法人企業統計をはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、明後日水曜日の12月8日に7~9月期GDP統計速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。ということで、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。9月末まで首都圏や関西圏などに4回目の緊急事態宣言が出ていて消費が冷え込んだ上に、半導体不足などの供給制約を背景に自動車をはじめとして輸出が減少しており、これらの影響が気にかかるところです。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の10~12月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。ただし、いつもの通り、2次QEですので法人企業統計のオマケのような扱いをしているシンクタンクがほとんどです。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の動向は、新たなオミクロン変異株の出現もあって、何とも先行き不透明であることはいうまでもありません。特に、みずほリサーチ&テクノロジーズのリポートでは一定のスペースを使って10~12月期の見通しを詳述しているのですが、ここでは少し短めにカットしてあります。加えて、第一生命経済研のリポートにあるように、季節調整の撹乱要因もありそうです。これらも含めて、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE▲0.8%
(▲3.0%)
n.a.
日本総研▲0.5%
(▲2.2%)
7~9月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資の減少幅が縮小する見込み。その結果、成長率は前期比年率▲2.2%(前期比▲0.5%)と、1次QE(前期比年率▲3.0%、前期比▲0.8%)から上方修正される見込み。
大和総研▲0.8%
(▲3.1%)
7-9月期GDP2次速報(12月8日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率▲3.1%と、1次速報(同▲3.0%)から僅かに下方修正されると予想する)。
みずほリサーチ&テクノロジーズ▲0.7%
(▲2.8%)
10~12月期、1~3月期の日本経済は、個人消費を中心に高成長が続くと予測している(現時点では、10~12月期は前期比年率7%程度の成長を見込んでいる)。欧米と比較してワクチン接種の出だしが遅れたことで、7~9月期の日本経済は感染再拡大に伴う弱さが目立ったが、逆に10~12月期以降は欧州などで感染が再拡大する中で日本経済の回復が際立つ構図になるだろう。12~19歳の1回目接種率が70%を超過するなど、日本は若年層を含め年齢による接種率の差が小さいことが足元で感染再拡大を抑制する一因になっていると考えられる。加えて、日本では感染防止効果が高いmRNAワクチン(ファイザー、モデルナ)の使用割合がほぼ100%であり、感染が再拡大している欧州や韓国では70~80%にとどまっていることとの違いが表れているとみられる。
ニッセイ基礎研▲0.8%
(▲3.3%)
12/8公表予定の21年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.8%(前期比年率▲3.3%)となり、1 次速報の前期比▲0.8%(前期比年率▲3.0%)から若干下方修正されると予想する。
第一生命経済研▲0.7%
(▲2.6%)
今回の2次速報より、季節調整におけるダミー変数の変更が行われることとなっており、これが攪乱要因となる見込みである。新型コロナウイルスによるGDPの大きな変動が季節調整を歪ませることを回避することを目的として、2020年1-3月期以降、ほとんどの需要項目で異常値処理のダミー変数が設定され続けてきた。このことは妥当な対応だったと思われるが、内閣府は、時間の経過によりデータが蓄積されたことから、今回改めてこの異常値処理について精査を行い、ダミーを設定する需要項目、期間等について再検討を行った。こうして新たに設定されたダミー変数を用いることで、季節調整値は遡及改定されることになる。
特にこの影響を受けるのが設備投資であり、7-9月期については季節調整の技術的な影響でかなり押し上げられることになる。本日公表された法人企業統計の結果を反映すれば、本来であれば1次速報から下方修正されるはずだったが、この季節調整の影響で、設備投資はむしろ上方修正される形になる可能性が高い。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.4%
(▲1.5%)
2021年7~9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比-0.4%と1次速報値の同-0.8%から上方に修正される見込みであるが、夏場の景気が厳しかったとの評価自体に変化はないであろう(年率換算では-3.0%から-1.5%に上方修正)。なお、今回の発表においては、通常の1次速報から2次速報への改定に加え、2020年度の年次推計の発表に伴う改定も加わる予定であるが、それによって過去の景気判断が大幅に修正されることもない見込みである。
三菱総研▲0.7%
(▲2.7%)
2021年7-9月期の実質GDP成長率は、季調済前期比▲0.7%(年率▲2.7%)と、1次速報値(同▲0.8%(年率▲3.0%))から小幅上方修正を予測する。

