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2021年12月13日 (月)

12月調査の日銀短観では大企業非製造業の景況感が大きく改善!!!

本日、日銀から12月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査から横ばいの+18を示した一方で、大企業製造業では9月調査の+2から12月調査では+9に大きく改善しています。また、本年度2021年度の設備投資計画は9月調査から変化なく、全規模全産業で前年度比+7.9%の増加が見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業景況感、製造業横ばい 12月日銀短観
日銀が13日発表した12月調査の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はプラス18と、9月調査比で横ばいだった。新型コロナウイルスの感染者が減ったが、世界的な物流の混乱が続く中、エネルギー価格の上昇も重なり、コストが上昇した。大企業非製造業の業況判断DIはプラス9と、6期連続で改善した。緊急事態宣言が解除され、飲食などで客足が回復した。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値だ。12月調査の回答期間は11月10日~12月10日。コロナの変異型「オミクロン型」の感染の確認以前に届いた回答が多い。
大企業製造業の業況判断DI(プラス18)はQUICKが集計した市場予想の中央値とも同じ水準だった。コロナ禍の2020年6月にマイナス34まで大きく低下したあと、21年9月まで5四半期連続で改善を続けてきた。
12月調査では資源価格の上昇を背景に石油・石炭製品の業況が改善した。ただ、資源高はコスト上昇にもつながり、企業のマインドには逆風となる面もあった。世界的な物流停滞で、半導体など部材の調達に時間がかかっており、自動車やはん用機械は前回調査より業況が小幅悪化した。
大企業非製造業の業況DI(プラス9)は市場予想(プラス6)を上回った。東京都などの緊急事態宣言が9月末に解除され、外食の営業規制が段階的に解除された。感染者が抑えられる一方、コロナワクチンの接種も進み、接客業の需要が持ち直した。ただ、コロナ感染拡大前の19年12月(プラス20)と比べると、なお低い状況が続く。
業種別では宿泊・飲食サービスがマイナス50と、9月から24㌽改善した。対個人サービスも9月のマイナス45だったのが今回はマイナス9と、急回復した。
全規模全産業の業況判断DIはプラス2となり、コロナの感染拡大後で初めてプラスに浮上した。
2021年度の経常利益の計画は全規模全産業で前期比28.0%増と9月調査と比べ11.3㌽改善した。21年度の想定為替レートは1ドル=109円09銭で、9月調査(107円64銭)から円安方向に修正された。設備投資計画は前期比7.9%増と9月調査比から横ばいだった。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、昨日12月12日付けのこのブログでも日銀短観予想を取り上げ、ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIにせよ、設備投資計画にせよ、大きな変化はなさそうだが、非製造業は大きく改善する見込みとの結果をお示ししていたところです。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じく大企業製造業の業況判断DIが+18と前回9月調査から横ばいと報じられていて、ジャストミートした一方で、大企業非製造業では+6と予想されていましたので、実績の+9はやや上振れた印象です。もちろん、業種別にはバラツキが大きく、非製造業の中でも、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の緊急事態宣言解除を受けて、対個人サービスは9月調査から12月調査にかけて+36ポイントの大幅改善を示し、さらに、先行きでも+5ポイント改善の見込んでいます。しかし、まだ業況判断DIの水準は12月調査で▲9、先行きでも▲4と水面下だったりします。大企業製造業では、半導体などの部品調達の制約から、自動車が12月調査で▲1ポイントの低下を示しましたが、逆に、部品調達の制約緩和を見込んで先行き見通しは+10ポイントの大幅な改善を見込んでいます。大企業製造業・非製造業で、これら自動車と対個人サービス以外にもう少し詳しく産業別に景況判断DIを見ておくと、まず、特異な動きを示しているのが石油・石炭製品です。12月調査では+13ポイント改善の+31でしたが、先行きでは▲18ポイント悪化の+13が見込まれています。国際商品市況にける石油価格の動向を受けてのマインド変化ということになります。製造業では加えて非鉄金属が、12月調査で▲12ポイント悪化の+21の後、先行きもさらに▲3ポイント悪化して+18までプラス幅が縮小すると見込まれています。鉄鋼でも、12月調査で▲6ポイント悪化の+7の後、先行きではさらに▲5ポイント悪化して+2になると見込まれています。このあたりの素材産業は資源価格高騰の影響であろうと考えられます。非製造業では対個人サービスに加えて、宿泊・飲食サービスでも、12月調査で+2ポイント改善、先行きも+22ポイント改善と見込まれていますが、それでも、先行きで景況判断DIの水準はまだ▲28と低かったりします。しかし、これらのサービス業の景況感の改善は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大が抑制されていることに起因しますので、オミクロン変異株の動向次第では先行きは不透明です。

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続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。経済学的な生産関数のインプットとなる資本と労働の代理変数である設備と雇用人員については、方向としてはいずれも方向として不足感が広がる傾向にあります。DIの水準として、設備については、昨年2021年年央の+10くらいの過剰感はほぼほぼ解消され、不足感が広がる段階には達したといえます。他方、雇用人員についてはプラスに転ずることなく反転し、足元から目先では不足感が強まっている、ということになります。ただし、何度もこのブログで指摘しているように、賃金が上昇するという段階までの雇用人員の不足は生じていない、という点には注意が必要です。我が国人口がすでに減少過程にあるという事実が、かなり印象として強めに企業マインドに反映されている可能性があると私はと考えています。ですから、マインドだけに不足感があって、経済実態としてどこまでホントに人手が不足しているのかは、私には謎です。賃金がサッパリ上がらないからそう思えて仕方がありません。加えて、オミクロン変異株の動向に起因する不透明感は設備と雇用についても同様です。

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日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。日銀短観の設備投資計画のクセとして、3月調査時点ではまだ年度計画を決めている企業が少ないためか、3月にはマイナスか小さい伸び率で始まった後、6月調査で大きく上方修正され、景気がよければ、9月調査ではさらに上方修正され、さらに12月調査でも上方修正された後、その後は実績にかけて下方修正される、というのがあったんですが、今回公表の12月調査では9月調査から前記墓前産業で横ばいの7.9%増にとどまりました。すなわち、3月調査の設備投資計画が全規模全産業で+0.5%増のプラスで始まった後、6月調査では7.2%増に上方修正され、9月調査では+7.9%増に上方修正され、本日公表の12月調査でも7.9%増のままでした。また、大企業全産業の設備投資計画は+9.3%増と9月調査から下方修正され、しかも、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスの+9.5%増を下回りました。それほど大きな差ではありませんが、やや気にかかるところです。ただし、人手不足もあって、設備投資は基本的に底堅いと考えていますが、最後の着地点がどうなるか、これまた、オミクロン変異株の動向と合わせて不透明です。

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日銀短観を離れて、本日は、内閣府から機械受注が公表されています。民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+3.8%増の8708億円となり、3か月ぶりのプラスを記録しています。グラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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