グレート・ギャッツビー曲線と日本の親ガチャの現状やいかに?
グレート・ギャッツビー曲線というのがあります。横軸に不平等をジニ係数で取って、縦軸に世代間の所得の移動可能性の低さを取ってプロットします。カナダのオタワ大学のCorak教授が最初に提唱したのだと思いますが、そのCorak教授が開設している Economics for public policy のサイトから引用すると以下のグラフです。
博士前期課程の大学院生を対象にした今学期の経済政策の授業で、私は教育政策を取り上げて、その参考としてこのグレート・ギャッツビー曲線についても簡単に解説しておきました。こういった所得格差、あるいは、貧困を世代間で継承してしまわないために教育が重要です、というわけです。その際には、このCorak教授のグラフではなく、まあ、何と言いましょうかで、より広く知れ渡っている米国大統領経済諮問委員会による「大統領経済報告2012」の p.177 Figure 6-7 The Great Gatsby Curve: Inequality and Intergenerational Mobility を示しておきました。国のカバレッジが少し違いますし、ベース年が違うかもしれませんが、基本的に同じです。すなわち、ジニ係数で代理した所得の不平等の度合いの高さと、世代をまたいだ不平等や貧困の継承のされにくさ、の間には正の相関がある、という結論です。どちらが原因で、どちらが結果かについては問いませんが、通常の高校で習う関数型である y=f(x) の即していえば、横軸の所得の不平等が縦軸の世代間の移動性を決めている、と暗黙裡に考えられています。上のグラフでいえば、左下にある日本は、ドイツや北欧諸国などとともに、所得の不平等の度合いが低くて、同時に、世代間での移動性も高い、といえます。そして、赤いラインに沿って右上に行くほど、所得が不平等で、それが世代をまたいで継承=「相続」されてしまう、ということになります。
振り返って、ホントに日本はそうか、というと、昨年2021年の新語・流行語大賞のトップテンに「親ガチャ」が入っています。「ガチャガチャで出てくるアイテムのように親を自分で選べないことで、親が当たりだったりはずれだったりすることをひと言で表現したことば」と説明されています。誰かがツイッタでつぶやいていたのですが、中央教育審議会初等中等教育分科会(第134回)会議資料の中で、資料3 東京大学大学院教授 中村先生・早稲田大学准教授 松岡先生・オックスフォード大学教授 苅谷先生発表資料がまさに、親ガチャでいっぱいです。資料のタイトルは「臨時休業時における児童生徒・保護者の対応 -家庭・学校間の格差に注目して-」となっていて、家庭を「両親とも大卒」、「両親いずれか大卒」、「両親とも非大卒」、「シングルマザー大卒」、「シングルマザー非大卒」、「シングルファーザー」と「その他」の7つのカテゴリーに分類し、休校期間中の学習状況や休校期間中の学習形態などが分析されています。結論として最終ページの分析結果のまとめでは、「宿題や何をすべきか明確な枠付けをしているプリント学習では、相対的に差は目立たなくなる」一方で、「非大卒層の子供が特に家庭学習上の課題を抱えている傾向」があり、「休校期間中の家庭学習にも家庭間格差が連動」している、と指摘されています。諸外国と比較すれば、日本はグレート・ギャッツビー曲線の左下に位置するのかもしれませんが、それでも、家庭間格差は教育にも反映されることから、世代をまたいで継承されてしまう面が決して小さくない、と私は受止めました。
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