基本的に、私は今回の7~9月期2次QEは、季節調整の撹乱要因について考慮しなければ、わずかながら1次QEから下方改定であると考えています。ですから、過去の数字ながら、東京オリンピック・パラリンピックが開催されていたとはいえ、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)感染拡大に対応した緊急事態宣言下で消費が大きくスローダウンしたことは事実ですし、景気に関する見方を変更する必要はまったくありません。そして、逆に、10~12月期は緊急事態宣言が解除され、COVID-19の感染拡大もかなり下火になったことから、オミクロン変異株の動向は極めて不透明ながら、一定のリバウンドは見られたものと考えています。大雑把ながら、年率+5%を越える成長率を記録したものと私は予想しています。欧米においてCOVID-19の感染が拡大した一方で、我が国では感染拡大がかなり抑制されていた実感があります。ただし、としえ家1~3月以降はまったくもってオミクロン株次第、ということになりそうです。エコノミストとして予想の限りではありません。
最後に、下のグラフはみずほリサーチ&テクノロジーズのリポートから引用しています。

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2021年12月 5日 (日)

今年2021年の新語・流行語大賞は「リアル二刀流/ショータイム」に決定!!!

旧聞に属する話題かもしれませんが、12月1日に、新語・流行語大賞の年間大賞とトップ10が明らかにされています。以下の通りです。

年間大賞
リアル二刀流/ショータイム
トップ10
ジェンダー平等
 
うっせぇわ
 
親ガチャ
 
ゴン攻め/ビッタビタ
 
人流
 
スギムライジング
 
Z世代
 
ぼったくり男爵
 
黙食
 
リアル二刀流/ショータイム

以下、サイトのスクショです。解説がタップリあります。

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2021年12月 4日 (土)

今週の読書は少しもの足りずに計5冊!!!

今週の読書は、話題の書をいくつか読みましたが、ハッキリと期待外れでした。『幸福の歴史』は人間の性善説と性悪説の根本的な要因を見逃しているように見えますし、『アイデア資本主義』も目新しい主張は見られません。ただ、新書はいつも通りにコンパクトな内容です。それから、いつもお示ししている本年の読書の進行ですが、このブログで取り上げた新刊書だけで、1~3月期に56冊、4~6月も同じく56冊、7~9月で69冊と夏休みの時期があって少しペースアップし、さらに、その後、本日の5冊を含めて今週までに221冊になりました。年間250冊は少しムリそうな気がします。

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まず、ルトガー・ブレグマン『希望の歴史』上下(文藝春秋) です。著者は、歴史家となっていますが、ジャーナリストなんだろうと思います。4年ほど前の2017年9月にこの私のブログで、ベーシックインカムにスポットを当てた『隷属なき道』を読書感想文で取り上げています。本書では、人類というものが、決して狡猾であったり自分勝手な性格ではなく、その本性として善良であるという性善説を展開しています。私は2点疑問があり、まず第1に人間の本姓を他の条件から切り離して論じることの限界であり、第2に人間個々人の性格や性質から必ずしも集団としての人間の行動が演繹できるわけではない点です。最初のポイントについては、まあ、中国古典古代の春秋のいくつかの説にもあるように性善説も性悪説もどちらも成り立つ気がします。私のようなエコノミストの目から見て、性善説かつ性悪説であって、その底流は合理的というのがキーワードであり、従って、大雑把な表現ながら、十分な所得があって生活に余裕あるなら性善説が成り立ち、逆に、所得が不足して生活にゆとりなければ性悪説が成り立つような気がします。とても緩やかな関係ながら、例えば、所得と人口密度のよって犯罪の発生がある程度は説明できます。ですから、所得とか、あるいは、所得から派生する生活レベルと独立に性善性悪を語ることは完全に片手落ちです。意味がないとまではいいませんが、人間性善説を発見したければ豊かな社会から例を取ればいいでしょうし、性悪説であればその反対です。加えて、マルクス主義的な疎外の理論を待つまでもなく、人間個々人と集団としての国家や社会の動向はそれほど強くリンクするわけではありません。ケインズ経済学的な合成の誤謬というものも発生することもありますし、例えば、小学生が考えるように、人々の心から憎しみがなくなれば戦争が怒らないとの思考はいつも成り立つものではありません。第2のポイントは少し難しいかもしれませんが、第1の点については、性善説・性悪説ばかりではなく、他の多くの分野にも共通して成り立つ点は忘れるべきではありません。大学教員として教育の他に研究にも従事する身として、予算がタップリあれば研究が進むというのは、豊富な実例があります。教育にお金をタップリかければ学力は上がりますし、病気の治りも早くなるんではないでしょうか。現在の資本主義では悲しくも、おカネというものに還元されるわけですが、資本主義特有の見方を離れれば、「利用な可能なリソース」ということになります。保特やお金やと行ったエコノミスト特有の表現をお好みでなければ、利用可能なリソースがタップリあれば、人間には性善説が成り立ちますし、研究は進みますし、学力は上がり、病気の回復も早くなり、その他、好ましい方向にコトが進むのではないか、と考えるのは私だけでしょうか。従って、本書では、いろんな実例を並べているものの、例えば、今さらジンバルドー教授のスタンフォード監獄実験やミルグロム教授の実験を否定しても、何の生産的な結論も得られないと思うのですが、いずれにせよ、私には疑問だらけの主張だった気がします。

