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2022年3月16日 (水)

7か月連続の赤字が続く貿易収支はこの先どうなるのか?

本日、財務省から2月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列で見て、輸出額が前年同月比+19.1%増の7兆1901億円、輸入額も+34.0%増の7兆8583億円、差引き貿易収支は▲6683億円の赤字となり、7か月連続で貿易赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインについて報じた記事を引用すると以下の通りです。

2月の貿易収支、6683億円の赤字
財務省が16日発表した2月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は6683億円の赤字だった。赤字は7カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1125億円の赤字だった。
輸出額は前年同月比19.1%増の7兆1901億円、輸入額は34.0%増の7兆8583億円だった。中国向け輸出額は25.8%増、輸入額は5.8%増だった。

いつもながら、コンパクトかつ包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、▲1000億円を超える貿易赤字が見込まれていたものの、予想レンジの最大の貿易赤字としては▲4514億円でしたので、実績の▲6683億円の貿易赤字はそれにしても大きな貿易赤字という印象です。季節調整していない原系列の統計で見て、貿易赤字は昨年2021年8月から今年2022年2月までの7か月連続なんですが、上のグラフに見られるように、季節調整済みの系列の貿易赤字は昨年2021年4月から始まっていて、したがって、11か月連続となります。季節調整していない原系列の貿易赤字は▲6683億円なのですが、季節調整済みの系列では▲1兆314億円と、▲1兆円を超えています。もっとも、私の主張は従来通りであり、輸入は国内生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易赤字や経常赤字はそれほど悲観する必要はない、と考えています。
2月の貿易統計を品目別に少し詳しく見ると、すべて季節調整していない原系列の統計の前年同月比で、輸出では物流と部品供給の制約から自動車の輸出がやや停滞しています。すなわち、金額ベースで+8.3%増と1月のマイナスから回復したものの、数量ベースでは▲5.5%減となっています。為替の円安などの価格要因で輸出額が増加しているわけです。同じように、鉄鋼も金額ベースでは+45.5%増と大きく伸びましたが、数量ベースでは▲5.1%減となっています。輸入では、まず、国際商品市況での石油価格の上昇から原油及び粗油の輸入が大きく増加しています。これも前年同月比で見て数量ベースで+13.2%増に過ぎないにもかかわらず、金額ベースで+93.2%増に上っています。液化天然ガス(LNG)も数量ベースでは▲11.9%減であるにもかかわらず、金額ベースでは+65.3%増と大きく膨らんでいます。加えて、ワクチンを含む医薬品が急増しています。すなわち、前年同月比で見て数量ベースで+31.8%増ながら、金額ベースで+100.7%増と倍増を記録しています。でも、当然ながら、貿易赤字を抑制するために、ワクチン輸入を制限しようという意見は極めて少数派ではないかと考えられます。国別では中国への輸出が急増しており、+25.8%増を記録しています。米国への輸出も+16.0%増と堅調です。中東からの輸入は急増しています。

繰り返しになりますが、2月の貿易統計の結果は、石油やワクチンの輸入増に起因する貿易赤字と私は受け止めています。少なくとも短期的には、こういった輸入の増加による貿易赤字は許容すべきと考えます。ただ、この先、ロシアのウクライナ侵攻に起因する経済的な影響が資源価格以外にどのような現れ方をするのか、サイバー攻撃の可能性も含めて、十分な注意が必要です。

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