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2022年1月31日 (月)

減産を記録した鉱工業生産指数(IIP)と底堅い商業販売統計と大きく低下した消費者態度指数を考える!!!

本日、経済産業省から昨年2021年12月の鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、それぞれ公表されています。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲1.0%の減産でした。減産は3か月ぶりです。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.4%増の14兆6560億円、とコチラは3か月連続の増加を示した一方で、季節調整済み指数では前月から▲1.0%減を記録しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を手短かに引用すると以下の通りです。

21年12月の鉱工業生産、前月比1.0%低下 1月予測は5.2%上昇
経済産業省が31日発表した2021年12月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は、前月比1.0%低下の96.5だった。低下は3カ月ぶり。生産の基調判断は「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。QUICKがまとめた民間予測の中央値は前月比1.0%低下だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査では1月が5.2%上昇、2月は2.2%上昇を見込んでいる。
21年12月の小売販売額、1.4%増
経済産業省が31日発表した2021年12月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比1.4%増の14兆6560億円だった。増加は3カ月連続。季節調整済みの前月比は1.0%減だった。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が1.7%増の2兆1389億円だった。既存店ベースでは1.4%増だった。
コンビニエンスストアの販売額は3.8%増の1兆596億円だった。

いずれもとてもコンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、前月と比べて▲1.0%の減産という予想でしたので、まさにジャストミートしました。加えて、減産の要因がまたまた部品調達の停滞や物流の逼迫ということですし、足元の1~2月については、製造工業生産予測指数で見て、それぞれ、+5.2%、+2.2%の増産を予測していることから、統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いています。基本的に、広く報じられているように、昨年2021年12月の減産は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株のアジアなどにおける感染拡大により、部品の供給制約、あるいは、物流の停滞などによる減産に起因しています。中でも、汎用・業務用機械工業は前月比で▲4.9%の減産とマイナス寄与がもっとも大きくなっています。これに次ぐのが生産用機械工業の▲3.2%減です。ただ、少し前まで半導体部品の供給制約が最も厳しかった自動車工業は、すでに供給制約が緩和されたのか+1.5%の増産を記録しています。今後の生産の行方はCOVID-19の感染拡大、そして、これに伴うグローバルなサプライチェーンにおける部品供給や物流の停滞次第次第という面はありますが、大雑把には、内需に依存する部分の大きい非製造業とは違って、世界経済の回復とともに製造業の生産は緩やかに回復の方向にあるのは間違いないと私も考えていますが、それほど単純な道のりではない、と考えるべきです。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。前のIIPのグラフと同じで、影を付けた部分は景気後退期を示しています。繰り返しになりますが、通常、この統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で見ています。ですから、昨年2021年12月統計における季節調整済み指数の前月比はマイナスなのですが、経済産業省のリポートでは、季節調整済み指数の後方3か月移動平均で基調判断を示しているようで、12月の移動平均指数は前月から+0.4%の上昇と試算しています。従って、基調判断は12月までのトレンドで「持ち直しの動きがみられる小売業販売」としいています。ただし、いつもの注意点ですが、2点指摘しておきたいと思います。第1に、商用販売統計は物販が主であり、サービスは含まれていないことから、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的影響は過小評価されている可能性が十分あります。すなわち、飲食や宿泊のような対人接触型のサービスがCOVID-19の感染拡大で受けるネガティブな影響は、商業販売統計には十分には現れていない、と考えるべきです。第2に、商業販売統計は名目値で計測されていますので、物価上昇があれば販売額の上昇という結果になります。現在、日本では大きなインフレは認識されていませんが、世界では石油などの資源価格の上昇をはじめとする供給要因と世界的な景気の持ち直しによる需要要因とで、物価の上昇が始まっており、米国では中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FED)が3月の利上げを示唆したりしている段階です。我が国でも、小売販売額の前年同月比を業種別に詳しく見ると、燃料小売業が昨年2021年10月+25.8%増、11月+28.9%増、12月+23.3%増と突出して販売額を伸ばしていますが、売上数量が伸びているというよりも、販売単価、すなわちインフレ部分が大きいのではないかと私は想像しています。これら2点を考え合わせると、実際の日本経済の現状についてはこの統計よりも悲観的に見る必要が十分ある、と私は考えています。

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最後に、本日、内閣府から1月の消費者態度指数が公表されています。前月から▲2.4ポイント低下の36.7を記録しています。雇用環境を中心に、かなり大きな低下であり、当然、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染拡大により消費者心理が冷え込んだと考えるべきです。従って、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きが続いている」から「足踏みがみられる」に下方修正しています。上のグラフは消費者態度指数をプロットしているのですが、ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期です。

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