大きく悪化した1月の景気ウォッチャーと1年半ぶりの赤字を記録した12月の経常収支をどう見るか?
本日、内閣府から1月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2021年12月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲19.6ポイント低下して37.9と大きく悪化し、先行き判断DIも▲7.8ポイント低下して42.5を記録していますいます。また、経常収支は季節調整していない原系列で▲3708億円の赤字を計上しています。経常赤字は1年6か月ぶりだそうです。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を手短に、日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
1月の街角景気、現状判断指数は5カ月ぶり悪化
内閣府が8日発表した1月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は37.9で、前の月に比べて19.6ポイント低下(悪化)した。悪化は5カ月ぶり。家計動向、企業動向、雇用関連が悪化した。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は42.5で、7.8ポイント低下した。低下は3カ月連続。家計動向、企業動向、雇用関連が悪化した。
内閣府は現状の基調判断を「持ち直している」から「持ち直しに弱さがみられる」に変更した
21年12月の経常収支、3708億円の赤字 民間予測は734億円の黒字
財務省が8日発表した2021年12月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は3708億円の赤字だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は734億円の黒字だった。
貿易収支は3187億円の赤字、第1次所得収支は3988億円の黒字だった。
短いながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

ということで、景気ウォッチャーは現状判断DIが昨年2021年8月を直近の底として、小幅ながらも4か月連続で12月まで上昇を示した後、一型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染拡大などを背景に、今年2022年1月統計では大きく低下しました。先行き判断DIもそれなりの大きさで低下しています。いずれも、繰り返しになりますが、すべての要因は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的影響に基づくマインドの変化と考えるべきです。内閣府が公表している調査結果のうちの景気判断理由の概要でも、東京などにおけるまん延防止等重点措置の適用から、厳しさが大きく増したとの見方が示されています。現状判断DIの前月差で見ても、家計動向関連では、飲食関連が▲39.8ポイントと最大の低下を示しており、企業動向関連でも製造業が▲7.6ポイントの低下でとどまっている一方で、非製造業は▲10.5ポイントの2ケタ減を記録しています。引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府が、基調判断を「持ち直しに弱さがみられる」と先月の「持ち直している」から半ノッチ引き下げたのも当然です。先月の統計公表時には、私はこの「『持ち直し』の基調判断は風前の灯」と表現しましたが、まさにその通りで、すべからく、経済の先行き見通しは完全にCOVID-19のオミクロン型変異株の感染拡大次第と考えるべきです。ともかく、以前の安倍政権と菅政権は検査体制を含めて医療体制の整備にはほとんど関心を示さず、感染拡大に従って、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言が出す一方で、感染減少に伴ってそれらが解除される、という意味で、古いタイプの Stop and Go 政策の繰り返しでしたが、現在の岸田内閣には、ワクチン接種の大幅加速をはじめとして、PCR検査の拡充も含めて、何とか抜本的な医療体制整備を図って欲しいと私は期待しています。

続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも小幅な経常黒字となっており、▲3000億円を超える大きな赤字には、私も少しびっくりしました。でもまあ、予想レンジの下限が▲3400億円ほどだったので、ギリギリレンジの範囲内といえるのかもしれません。確かに、季節調整をしていない原系列の経常収支で見て、2020年6月の▲143億円以来の経常赤字ですが、季節調整済みの系列では2021年12月も+7875億円の経常黒字を記録していますし、2014年3月を最後に8年近く赤字にはなっていませんから、まったく悲観する必要はありません。国際商品市況で資源価格が値上がりしていますので、こういった資源に乏しい日本では輸入額が増加するのは当然であり、消費や生産のために必要な輸入をためらう必要はまったくない、と私は考えています。
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