第一生命経済研のリポート「円安悪玉論の誤解」を読む!!!
本日、第一生命経済研究所から「円安悪玉論の誤解」と題するリポートが明らかにされています。私はほぼほぼこのリポートの趣旨に賛成ですので、グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。なお、リポート1ページめが(要旨)になってるのですが、あまりに長くて要旨の役割ではなさそうなので割愛します。
まず、上のグラフはリポートから 10%円安の影響 を引用しています。ただし、第一生命経済研のリポートが、そもそも内閣府のリポート「短期日本経済マクロ計量モデル(2018年版)の構造と乗数分析」を引用しています。念のため。そして、第一生命経済研のリポートで指摘しているように、「内閣府や日銀などのすべてのモデルで円安が実質GDPの増加に寄与」との結果は、私自身ですべての計量モデルをチェックしたわけではないものの、たぶん、そうだろうと思います。そしてもっと言えば、内閣府のモデルでも消費にもおおむねプラスの影響があります。上のグラフでは1年目にわずかにマイナスになっているのですが、3年目までをならしてみるとプラスなのは明らかです。加えて、グラフの引用はしませんが、リポートでは輸入物価を円ベースと契約通貨ベースで比較し、「輸入物価上昇の為替要因は¼程度に過ぎない」と結論しています。私の直感でもその程度ですし、そもそも、現状、日本の消費者物価指数(CPI)上昇率が+1%にも満たないわけで、デフレから完全に脱却したとまでは言い難いのですから、円安による物価上昇を懸念するのはいかがか、という気もします。
続いて、上のグラフはリポートから 設備投資と為替の関係 を引用しています。そして、リポートでは、「2013年のアベノミクス以降、円安のメリットは輸出増よりも企業の設備投資の増加のほうが大きい」と指摘しています。ただ、この円安→設備投資、という関係は、むしろ、中に株高が入って、円安→株高(=期待収益の上昇)→設備投資なんだろうと私は考えています。まあ、学術論文ではなく、シンクタンクのリポートですので、厳密な論証ではなく、直感的なグラフを比較しての結論ですが、それほど的を外しているわけではないと私も考えます。
何度か、私が主張してきたところですが、円高とデフレは通貨にまつわる同じ現象のコインの表裏だと考えるべきです。すなわち、円高は円通貨と外貨の間で円が希少であることの結果であり、デフレは円と財・サービスの間で円が希少であることの結果です。すなわち、黒田総裁が2013年に就任する以前の日銀では、円が希少になる金融政策運営を行ってきたために、その結果として円高とデフレを招いてしまったわけです。まあ、黒田総裁就任以降、というか、その直前から、円高の方は何とか是正された一方で、デフレからの本格的な脱却はそれほど進んでいませんが、少なくとも、現在の金融政策の方向は正しいと私は考えていますし、円安とデフレ脱却が同時に達成されることは理論的には円の希少性の低下によってもたらされる同じコインの表裏であると考えています。
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