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2022年2月17日 (木)

大きな貿易赤字を記録した1月の貿易統計と基調判断が上方改定された12月の機械受注をどう見るか?

本日、財務省から1月の貿易統計が、また、内閣府から昨年2021年12月の機械受注が、それぞれ公表されています。統計のヘッドラインは、まず、貿易統計では、季節調整していない原系列で見て、輸出額が前年同月比+9.6%増の6兆3320億円、輸入額も+39.6%増の8兆5231億円、差引き貿易収支は▲2兆1911億円の赤字となり、6か月連続で貿易赤字を計上しています。機械受注では、民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+3.6%増の9324億円となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインについて報じた記事を引用すると以下の通りです。

1月の貿易収支、2兆1911億円の赤字
財務省が17日発表した1月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆1911億円の赤字だった。赤字は6カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆6069億円の赤字だった。
輸出額は前年同月比9.6%増の6兆3320億円、輸入額は39.6%増の8兆5231億円だった。中国向け輸出額は5.4%減、輸入額は23.7%増だった。
機械受注、21年12月3.6%増 市場予想は1.3%減
内閣府が17日発表した2021年12月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比3.6%増の9324億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1.3%減だった。
製造業は8.0%増、非製造業は0.1%減だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は5.1%増だった。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直している」に変更した。
同時に発表した10~12月期の四半期ベースでは前期比6.5%増だった。1~3月期は前期比1.1%減の見通し。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。

いつもながら、コンパクトかつ包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、▲1.5兆円を超える貿易赤字が見込まれていたものの、予想レンジの最大の貿易赤字としては▲1兆8700億円でしたので、実績の▲2兆円超えの貿易赤字はややサプライズという印象です。季節調整していない原系列の統計で見て、貿易赤字は昨年2021年8月から今年2022年1月までの6か月連続なんですが、上のグラフに見られるように、季節調整済みの系列の貿易赤字は昨年2021年6月から始まっていて、したがって、8か月連続となります。季節調整していない原系列の貿易赤字は▲2兆1911億円なのですが、季節調整済みの系列では▲9326億円と、▲1兆円にも達していません。私の主張は従来通りであり、輸入は国内生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易赤字や経常赤字はそれほど悲観する必要はない、と考えています。少なくとも、1月の貿易赤字を品目別に見て、輸出では物流と部品供給の制約から自動車の輸出がやや停滞しています。すなわち、前年同月比で見て数量ベースで▲11.7%減、金額ベースで▲1.0%減となっています。輸入では、まず、国際商品市況での石油価格の上昇から原油及び粗油の輸入が大きく増加しています。これも前年同月比で見て数量ベースで+4.7%増に過ぎないにもかかわらず、金額ベースで+84.6%増に上っています。加えて、ワクチンを含む医薬品が急増しています。すなわち、前年同月比で見て数量ベースで+27.5%増、金額ベースで+44.0%増を記録しています。私の直感ながら、少なくとも、貿易赤字を抑制するために、ワクチン輸入を制限しようという意見は極めて少数派ではないかと考えられます。国別では中国からの輸入が急増しています。前年同月比で+23.7%増です。これは、中華圏が2月1日から春節の休暇に入るため、その前の段階で在庫確保に努めた結果であると考えるべきであり、これも経済合理的な行動です。
繰り返しになりますが、1月の貿易統計では、輸出が前年同月比+9.6%増であった一方で、輸入は+39.6%増であり、石油やワクチンの輸入増に起因する貿易赤字と私は受け止めています。少なくとも短期的には、こういった輸入の増加による貿易赤字は許容すべきと考えるべきです。

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続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て、前月比で▲1%を超えるマイナスの予想でした。従って、実績の+3.6%増は、レンジの上限の+2.3%増を超えて、ややびっくりの大きな上振れでした。それもあって、また、季節調整済みの前月比増減で見て3か月連続の+3%台の増加でしたから、統計作成官庁である内閣府では、基調判断を昨年2021年11月統計から「持ち直しの動きがみられる」に上方改定したばかりなのですが、さらに、本日公表の12月統計を受けて「持ち直している」に上方改定しています。2か月連続の基調判断の上方改定なわけです。ただし、懸念される点が2点あり、第1に、製造業と非製造業の跛行性が大きくなっています。12月統計では製造業が+8.0%増の4798億円であった一方で、船舶・電力を除く非製造業では▲0.1%減の4654億円と低迷しています。製造業はいくぶんなりとも資源高の影響もあって受注が堅調に推移している一方で、内需の依存度合いが大きい非製造業の停滞が目立つ形になっています。第2に、今年202年1~3月期のコア機械受注の見通しは前期比で▲1.1%減の2兆6,749億円と反落が見込まれています。同時に、足元の1~3月期の予想でも製造業の前期比+5.0%増に対して、船舶・電力を除く非製造業では▲8.5%減と見込まれています。もちろん、昨年2021年10~12月期は、船舶・電力を除く非製造業の受注が前期比で+9.0%と運輸・郵便業で大型案件があって大きく伸びた反動も考慮すべきですが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染拡大などの影響も含めて、そうそう毎月のように基調判断を改定すべきなのか、と私は少し疑問を感じています。

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