昨年2021年10-12月期GDP統計速報1次QE予想は+5%超の大きなプラス成長か?
先々週の商業販売統計や雇用統計をはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、明日火曜日の2月15日に昨年2021年10~12月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大抑制のために、昨年2021年9月末まで首都圏や関西圏などに4回目の緊急事態宣言が出ていて、逆に、今年2022年1月に入ってからてオミクロン型変異株の感染拡大が猛烈な勢いで進んで、まん延防止等重点措置が多くの都道府県で出されていますが、その谷間に当たる昨年2021年10~12月期ですから、それなりの高成長が見込まれています。でも、すでに「過去の数字」なのかもしれません。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の1~3月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の動向は、今年2022年1月に入ってから新たなオミクロン型変異株の感染拡大が猛烈な勢いで進むとともに、足元の2月半ばには感染拡大がすでにピークを過ぎた地域もあるように見受けられ、何とも不透明であることはいうまでもありません。以下のシンクタンクの中でも、三菱系の2機関、すなわち、三菱UFJリサーチ&コンサルティングと三菱総研、それに、農林中金総研の3機関を除いて、かなり多くのシンクタンクで1~3月期以降の言及があり、特に、大和総研のリポートでは1~3月期の需要項目別の見通しを詳述し、みずほリサーチ&テクノロジーズのリポートでは4~6月期の予測まで取り上げているのですが、ここでは少し短めにカットしてあります。これらも含めて、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
日本総研 | +1.8% (+7.4%) | 2022年1~3月期を展望すると、オミクロン株の感染急拡大や、それに伴う行動制限の強化を背景に、個人消費の増勢が鈍化する見込み。もっとも、挽回生産が継続する自動車を中心に製造業生産が回復し、景気を下支え。輸出や設備投資の増加を背景に、プラス成長を維持する見通し。 |
大和総研 | +1.1% (+4.7%) | 2022年1-3月期の日本経済は、感染力が強いオミクロン株の感染が急拡大し、経済活動が再び抑制されることが重石となろう。サービス消費が減少するほか、感染者・濃厚接触者の増加を受けた供給制約により財消費にも下押し圧力が働こう。一方、輸出や設備投資などの回復が下支えし、実質GDPは2四半期連続のプラス成長(前期比年率+2.0%)となると見込んでいる。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | +1.2% (+5.0%) | 家計への影響については、食品・エネルギーを中心とした日用品の値上げを受け家計の節約志向が強まり、身の回り用品や被服・履物、交際費、教育費等の支出が減少する可能性が高い。特に、日用品に対する支出ウェイトが高い低所得世帯で影響が大きいだろう。交易条件悪化の影響で、2021年度後半から2022年度前半にかけて、設備投資が▲0.4%、個人消費が▲0.3%、GDPは▲0.2%程度下押しされると当社では試算している。 以上のとおり、2022年初の日本経済はいくつもの下押し要因により回復が阻害され、1~3月期はほぼゼロ成長になる可能性が高い。 一方、オミクロン株による感染は2月後半にはピークアウトする可能性が高く、経口治療薬・ブースター接種の普及に伴い、4~6月期以降は経済活動の回復が見込まれる。 |
ニッセイ基礎研 | +1.4% (+5.6%) | 2021年10-12月期の実質GDPは、コロナ前(2019年10-12月期)比で▲0.3%まで回復したが、直近のピーク(2019年4-6月期)に比べれば▲3.0%低い。2022年入り後、新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて、34都道府県でまん延防止等重点措置が適用されている。2021年1-3月期は10-12月期の成長を牽引した民間消費が減少に転じる可能性が高く、成長率の急低下は避けられないだろう。現時点では、2021年1-3月期の実質GDPは、民間消費の減少を輸出や輸出の増加がカバーすることにより、前期比年率1%程度の成長を予想しており、実質GDPがコロナ前の水準を回復するのは2022年4-6月期までずれ込む公算が大きい。緊急事態宣言の発令などにより行動制限をさらに強化すれば、マイナス成長に陥る可能性が高まるだろう。 |
