基調判断が上方修正された12月統計の機械受注の先行きをどう見るか?
本日、内閣府から昨年2021年11月の機械受注が公表されています。民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+3.4%増の9003億円となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインについて報じた記事を手短に引用すると以下の通りです。
21年11月の機械受注、前月比3.4%増 市場予想は1.4%増
内閣府が17日発表した2021年11月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比3.4%増の9003億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1.4%増だった。
製造業は12.9%増、非製造業は0.8%減だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は11.6%増だった。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」とした。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
コンパクトながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

引用した記事には「QUICKがまとめた民間予測の中央値は1.4%増だった」とありますが、私の確認したところでは、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て、前月比で+1.3%の増加の見通しでした。従って、実績の+3.4%増は、レンジの上限の+6.8%増の範囲内とはいえ、かなり上振れた印象があります。それもあって、また、季節調整済みの前月比増減で見て、昨年2021年8月統計では▲2.4%減、9月▲0.0%減から、10月統計で+3.8%増、そして本日公表の11月統計で+3.4%増ですから、統計作成官庁である内閣府では、基調判断を昨年2021年10月の「持ち直しの動きに足踏みがみられる」から、11月統計では「持ち直しの動きがみられる」に半ノッチ上方改定しています。伸び率だけではなく、コア機械受注の水準も9003億円と、2019年11月の9102億円以来の受注額であり、2年ぶりにコロナ以前の受注水準に戻ったといえます。ただし、多少なりとも、海外からの外需の受注のある製造業と国内景気に依存する割合の高い非製造業で違いが際立っており、製造業が前月比+12.9%増であるのに対して、非製造業は▲0.8%減を記録しています。もっとも、これは10月統計の製造業▲15.4%減、非製造業+16.5%増の反動という面もあります。特に、非製造業のうちの運輸業・郵便業が10月統計で+170.1%の大きな増加を示した後、11月統計ではその反動もあって▲58.6%減となった影響が大きく現れています。
すべての経済の先行きは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)、特にオミクロン変異株の動向次第なのですが、先行指標である機械受注に現れる設備投資の動向については、私は世界経済や日本経済の拡大に従って、緩やかな回復基調に向かうものと考えています。ただ、繰り返しになりますが、コロナ次第である点は注意が必要です。
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