« 東洋経済オンラインによる「『炭素利益率(ROC)』が高い100社ランキング」やいかに? | トップページ | コインの流通残高が減少してキャッシュレス化は進むか? »

2022年2月10日 (木)

高い上昇率続く企業物価指数(PPI)の動向はデフレ脱却につながるか?

本日、日銀から1月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+8.6%まで上昇幅が拡大しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

1月の企業物価指数、前年比8.6%上昇 前月比0.6%上昇
日銀が10日発表した1月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は109.5と、前年同月比で8.6%上昇、前月比で0.6%上昇だった。市場予想の中心は前年比8.2%上昇だった。
円ベースで輸出物価は前年比12.5%上昇、前月比で0.4%上昇した。輸入物価は前年比で37.5%上昇、前月比で0.2%下落した。

とてもコンパクトながら、包括的に取りまとめられています。続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo

このところ、欧米をはじめとして世界的にはインフレが高まっています。従って、米国では連邦準備制度理事会が3月から利上げを実施するものと市場では見られていたりします。しかし、日本ではまだまだ本格的にデフレから脱却した、とまでは言い切れない物価状況が継続していますが、それでも、消費者物価指数(CPI)で見ても、本日公表の企業物価指数(PPI)で見ても、いずれも、足元で物価が下げ止まり、ないし、上昇しつつあると私は評価しています。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比で、1月は+8.2%の上昇と予想されていましたから、実績の+8.6%はやや上振れた印象です。国内企業物価上昇の要因は主として2点あり、いずれもコストプッシュです。すなわち、国際商品市況の石油価格をはじめとする資源価格の上昇、さらに、オミクロン型の変異株をはじめとする新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大による供給制約です。とはいえ、あくまで我が国に限った考えかもしれませんが、物価の上昇そのものは本格的なデフレ脱却には好条件を提供している可能性があります。コストプッシュなのですから製品価格に転嫁しつつ、労働者に対して生計費の上昇に対応した賃上げを実現する、という企業行動がデフレ脱却につながる可能性です。逆に、コスト増で企業経営が苦しいからといって労働者が賃上げ抑制を押し付けられたり、あるいは、現在の政府のガソリン補助金のようにコストプッシュの方を抑え込んで価格引上げを抑制しようとする方向は、なかなか払拭できないデフレマインドをさらに強固に定着させかねない危険すらあります。もちろん、日本では企業規模格差に伴って、下請中小企業が大企業に対して価格引上げを要求しにくいという面は無視できませんし、合わせて、国際商品市況における資源価格の動きが一巡すれば上昇率で計測した物価も元に戻ることは覚悟せねばなりません。ということで、国内物価について品目別で前年同月比を少し詳しく見ると、木材・木製品が+58.5%、石油・石炭製品が+34.3%、非鉄金属が+26.5%、鉄鋼+25.1%、化学製品+12.3%までが2ケタ上昇となっています。そして、ついでながら、これらの品目は昨年2021年12月の前年同月比上昇率よりも1月の上昇率が縮小しています。例えば、これら品目の価格上昇の背景にある原油価格について、企業物価指数(PPI)の中の輸入物価の円建て指数で見ると、昨年2021年11月の142.7をピークに、12月には141.5、今年2022年に入って1月138.4と、小幅ながら低下しているのも事実です。前年同月比上昇率で見ても、11月+142.7%、12月+100.1%、1月+72.6%と上昇率が少しずつながら落ちています。

繰り返しになりますが、コストプッシュを製品価格に転嫁し、生計費上昇を賃上げで相殺する方向の政策や企業行動が必要です。コストプッシュを抑制する補助金を企業に出したり、コストプッシュで経営が苦しくなるからといって賃上げを抑制するのは、方向としてまったく逆であると私は考えています。

|

« 東洋経済オンラインによる「『炭素利益率(ROC)』が高い100社ランキング」やいかに? | トップページ | コインの流通残高が減少してキャッシュレス化は進むか? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 東洋経済オンラインによる「『炭素利益率(ROC)』が高い100社ランキング」やいかに? | トップページ | コインの流通残高が減少してキャッシュレス化は進むか? »