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次に、大川内直子『アイデア資本主義』(実業之日本社) です。著者は、本書のアイデア資本主義を実践するような企業を起業しています。ということで、いろんな主張を取りまとめているのですが、私は「インボリューション」という養護以外は、ほとんど目新しい主張を見かけませんでした。第5章の参考文献に挙げられている水野教授の『資本主義の終焉と歴史の危機』にかなりの部分を負っているような気がします。水野教授や最近の多くの論調と真っ向から対立させているように見えるのは、一定のセールス・ポイントにするつもりなのでしょうが、資本主義が終わって新しい経済システムが始まるというよりは、定義を変更し、「消費を抑制して将来への投資に蓄積する」という定義を新たに設定して、資本主義が継続する、という主張ではないなと思います。でも、これも定義次第では新たな資本主義の外延的延長、継続と大きな違いはありませんので、基本的には最近のいくつかの論調と変わるものではありません。私自身の歴史観では、工場における生産が始まった産業革命ころに資本の蓄積とともに成立した資本主義1.0が、20世紀の2度に渡る世界大戦、そして、その戦間期の大恐慌とともに、20世紀なかばからケインズ経済学に支えられた福祉国家として資本主義2.0に進化し、現時点では、今世紀初頭の金融危機やコロナ危機を契機として、資本主義3.0を模索している、ということになります。資本主義3.0は、もはや資本主義ではなく社会主義ないし共産主義かもしれませんし、別の資本主義かもしれません。資本主義にとっては、文字通り、資本の蓄積がもっとも重要な時代を画期する判断材料になります。そして、我々が暮らしている資本主義2.0では、その画期が1970年代です。1970年代までの資本主義2.0前期では、資本の蓄積が、戦争で失われたこともあって、十分ではなく、需要に対して供給が十分ではなかったため、経済学の分析も供給面の生産性を重視していました。逆に、1970年代から現時点まで、資本蓄積が十分進んで供給能力が十分であったことから、むしろケインズ的な需要不足を招いて、私のような高圧経済を重視するエコノミストも現れ、需要喚起の政策が必要となっています。でも、まだエコノミストの多くは供給サイドの生産性を、一所懸命に分析しているのが実情です。そして、そういった供給サイド重視のエコノミストも、ようやく、実物的な資本ストックよりも無形資本、intangible capital に気づきつつあるのが最近の経済論壇でも見かけることが出来るようになりました。本書でいう「アイデア」も実は、この無形資本の一種であると考えるべきです。でも、いくつかのアタラな資本主義への模索の動機も私は注目しています。すなわち、気候変動=地球温暖化の防止だったり、格差是正だったり、あるいは、本書ではさらなる成長の促進だったりするわけですが、物理学の大統一理論ではないですが、それらが統一的に把握される新しい経済学も私なりに考えたいと思います。

