前年同月比プラスを続ける消費者物価指数(CPI)上昇率の先行きやいかに?
本日、総務省統計局から1月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+0.2%を記録しています。コアCPI上昇率は、昨年2021年8月の前年同期比横ばいの後、9月に+0.1%を記録し、今年2022年1月までか5月連続のプラスです。ただし、エネルギー価格の高騰に伴うプラスですので、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は1月には▲1.1%と下落しています。コチラは、2021年4月から10か月連続のマイナスです。逆に、エネルギーを含めたヘッドラインCPIは+0.5%の上昇を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
1月の全国消費者物価、5カ月連続上昇 エネルギーが41年ぶり上昇幅
総務省が18日発表した1月の全国消費者物価指数(CPI、2020年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が100.1と前年同月比0.2%上昇した。上昇は5カ月連続。原油など資源価格の高騰を受けたエネルギーの上昇がCPIを押し上げた。
一方、政府の観光需要喚起策「Go To トラベル」事業の反動で前月まで大きく上昇していた宿泊料の伸びが鈍化したため、上昇幅は前月(0.5%上昇)から縮小した。QUICKがまとめた市場予想の中央値(0.3%上昇)も下回った。
エネルギーは前年同月比17.9%上昇と、1981年1月以来、41年ぶりの上昇幅となった。原油相場の影響がガソリンより遅行する「電気代」も15.9%上昇と、1981年3月以来40年10カ月ぶりの上昇幅。「都市ガス代」も17.8%上昇と騰勢を強めた。「灯油」や「ガソリン」は引き続き高水準ながら、上昇幅は前月に比べ縮小した。
「Go To」の停止による上昇要因がはげ落ちた「宿泊料」は前年同月比0.6%上昇と、前月(44.0%上昇)から急速に伸びが縮小した。
携帯電話の通信料は前年同月比53.6%下落した。携帯大手各社による新料金プランが影響した。家庭用耐久財は3.1%下落した。
生鮮食品を除く総合指数は前月比で横ばいだった。生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は前年同月比1.1%下落し、10カ月連続のマイナスとなった。生鮮食品を含む総合は前年同月比0.5%上昇し、5カ月連続でプラスとなった。
いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。
まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+0.3%の予想でしたので、やや下振れたとはいえ、まずまず、予想の範囲内といえます。基本的に、エネルギー価格の上昇と政策要因に近い携帯電話通信料の下落の差し引きで決まってきている部分が大きく、加えて、これも引用したい記事にある通り、昨年2021年12月統計までは「GoToトラベル」事業停止によって宿泊料の上昇がありましたが、本日公表の今年2022年1月統計からはこの効果は剥落しています。第1要因のエネルギー価格が前年同月比で+17.9%の上昇を記録して、ヘッドラインCPIの上昇率に対して+1.23%の寄与を示している一方で、マイナス寄与の項目を見ると、第2要因の通信料(携帯電話)が前年同月比▲53.6%の下落で、▲1.47%の寄与となっています。ついでに、第3要因の宿泊料は2021年12月統計では+44.0%の上昇でヘッドラインCPI上昇率に対して+0.29%の寄与度でしたが、1月統計では上昇率が+0.6%、寄与度が+0.01%に大きく縮小しています。要するに、エネルギー価格の上昇と政策要因に近い携帯電話通信料の下落のバランスで、寄与度だけを見ると携帯電話通信料の方が絶対値で大きいのですが、エネルギー価格の上昇が経済全体に波及して、さらに、人手不足の影響などもあって、仕上がりのコアCPI上昇率としてはプラスという結果となったと私は受け止めています。特に、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染拡大で懸念されるサービス業の価格動向についても、上のグラフでサービスのマイナス寄与が大きく見えるのは、携帯電話通信料の影響であろうと考えられます。。
先行きの物価動向を考えると、国際商品市況における石油価格の上昇に加えて、人手不足の影響もあり、国内外の景気回復とともに、物価は緩やかに上昇幅を拡大していくものと私は考えています。例えば、日銀から公表されている企業物価指数の国内物価も、昨年2021年10月統計から今年2022年1月統計では前年同月比上昇率で+8~9%台に達しています。米国をはじめとしてインフレ率の上昇が見られるケースでは金融緩和は終了に向かっていますが、日銀は指値オペに踏み切っており、日本国内では金融緩和は継続していますし、物価は上昇基調にあると考えるべきです。ただし、私の直感的な感覚ながら、物価の基調は日銀が目標としている+2%にはまったく達しておらず、賃金上昇とそれに伴ういっそうの需要拡大が伴わなければ、我が国の物価上昇率が2%に達するのはまだまだ時間がかかる可能性が高いと私は受け止めています。
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