基調判断が「持ち直している」で据え置かれた機械受注の先行きをどう見るか?
本日、内閣府から1月の機械受注が公表されています。民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比▲2.0%減の8996億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインについて報じた記事を引用すると以下の通りです。
1月の機械受注、5カ月ぶり減少 電気機械などの反動減で
内閣府が17日発表した1月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比2.0%減の8996億円だった。減少は5カ月ぶり。民間予測(QUICKまとめ、中央値は2.2%減)に比べると減少幅は小さかった。製造業で前月に増加した電気機械や非鉄金属の反動減などが影響した。
内閣府は基調判断を「持ち直している」で据え置いた。
製造業からの受注額(季調済み)は前月比4.8%減の4322億円と、3カ月ぶりに減少した。もっともマイナスに寄与したのは9.5%減の電気機械だった。原子力原動機の反動減が出た。非鉄金属は21.9%減とマイナスに転じた。自動車・同付属品などもマイナスだった。
非製造業からの受注額(季調済み、船舶・電力を除く)は前月比1.9%減の4529億円と2カ月ぶりに減少した。建設業は、建設機械の反動減により21.4%減となった。通信業は18.7%減となったほか、卸売業・小売業なども振るわなかった。
受注総額は前月比3.3%減と2カ月ぶりに減少した。外需は0.9%増、官公需は13.6%減だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は5.1%増だった。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
続いて、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て、前月比で▲2.2%減の予想でした。従って、実績の▲2.0%減は、振れの大きい機械受注の統計としてはジャストミートといっていい結果だと私は受け止めています。従って、統計作成官庁である内閣府では、基調判断を昨年2021年12月統計から上方改定された「持ち直している」に据え置いています。コア機械受注の季節調整済みの系列で見て、昨年2021年9月から12月まで4か月連続の前月比プラスを記録した後、本日公表の1月統計で5か月ぶりの前月比マイナスとなりましたが、上のグラフに見られる通り、単月のマイナスとしては小さく、後方移動平均のトレンドで見ても「持ち直している」の基調判断を支持していると考えるべきです。
詳細な業種別についてはともかく、マクロの方向性として、今後の機械受注の先行きについては基調判断ほど楽観的にはなれない、と私は考えています。当然ながら、考えるべきポイントは2点あり、第1に、好ましい点は3月21日をもってまん延防止等重点措置が全国的に解除される点です。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大抑制から経済回復に重点を置く政策変更がなされるわけで、消費などの拡大とともに内需からの設備投資需要もそれなりの盛り上がりを見せる可能性があります。ただし、第2に、外需は伸び悩みが予想されます。ロシアのウクライナ侵攻によるサプライチェーンの混乱が何らかの形で生じる可能性がありますし、何よりも、米国の連邦準備制度理事会(FED)の金融政策が引き締めモードに入っていますから、為替は円安に振れているとはいえ、外需に基づく設備投資にはマイナスと考えるべきです。そして、定量的な根拠はありませんが、私の経験に基づく直感としては、後者の方の影響が大きそうに感じています。
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