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次に、浜矩子ほか『日本人の給料』(宝島社新書) です。著者は、第1章から第7章まで7人いる、というか、著者というよりもインタビューを受けています。人事や賃金のコンサル2人、エコノミスト3人、労働組合と左派政党を代表して1人ずつ、という構成です。ですから、何ら統一性はないわけですが、私は東京都立大学の脇田教授の第3章が圧倒的に正しいと受け止めています。ほかに、政府の提灯持ちのように長期雇用かつ雇用の超安定性のために解雇ができない点を重視した議論を展開していたり、デジタル化の遅れなどの技術革新の遅れをい適していたりと、やや的を外した議論が多い気がします。もっとも、編集者からすれば、お給料=賃金が上がらない点について学術的にも迷走している中で、新書レベルで決定打が飛ばせるハズもなく、いろんな議論をいっぱい並べるという編集方針にも、私は一定の理解を示すべきか、という気がします。ただ、本書の最初の部分にある人事・賃金コンサルの人が、本書のテーマであるお給料ではなく、中小企業の経営の苦しさを日本人の高賃金に帰している議論は、やや目に余るものがあります。編集者として何とかならなかったものかという気がします。本筋に戻って、脇田教授の議論は企業の利益が賃金を圧迫しているというもので、経済学的にいえば、資本分配率が上昇して、労働分配率が低下している、ということになります。私はミクロ経済学的な見方ながら、基本的に資源=リソースの希少性に従った価格付けがなされ、従って、これほどまでに資本地区性が進んで人口減少社会になれば、労働分配率が上昇するのが当然と考えていますが、真逆になっているのは、労働組合の切り崩しとか、労使間の力関係が大きな影響を及ぼしている可能性を考慮せざるを得ません。マルクス主義的な見方をすれば、階級闘争ということになるのかもしれませんが、バフェットが "There's class warfare, all right, but it's my class, the rich class, that's making war, and we're winning." と New York Times でうそぶいているように、勝っているのは資本家階級のようです。

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最後に、小林誠[編著]『宇宙はなぜ物質でできているのか』(集英社新書) です。編著者は、今年亡くなった益川教授とともにノーベル物理学賞を受賞した物理学者です。今週火曜日にSPring-8を見学したことから、少し物理学に興味を持って読んだのですが、誠に申し訳ないながら、ほとんど理解できませんでした。収録されているのは、難しい物理学のお説の展開から、この宇宙物理学の学説史、はたまた、カミオカンデ、スーパーカミオカンデ、ハイパーカミオカンデといった大型施設を造る苦労話まで、いろいろなレベルの議論が展開されていて、すべてがすべて理解できなかったわけではないのですが、家大学院留学生とともに見学したSPring-8でのご説明とともに、恥ずかしながら理解が及びませんでした。申し訳なくもまったく書評になっていませんが、物理学の学問の香りに触れたければ、その限りに置いてオススメします。

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2021年12月 3日 (金)

わずかに+210千人増にとどまった11月の米国雇用統計はオミクロン変異株でどう動くか?

日本時間の今夜、米国労働省から11月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は今年2021年に入って着実にプラスを記録していましたが、本日公表の11月統計では+210千人増にとどまっています。ただ、同時に、失業率は前月の4.6%から11月には4.2%に低下しています。まず、長くなりますが、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を、10パラに渡って引用すると以下の通りです。

Economy adds just 210,000 jobs in November even as COVID cases fall, schools reopen; unemployment drops to 4.2%
Hiring slowed sharply in November despite sharply falling COVID-19 cases, easing child care constraints and expiring unemployment benefits, developments that appeared to draw more Americans back into the workforce.
The economy added 210,000 jobs, and the unemployment rate, which is calculated from a different survey, fell from 4.6% to 4.2%, the Labor Department said Friday.
Economists had estimated that 545,000 jobs were added last month, according to a Bloomberg survey.
The U.S. has recovered 18.4 million, or 82%, of the 22.4 million jobs lost during the depths of the pandemic in the spring of 2020. That leaves the nation about 4 million jobs below its pre-crisis level.
There were some positive signs in the report. Payroll gains for September and October were revised up by a total 82,000 The labor force -- made up of Americans working or looking for jobs -- grew by nearly 600,000, highlighting that many people on the sidelines are streaming back into an improving job market that's offering higher wages. The share of people over 16 participating in the labor force rose from 61.6% to 61.8%.
That could help ease dire worker shortages.
Employer demand for workers has been strong for months but the labor shortages have held job gains to solid but less-than-blockbuster levels. In September, COVID's delta variant kept many Americans cautious and many schools from fully reopening, forcing parents to care for distance learning kids and put off their return to the workplace or job hunts.
But 81% of Americans over 12 are now fully vaccinated and some children age 5 to 11 also have gotten their first shots, according to the Centers for Disease Control and Prevention. New daily COVID cases have fallen from about 95,000 to 82,000 the past 10 days and from 150,000 since early September. Schools, meanwhile, largely have reopened.
And three months have now passed since the federal government's enhanced unemployment benefits expired for about 11 million people. As a result, while the share of Americans working or looking for jobs didn't tick up as expected in September and October, some economists still expected that boost to materialize.
A couple of wild cards could darken the job market in coming months, including COVID's omicron variant first discovered in South Africa last week.