第一生命経済研 | +1.3% (+5.4%) | 1月に入って状況は一変しており、景気下振れリスクが強まっている。1-3月期については、新型コロナウイルスの感染者数が急拡大し、人々の行動が慎重化していることに加え、1月に再び部品調達難による自動車の大幅減産が実施されていることが景気を下押しする。感染状況次第のところはあるが、1-3月期がマイナス成長となる可能性もあるだろう。 |
伊藤忠総研 | +1.2% (+5.1%) | 1~3月期は、オミクロン株の流行によるコロナ感染急拡大を受けて個人消費の停滞は確実であり、海外においても景気の減速が見込まれるため輸出の持ち直しも一時停止しよう。設備投資は先行指標が拡大再開を示唆しているが、実質GDP成長率は大幅な減速が避けられないと予想。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +1.4% (+5.8%) | 2021年10~12月期の実質GDP成長率は、前期比+1.4%(年率換算+5.8%)と高い伸びが見込まれる。緊急事態宣言が解除されたことで対面型サービスの需要が順調に持ち直したこと、生産制約が解消に向かったことで自動車販売が増加したことなどにより、個人消費が前期比+2.0%と大きく伸びて全体をけん引した。また、経済活動が活発化する中で、設備投資、輸出も前期比で増加に転じた。 |
三菱総研 | +1.5% (+6.2%) | 2021年10-12月期の実質GDPは、季節調整済前期比+1.5%(年率+6.2%)と2四半期ぶりのプラス成長を予測する。 |
農林中金総研 | +1.0% (+4.0%) | 10~12月期のGDP成長率見通しについては、実質成長率は前期比1.0%(同年率換算4.0%)と、2四半期ぶりのプラスと予想する。ただし、前年比は▲0.2%と3四半期ぶりのマイナスとなる見込みであり、GoToトラベルやGoToイートなどの需要喚起策で押し上げられた20年10~12月期の水準には及ばない。 |
テーブルを見れば明らかな通り、プラス成長、それもかなり大きなプラス成長が見込まれており、一番渋い農林中金総研でも前期比+1.0%、前期比年率+4.0%となっており、一番気前のいい日本総研は前期比+1.8%、前期比年率+7.4%を予想しています。極めて大雑把に、前期比で+1%台半ば、前期比年率で+5%台、というカンジです。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも前期比+1.4%、前期比年率+5.9%という結果が示されています。繰り返しになりますが、昨年2021年7~9月期は菅内閣ひとつを潰してまで東京オリンピック・パラリンピックを強行開催し、第5波の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)感染拡大が発生し、GDPも前期比で▲0.9%のマナス成長を記録しました。しかし、その感染拡大も9月中にいったん終息し、9月末で緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が全面的に解除されるたことで、行動制限が緩和され対人サービス消費などが増加したため、10~12月期は、これまた、いったん高成長を記録したと見られます。しかし、広く報じられている通り、今年2022年1月に入ってCOVID-19オミクロン型変異株が猛烈な勢いで感染拡大を始めていて、多くの都道府県でまん延防止等重点措置が出され、今でも解除されていません。ですから、上のテーブルに取りまとめたような昨年2021年10~12月期の高成長は一時的なものであり、今年2022年1~3月期は大きくブレーキがかかったと考えるべきです。その意味で、明日公表予定の2021年10~12月期のGDP成長率は完全に過去の数字と考えるべきです。足元の1~3月期はギリギリでプラス成長と見込むシンクタンクが多い一方で、COVID-19の感染拡大次第では、特に、緊急事態宣言が出されればマイナス成長の可能性もあるものと私は受け止めています。
下のグラフは、みずほリサーチ&テクノロジーズのリポートから引用しています。
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