2021年7-9月期GDP統計2次QEの予想やいかに?
先週の法人企業統計をはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、明後日水曜日の12月8日に7~9月期GDP統計速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。ということで、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。9月末まで首都圏や関西圏などに4回目の緊急事態宣言が出ていて消費が冷え込んだ上に、半導体不足などの供給制約を背景に自動車をはじめとして輸出が減少しており、これらの影響が気にかかるところです。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の10~12月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。ただし、いつもの通り、2次QEですので法人企業統計のオマケのような扱いをしているシンクタンクがほとんどです。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の動向は、新たなオミクロン変異株の出現もあって、何とも先行き不透明であることはいうまでもありません。特に、みずほリサーチ&テクノロジーズのリポートでは一定のスペースを使って10~12月期の見通しを詳述しているのですが、ここでは少し短めにカットしてあります。加えて、第一生命経済研のリポートにあるように、季節調整の撹乱要因もありそうです。これらも含めて、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
内閣府1次QE | ▲0.8% (▲3.0%) | n.a. |
日本総研 | ▲0.5% (▲2.2%) | 7~9月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資の減少幅が縮小する見込み。その結果、成長率は前期比年率▲2.2%(前期比▲0.5%)と、1次QE(前期比年率▲3.0%、前期比▲0.8%)から上方修正される見込み。 |
大和総研 | ▲0.8% (▲3.1%) | 7-9月期GDP2次速報(12月8日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率▲3.1%と、1次速報(同▲3.0%)から僅かに下方修正されると予想する)。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | ▲0.7% (▲2.8%) | 10~12月期、1~3月期の日本経済は、個人消費を中心に高成長が続くと予測している(現時点では、10~12月期は前期比年率7%程度の成長を見込んでいる)。欧米と比較してワクチン接種の出だしが遅れたことで、7~9月期の日本経済は感染再拡大に伴う弱さが目立ったが、逆に10~12月期以降は欧州などで感染が再拡大する中で日本経済の回復が際立つ構図になるだろう。12~19歳の1回目接種率が70%を超過するなど、日本は若年層を含め年齢による接種率の差が小さいことが足元で感染再拡大を抑制する一因になっていると考えられる。加えて、日本では感染防止効果が高いmRNAワクチン(ファイザー、モデルナ)の使用割合がほぼ100%であり、感染が再拡大している欧州や韓国では70~80%にとどまっていることとの違いが表れているとみられる。 |
ニッセイ基礎研 | ▲0.8% (▲3.3%) | 12/8公表予定の21年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.8%(前期比年率▲3.3%)となり、1 次速報の前期比▲0.8%(前期比年率▲3.0%)から若干下方修正されると予想する。 |
第一生命経済研 | ▲0.7% (▲2.6%) | 今回の2次速報より、季節調整におけるダミー変数の変更が行われることとなっており、これが攪乱要因となる見込みである。新型コロナウイルスによるGDPの大きな変動が季節調整を歪ませることを回避することを目的として、2020年1-3月期以降、ほとんどの需要項目で異常値処理のダミー変数が設定され続けてきた。このことは妥当な対応だったと思われるが、内閣府は、時間の経過によりデータが蓄積されたことから、今回改めてこの異常値処理について精査を行い、ダミーを設定する需要項目、期間等について再検討を行った。こうして新たに設定されたダミー変数を用いることで、季節調整値は遡及改定されることになる。 特にこの影響を受けるのが設備投資であり、7-9月期については季節調整の技術的な影響でかなり押し上げられることになる。本日公表された法人企業統計の結果を反映すれば、本来であれば1次速報から下方修正されるはずだったが、この季節調整の影響で、設備投資はむしろ上方修正される形になる可能性が高い。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | ▲0.4% (▲1.5%) | 2021年7~9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比-0.4%と1次速報値の同-0.8%から上方に修正される見込みであるが、夏場の景気が厳しかったとの評価自体に変化はないであろう(年率換算では-3.0%から-1.5%に上方修正)。なお、今回の発表においては、通常の1次速報から2次速報への改定に加え、2020年度の年次推計の発表に伴う改定も加わる予定であるが、それによって過去の景気判断が大幅に修正されることもない見込みである。 |
三菱総研 | ▲0.7% (▲2.7%) | 2021年7-9月期の実質GDP成長率は、季調済前期比▲0.7%(年率▲2.7%)と、1次速報値(同▲0.8%(年率▲3.0%))から小幅上方修正を予測する。 |
基本的に、私は今回の7~9月期2次QEは、季節調整の撹乱要因について考慮しなければ、わずかながら1次QEから下方改定であると考えています。ですから、過去の数字ながら、東京オリンピック・パラリンピックが開催されていたとはいえ、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)感染拡大に対応した緊急事態宣言下で消費が大きくスローダウンしたことは事実ですし、景気に関する見方を変更する必要はまったくありません。そして、逆に、10~12月期は緊急事態宣言が解除され、COVID-19の感染拡大もかなり下火になったことから、オミクロン変異株の動向は極めて不透明ながら、一定のリバウンドは見られたものと考えています。大雑把ながら、年率+5%を越える成長率を記録したものと私は予想しています。欧米においてCOVID-19の感染が拡大した一方で、我が国では感染拡大がかなり抑制されていた実感があります。ただし、としえ家1~3月以降はまったくもってオミクロン株次第、ということになりそうです。エコノミストとして予想の限りではありません。
最後に、下のグラフはみずほリサーチ&テクノロジーズのリポートから引用しています。
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