とても長々と、しかも、よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは今年2020年2月を米国景気の山と認定しています。ともかく、2020年4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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引用した記事にもあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスでは+500千人を大きく上回る雇用者増が予想されていただけに、実績の+210千人増は大きく下振れた印象です。他方で、失業率は今年2021年年初には6%前後だったんですが、最近では5%を下回る水準までまで低下し、11月統計ではとうとう4.2%まで低下しました。ですから、米国経済はケインズ的な需要不足で雇用が伸びないのではなく、むしろ、労働供給が不足し人手不足で雇用が伸びないと考えるべきです。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が進んでいたところに、バイデン政権の大幅な財政拡大があって、雇用改善が進んでいるのですが、それにしても、引用した記事の3パら目にあるように、2020年春のCOVID-19の感染拡大で▲22.4百万人の雇用が失われた後、+18.4百万人の雇用を回復したとはいえ、まだ▲4百万人の雇用がコロナ危機で失われたままなのですが、人的接触の多い産業で職場復帰をためらうケースや、そのために賃上げで対応しているケースなどが、12月1日に公表された米国連邦準備制度理事会(FED)のベージュ・ブックなどでも報告されており、こういった人手不足が、国際商品市況における石油価格の上昇もあって、米国のインフレをかなり高進させています。こういった物価と雇用の情勢を見て、連邦準備制度理事会(FED)は見事に市場との対話に基づいてテイパリングへと舵を切っています。

私のような高圧経済支持者からすれば、パンデミック前には失業率は3%台半ばだったわけですから、現状ではまだCOVID-19の影響を脱したとはいえまず、特に、COVID-19のオミクロン変異株の影響が現時点では予想できないわけですので、多少のインフレを許容してでも今少し需要拡大を図るのも一案だと考えていますが、インフレ動向からすれば金融政策が引き締め方向に進むのは当然と考えるエコノミストも多いのかもしれません。

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2021年12月 2日 (木)

前月から横ばいとなった消費者態度指数の先行きをどう見るか?

本日、内閣府から11月の消費者態度指数が公表されています。前月から横ばいの39.2を記録しています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じた記事を手短かに引用すると以下の通りです。

11月の消費者態度指数、横ばいの39.2
内閣府が2日発表した11月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比横ばいの39.2だった。
内閣府は消費者心理の基調判断を「持ち直しの動きが続いている」に据え置いた。
消費者態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と答えれば「ゼロ」になる。

いつもの通り、よく取りまとめられている印象です。続いて、消費者態度指数のグラフは下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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まず、消費者態度指数コンポーネントについて、前月差で見ると、「雇用環境」が+1.9ポイント上昇し42.9、「収入の増え方」が+0.3ポイント上昇し39.4となった一方で、「耐久消費財の買い時判断」が▲1.2ポイント低下し36.5、「暮らし向き」も▲1.0ポイント低下して38.1を記録しています。前月から横ばいで、統計作成官庁である内閣府でも基調判断を「持ち直しの動きが続いている」で据え置いています。
おそらく、調査時点では新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン変異株はまだ報じられていませんから、やや割り引いて考える必要がありそうな気もします。ただし、前月から横ばいながら、消費者態度指数のコンポーネントを見ると、雇用環境や収入が前月から改善を示しており、国民生活の基礎的な部分では悪くない印象です。ただ、それにしては暮らし向きが悪化しているのはやや不思議な気もします。いずれにせよ、消費者マインドはコロナ次第という面が強く、オミクロン株について情報が明らかになる来月の統計を見てみたい気がします。

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2021年12月 1日 (水)

業績回復に一服感見られる7-9月期の法人企業統計の先行きをどう考えるか?

