国際通貨基金(IMF)「世界経済見通し改定」は成長率見通しを下方改定!!!
昨日1月25日国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update が公表されています。副題は Rising Caseloads, A Disrupted Recovery, and Higher Inflation ですから、「感染拡大、景気停滞、高インフレ」と3つのネガ要因を上げています。まず、IMFのサイトから成長率見通しの総括表を引用すると以下の通りです。
世界経済の成長率は、昨年2021年の+5.9%から今年2022年には+4.4%まで減速するとの見通しが示されています。しかも、昨年2021年10月の「世界経済見通し」で示された2022年成長率見通しから▲0.5%ポイントの下方改定となっています。国別に見れば、G2、すなわち、米中2国の成長率見通しの引下げが大きな要因となっています。IMFからpdfの全文リポートもアップロードされていますが、取りあえず、お手軽ながら、IMF Blogのサイトからいくつか、特に、副題に示された3つの要因から、感染拡大はまあ別として、景気停滞と高インフレのグラフを示しておきたいと思います。
ということで、上のグラフはIMF Blogのサイトから A Disrupted Global Recovery を引用していますが、▲0.5%ポイントの下方改定のうち、▲0.2%ポイント強が米国、▲0.2%弱が中国、そして、残りの▲0.1%ポイント程度がその他の各国の要因に分解されていることが示されています。なお、リポート p.5 Table 1. Overview of the World Economic Outlook Projections の詳細テーブルを見ると、世界経済全体の今年2022年成長率見通しは、繰り返しになりますが、直近の昨年2021年10月時点から▲0.5%ポイントの下方改定となっていて、先進国では▲0.6%ポイント、新興国・途上国では▲0.3%ポイントとなっています。上のグラフに示された寄与度ではなく、成長率そのものの下方改定幅として、米国▲1.2%ポイント、中国▲0.8%ポイント、ブラジル・メキシコがともに▲1.2%ポイント、などとなっています。テーブルに示された先進国の中で、なぜか日本だけは上方改定されており、昨年2021年10月時点から+0.1%ポイント上振れています。日本の2022年見通しについては特に言及はありませんが、来年2023年については、"Japan's 2023 growth outlook is also revised up by 0.4 percentage point, reflecting anticipated improvements in external demand and continued fiscal support." (リポート p.4) と、来年2023年は外需と財政支援による成長率上振れと分析しています。
続いて、インフレについて上のグラフは、リポート p.3 Figure 1. Change in Inflation, December 2020 - Latest を引用しています。まだ、消費者物価指数(CPI)上昇率が+1%にも達しない日本には関連薄いインフレなのですが、かなりの程度にエネルギー価格からの波及との分析結果が示されています。なお、緑色のその他の部分について、リポート p.2 では、"ongoing supply chain disruptions, clogged ports, land-side constraints, and high demand for goods have also led to broadening price pressures" と、サプライチェーンの混乱、港湾と陸上の輸送の制約といった供給サイドとともに、需要面の要因も指摘しています。加えて、p.8 では "there is a risk that persistently elevated living costs and tighter labor markets will compel workers to ask for (and firms to accede to) higher wages" とのリスクが指摘されており、人手不足の影響も視野に入っていると私は理解しています。

最後に、IMF「世界経済見通し」から目を国内の経済指標に転じると、本日、日銀から昨年2021年12月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+1.1%を記録し、変動の大きな国際運輸を除く平均も+0.8%の上昇を示しています。国際商品市況における石油価格の上昇などがジワジワと波及している印象です。グラフは上の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。いずれも、影を付けた部分は景気後退期を示しています。
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