4か月連続で改善を見せた景気ウォッチャーはオミクロン株の感染拡大前の過去の数字か?
本日、内閣府から昨年2021年12月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2021年11月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.1ポイント上昇の56.4と小幅に改善した一方で、先行き判断DIは▲4.0ポイントと大きく低下しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列で+8973億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を手短に、日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
21年12月の街角景気、現状判断指数は4カ月連続改善
内閣府が12日発表した2021年12月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は56.4で、前の月に比べて0.1ポイント上昇(改善)した。改善は4カ月連続。家計動向、雇用が改善した。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は49.4で、4.0ポイント低下した。低下は2カ月連続。家計動向、企業動向、雇用が悪化した。
内閣府は現状の基調判断を「持ち直している」で据え置いた。
21年11月の経常収支、8973億円の黒字 民間予測は5850億円の黒字
財務省が12日発表した2021年11月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は8973億円の黒字だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は5850億円の黒字だった。
貿易収支は4313億円の赤字、第1次所得収支は1兆7907億円の黒字だった。
短いながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

ということで、景気ウォッチャーは現状判断DIが小幅ながらも4か月連続で上昇を示した一方で、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン株の感染拡大などを背景に、先行き判断DIは大きく低下をしています。現状判断DIの小幅改善も、先行き判断DIの低下も、すべての要因は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的影響に基づくマインドの変化と考えるべきです。現状判断DIの前月差で見ても、昨年2021年12月統計では小売関連はなんとかプラスながらも、飲食関連では早くもマイナスを記録しており、先行き判断DIでは小売関連、飲食関連、サービス関連、住宅関連と、すべての家計動向関連が前月から低下しています。現状判断DIが前月差でプラスであるため、統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「新型コロナの影響は残るものの、持ち直している」としていますが、「持ち直し」の基調判断は風前の灯といえます。いずれにせよ、いつもの私の考えですが、経済の先行き見通しは完全にCOVID-19のオミクロン株の感染拡大次第となりました。唯一、明るい見方を提供しているのは雇用関連であり、人口動態に伴って人手不足が根強く残っている点は、家計の所得を下支えする可能性があります。他方で、先行き判断DIが50を下回ったのは、やや古いDIの見方かもしれませんが、景気の転換点を示唆するわけですので、やや気がかりではあります。ともかく、以前の安倍政権と菅政権は検査体制を含めて医療体制の整備にはほとんど関心を示さず、感染拡大に従って緊急事態宣言が出て、感染減少に伴って緊急事態宣言が解除される、古いタイプの Stop and Go 政策の繰り返しでしたが、現在の岸田内閣には、PCR検査の拡充も含めて、何とか抜本的な医療体制整備を図ってほしいと私は期待しています。

続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも+6000億円近い経常黒字となっており、ほぼほぼ実績にジャストミートしました。季節調整済みの系列で見て、貿易収支は昨年2021年8~10月の3か月連続で赤字を記録していましたが、11月統計では小幅ながら黒字に戻っています。自動車生産の正常化に伴う動きであろうと私は受け止めています。ただし、ここでも、対外収支に大きな影響を及ぼす世界経済と国内経済の先行きはCOVID-19次第ということかもしれません。
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