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2021年12月 8日 (水)

下方修正された7-9月期GDP統計2次QEと景気ウォッチャーと経常収支をどう見るか?

本日、内閣府から今年2021年4~6月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は▲0.9%、年率では▲3.6%と、1次QEから下方修正されています。足元では新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大は抑制されていますが、新たなオミクロン変異株の動向など、先行きはまだ不透明感が残ります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月GDP、3.6%減に下方修正 実質年率改定値
内閣府が8日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質で前期比0.9%減、年率3.6%減だった。11月に公表した速報値(前期比0.8%減、年率3.0%減)から下方修正した。2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大下で取り入れていた暫定的な季節調整の処理方法を見直したため、個人消費や民間在庫などが下振れした。
マイナス成長は2期ぶり。内閣府はコロナ感染が拡大し始めた20年1~3月期以降、その影響を捉えるために従来とは異なる方法で季節調整をかけてきた。コロナ禍を経てデータが蓄積されたため、7~9月期の改定値から新たな方法で算出した。
内需の柱である個人消費は前期比1.3%減で、速報値(1.1%減)から下振れした。緊急事態宣言による外出自粛の影響で、消費は冷え込んだ。政府消費は1.0%増で、速報値(1.1%増)から下方修正した。
設備投資や民間在庫変動には、財務省が1日に発表した7~9月期の法人企業統計の数字を反映させた。設備投資は前期比2.3%減で、速報値(3.8%減)からマイナス幅が縮小した。民間在庫変動のGDP押し上げ効果は速報段階は0.3ポイントだったが0.1ポイントとなった。
7~9月期の年額換算の実質GDPは532兆円で、速報段階の534兆円から2兆円減った。20年度の実質成長率はこれまでのマイナス4.4%からマイナス4.5%に落ち込んだ。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2020/7-92020/10-122021/1-32021/4-62021/7-9
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+5.1+2.3▲0.7+0.5▲0.8▲0.9
民間消費+5.0+2.3▲1.1+0.6▲1.1▲1.3
民間住宅▲4.8+0.0+0.9+1.0▲2.6▲1.6
民間設備▲0.4+1.2+0.4+2.0▲3.8▲2.3
民間在庫 *(▲0.5)(▲0.2)(+0.1)(+0.0)(+0.3)(+0.1)
公的需要+2.0+0.7▲0.8+0.0+0.6+0.4
内需寄与度 *(+2.6)(+1.4)(▲0.6)(+0.7)(▲0.9)(▲0.9)
外需寄与度 *(+2.5)(+0.9)(▲0.1)(▲0.2)(+0.1)(+0.0)
輸出+8.7+11.1+2.3+2.5▲2.1▲0.9
輸入▲6.7+5.0+3.2+3.9▲2.7▲1.0
国内総所得 (GDI)+5.0+2.3▲1.3+0.0▲1.4▲1.5
国民総所得 (GNI)+5.0+2.4▲1.2+0.1▲1.4▲1.5
名目GDP+5.1+1.8▲0.7+0.1▲0.6▲1.0
雇用者報酬+0.6+1.5+1.5+0.3+0.1▲0.4
GDPデフレータ+1.1+0.2▲0.1▲1.1▲1.1▲1.2
内需デフレータ+0.1▲0.7▲0.5+0.3+0.6+0.5

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された今年2021年7~9月期の最新データでは、前期比成長率がマイナス成長を示し、GDPのコンポーネントのうち赤の消費と水色の設備投資のマイナス寄与が大きくなっています。

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先月公表の1次QEから大きな景気認識の変化はありませんが、テーブルを作っていて、数字としてはかなり大幅な変更があったことを実感しました。第1に、今年2021年1~3月期までのデータが確報公表に伴って速報値から年次推計値に改定されたことに加え、第2に、季節調整におけるダミー変数が変更されたことによります。前者は毎年例年通りの改定なのですが、後者については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるGDPの大きな変動が季節調整を歪ませることを回避するため、昨年2020年1~3月期以降、ほとんどの需要項目で異常値処理のダミー変数が設定されています。私自身は止むを得ない、というか、むしろ、適切な対応だったと考えていますが、データの蓄積に従ってCOVID-19に起因する異常値処理について精査を行い、ダミーを設定する需要項目、期間等について新たなダミーを用いることとなって、季節調整値を遡及改定したことが少し改定幅を撹乱している気がします。しかし、いずれにせよ、7~9月期については、東京オリンピック・パラリンピックを強行開催したことに伴ってCOVID-19の感染拡大を招き、結果として緊急事態宣言に追い込まれたために消費が大きく減少し、加えて、半導体などの部品調達難から自動車生産が減産したことがマイナス成長の要因です。ただ、先行きに関しては、少なくとも足元の10~12月期はかなりの高成長で、ひょっとしたら年率+10%成長くらいのリバウンドを見せる可能性が十分あると私は見込んでいます。ただし、年明け2022年1月からはオミクロン変異株の国内感染拡大がどこまで進むか、に大きく依存します。何とも、エコノミストには見通しがたく感じています。

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GDP統計のほか、本日、内閣府から11月の景気ウォッチャーが、また、財務省から10月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.8ポイント上昇の56.3となった一方で、先行き判断DIは▲4.1ポイント低下の53.4を記録しています。先行きのマインド悪化の要因として、内閣府ではコスト上昇懸念とCOVID-19のオミクロン変異株を上げています。経常収支は、季節調整済みの系列で+1兆259億円と10月の+7627億円を上回る黒字を計上しています。いつものグラフだけ、上の通り示しておきます。上のパネルの景気ウォッチャーのグラフでは、現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影を付けた部分は景気後退期を示しています。下の経常収支のグラフでは、青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。いずれも季節調整済みの系列をプロットしています。

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