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2022年1月14日 (金)

企業物価指数(PPI)の上昇はいつまで続くのか?

本日、日銀から昨年2021年12月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+8.5%まで上昇幅が拡大しました。まず、日経新聞のサイトから記事をやや長めに引用すると以下の通りです。

12月の企業物価、8.5%上昇 1980年以来の高水準続く
日銀が14日発表した2021年12月の企業物価指数は前年同月比で8.5%上昇した。伸び率は11月の9.2%から小幅に鈍化したものの、オイルショックの影響があった1980年12月(10.4%)以来の歴史的な高水準で推移している。原油など資源価格の高騰や円安で原材料にかかる輸入品の値上がりが顕著だ。新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の影響で供給制約が長引けば、物価上昇圧力をさらに強める可能性もある。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。QUICKがまとめた市場予測の中心値(8.8%)を下回った。21年春以降は物価上昇のペースが加速し、前年を上回るのは10カ月連続だ。11月の伸び率は速報値の9.0%から9.2%に上方修正された。21年(暦年)の企業物価指数は前年比4.8%上昇し、日銀の長期データによると80年(15.0%)以来の高水準となった。
21年12月の指数を品目別にみると、ガソリンや灯油などの石油・石炭製品、木材・木製品、鉄鋼の上昇が目立った。特に木材・木製品の上昇率は前年同月比で61.3%、石油・石炭製品は36.6%と2桁台の大幅な伸びが続いた。原油先物相場は12月に一服したものの高水準で推移しており、鉄鋼や電力・都市ガスなどでも資源価格の上昇を転嫁する動きが広がる。
円安の影響も大きい。輸入物価の上昇率は円ベースで41.9%と2カ月連続で40%を超え、80年6月(46.6%)以来の高い水準が続く。ドルなどの契約通貨ベースでは33.3%の上昇で、円換算した輸入品の値上がりが顕著になっている。輸出物価は円ベースで13.5%の上昇だった。
日銀が公表している744品目のうち、前年同月比で上昇したのは487品目と全体の65%を占めた。下落の179品目を大幅に上回った。物価上昇の波は家計への影響が大きい飲食料品など幅広い分野に広がってきている。
自動車産業などではコロナ禍で強まっていた部品調達の供給制約が次第に解消されつつある。ただ、足元では新たな変異型「オミクロン型」の流行が国内外に広がり、再び供給制約の影響が強まる恐れもある。国内経済のけん引役である輸出や生産の回復に水を差しかねず、原材料コストの上昇だけが先行すれば企業収益を圧迫する懸念もある。

とてもコンパクトに取りまとめられています。続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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このところ、欧米をはじめとして世界的にはインフレが高まっています。米国では昨年2021年12月の消費者物価上昇率が+7.0%に達した、と昨日の日経新聞の記事で見たばかりだったりしますし、日本ではまだまだ本格的にデフレから脱却した、とまでは言い切れない物価状況ながら、消費者物価指数(CPI)で見ても、本日公表の企業物価指数(PPI)で見ても、いずれも、足元で物価が下げ止まり、ないし、上昇しつつあると私は評価しています。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスではPPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比で+8.8%の上昇と予想されていましたから、実績の+8.5%にほぼジャストミートしています。要因は主として2点あり、いずれもコストプッシュです。すなわち、国際商品市況の石油価格をはじめとする資源価格の上昇、さらに、オミクロン型の変異株を含む新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大による供給制約です。とはいえ、あくまで我が国に限った考えかもしれませんが、物価の上昇そのものは本格的なデフレ脱却には好条件を提供している可能性があります。コストプッシュなのですから、粛々と製品価格に転嫁する企業行動がデフレ脱却につながる可能性です。もっとも、日本では企業規模格差に伴って、下請中小企業が大企業に対して価格引上げを要求しにくいという面は無視できませんし、合わせて、国際商品市況における資源価格の動きが一巡すれば上昇率で計測した物価も元に戻ることは覚悟せねばなりません。
ということで、国内物価について品目別で前年同月比を少し詳しく見ると、木材・木製品が+61.3%、石油・石炭製品が+36.6%、非鉄金属が+26.9%、鉄鋼+25.5%、化学製品+13.5%までが2ケタ上昇となっています。ただし、これら品目の価格上昇の背景にある原油価格について、企業物価指数(PPI)の中の輸入物価の円建て指数で見ると、昨年2021年11月の143.0をピークに、12月には141.7に小幅ながら低下しています。前年同月比上昇率で見ても、11月+116.0%、12月+100.4%と上昇率がホンの少しながら落ちているのも事実です。私はこの方面に詳しくないものですから、いつものように、日本総研のリポート「原油市場展望」とか、みずほ証券のリポート「マーケット・フォーカス」とかを見ているんですが、石油価格は高値圏での推移が見込まれているようです。もちろん、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染拡大次第ではありますが、前年同月比上昇率で見ればピークアウトに向かっている動きに大きな変わりはない可能性が大きい、と私は楽観しています。ただ、石油価格は伝統的に米ドル建ての取引であり、石油価格の上昇が米国のインフレ、すなわち、米ドルの貨幣価値の低下を招けば、それがまた、石油価格の上昇につながる、という形でインフレ・スパイラルを生じる可能性には注意が必要かもしれません。

問題は今日発表された企業物価指数(PPI)の上昇が消費者物価(CPI)に波及した場合の対応です。例えば、ということで、国民生活が苦しくなるのを無視して、政府や労働組合が企業のコストアップに対応するために賃金抑制に協力するがごとき対応をするなら、日本では本格的なデフレ脱却が遠のくことになります。企業がコストアップを製品価格に転嫁するのであれば、労働者の側でもそれに見合う賃金上昇を要求すべきです。そして、国民の中の物価に対する期待を変化させることができれば、日本経済はさらに本格的なデフレ脱却に近づくと私は考えています。

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