本日、財務省から7~9月期の法人企業統計が公表されています。法人企業統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は+4.6%増の323兆5651億円、経常利益も+35.1%増の16兆7508億円、特に製造業は+71%増だったりします。そして、設備投資は+1.2%増の10兆9,276億円を記録しています。ただし、季節調整済みの系列で見ると、軒並み前期比マイナスを記録していて、特に、GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資については前期比▲2.6%減の10兆4857億円となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短かに引用すると以下の通りです。
7-9月の設備投資1.2%増、2期連続プラス 法人企業統計
財務省が1日発表した7~9月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)の設備投資は前年同期比1.2%増の10兆9276億円だった。プラスは2期連続。新型コロナウイルス禍による先行きの不透明感から、前年同期に企業が投資に慎重になった反動が出た。
前年同期比伸び率は4~6月期の5.3%から鈍化し、金額もコロナ感染拡大前の2019年7~9月期の水準(12兆826億円)は下回った。
業種別では製造業が0.9%増えた。金属製品は昨年からの反動増で71.7%増で、最も上昇に寄与した。ボイラーなど汎用機械は生産能力の増強に伴い91.5%増えた。非製造業は1.4%増。宿泊や飲食などサービス業が先送りしていた店舗の設備増強などをして24.2%増えた。電力など電気業は19.2%増だった。
全産業の経常利益は35.1%増の16兆7508億円で3期連続のプラスだった。製造業では通信機器や車載向け電子部品が伸びた情報通信機械や、半導体向け部材の需要が増えた化学が利益を押し上げた。非製造業では卸売業・小売業やサービス業が増えた。
売上高は4.6%増の323兆5651億円で2期連続の増加だった。輸送需要が膨らんだ運輸業・郵便業などで増えた一方、コロナ感染拡大による緊急事態宣言が9月末まで出ていた影響で小売業などがマイナスとなった。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上高と経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影を付けた部分は景気後退期となっています。今日のブログの最後のパラで取り上げているように、内閣府の景気動向指数研究会において2020年5月ないし4~6月期が第16循環の景気の谷に暫定的に設定されています。
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ということで、法人企業統計の結果を短く表現すると、企業活動や企業業績の回復は一服している、ということになろうかと思います。加えて、この一服感は7~9月期に関しては非製造業だけでなく、製造業でも広がっている点が特徴として上げられます。すなわち、4~6月期までは、世界の景気回復の恩恵を受ける製造業と首都圏や関西圏をはじめとする緊急事態宣言などの影響が強い非製造業の違いが大きかったのですが、製造業における半導体の部品供給制約などで自動車が減産に入ったため、製造業でも停滞感が出ているようです。引用した記事の季節調整していない原系列の前年同期比の計数とはかなり印象が異なりますが、いずれも季節調整済みの系列やその前期比で見て、売上高は製造業が▲1.1%減に対して、非製造業が▲0.1%減、ともに前期比マイナスを記録し、経常利益も製造業が▲8.2%減、非製造業も▲6.8%減となっています。ですから、製造業と非製造業を合算した全産業レベルで見て、経常利益水準は1~3月期に続いて、4~6月期も20兆円を超えていましたが、7~9月期には19.2兆円と、やや減少しています。ただし、減少したとはいえ、まだまだ利益水準はかなり高いと考えるべきあり、経常利益では景気後退局面入りする前の水準に企業活動水準は復活している点は見落とすべきではありません。さらに、設備投資も今年2021年1~3月期に続いて、4~6月期も2四半期連続の前期比プラスでしたが、7~9月期にはマイナスに転じています。これは、季節調整していない原系列の統計で評価した引用記事とはかなり印象が異なります。ただ、売上高・利益、あるいは、設備投資など、いずれの指標でも企業活動の水準の回復は一服しているように見えますが、先行きについては、自動車の部品供給制約も徐々に緩和するでしょうし、何よりも、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)感染拡大はかなりの程度に抑制されて、9月いっぱいで緊急事態宣言も解除されていますから、基本的には、製造業・非製造業ともに企業活動は回復軌道に戻るものと私は期待しています。もちろん、オミクロン株の脅威については十分な警戒が必要であることは当然です。
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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。見れば明らかなんですが、コロナ禍の中で労働分配率とともに設備投資/キャッシュフロー比率が大きく低下を示しています。他方で、ストック指標なので評価に注意が必要とはいえ、利益剰余金も伸び悩みが続いています。労働分配率が大きく低下していることから、賃金に回しているわけではなく、キャッシュフローほどには設備投資も伸びていない中、利益剰余金の伸び悩みはやや不思議な現象だと私は受け止めています。なお、本日の法人企業統計を受けて、来週12月8日に内閣府から7~9月期のGDP統計速報2次QEが公表される予定となっています。私は1次QEから設備投資を中心として小幅に下方修正されるであろうと考えています。2次QE予想については、また、日を改めて取り上げたいと思います。
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最後に、昨日11月30日に内閣府において景気動向指数研究会が開催され、「第16循環の景気の谷については、2020年5月と暫定的に設定」されています。上のグラフは景気動向指数のCI先行指数と一致指数を少し長期にプロットしています。

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