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2022年3月10日 (木)

さらに上昇率を高めた企業物価指数(PPI)国内物価は2ケタに達するのか?

本日、日銀から2月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+9.3%まで上昇幅が拡大しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

2月の企業物価指数、前年比9.3%上昇 前月比0.8%上昇
日銀が10日発表した2月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は110.7で前年同月比で9.3%上昇、前月比で0.8%上昇だった。市場予想の中心は前年比8.7%上昇だった。
円ベースで輸出物価は前年比12.7%上昇、前月比で1.2%上昇した。輸入物価は前年比34.0%上昇、前月比で2.0%上昇した。

とてもコンパクトながら、包括的に取りまとめられています。続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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このところ、欧米をはじめとして世界的にはインフレが高まっています。従って、米国では連邦準備制度理事会が次の3月半ばの連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを決定すると、市場ではコンセンサスが出来上がっていたりします。他方で、日本ではまだまだ本格的にデフレから脱却した、とまでは言い切れない物価状況が継続していますが、それでも、消費者物価指数(CPI)で見ても、本日公表の企業物価指数(PPI)で見ても、いずれも、足元で物価が下げ止まり、ないし、上昇しつつあると私は評価しています。特に、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比で、2月は+8.7%の上昇と予想されていて、予想レンジの上限でも+9.0%でしたから、実績の+9.3%は大きく上振れた印象です。実際に、国内企業物価上昇の要因は主として2点あり、いずれもコストプッシュです。すなわち、国際商品市況の石油価格をはじめとする資源価格の上昇、さらに、オミクロン型の変異株をはじめとする新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大による供給制約です。とはいえ、あくまで我が国に限った考えかもしれませんが、物価の上昇そのものは本格的なデフレ脱却には好条件を提供している可能性があります。コストプッシュなのですから製品価格に転嫁しつつ、労働者に対して生計費の上昇に対応した賃上げを実現する、という企業行動がデフレ脱却につながる可能性です。逆に、コスト増で企業経営が苦しいからといって労働者が賃上げ抑制を押し付けられたり、あるいは、現在の政府のガソリン補助金のようにコストプッシュの方を抑え込んで価格引上げを抑制しようとする方向は、なかなか払拭できないデフレマインドをさらに強固に定着させかねない危険すらあります。もちろん、日本では企業規模格差に伴って、下請中小零細企業が大企業に対して価格引上げを要求しにくいという面は無視できませんし、合わせて、国際商品市況における資源価格の動きが一巡すれば上昇率で計測した物価も元に戻ることは覚悟せねばなりません。ということで、2月PPI統計のうちの国内物価について品目別で前年同月比を少し詳しく見ると、木材・木製品が+58.0%、石油・石炭製品が+34.2%、非鉄金属が+24.9%、鉄鋼+24.5%、化学製品+12.3%までが2ケタ上昇となっています。そして、ついでながら、これらの品目は1月の前年同月比上昇率よりも2月の上昇率の方が、わずかながら縮小しています。しかし、ロシアのウクライナ侵攻に伴って石油価格はさらに一段の上昇を見せており、何とも、先行きは見通し難く感じています。

繰り返しになりますが、一時的には、価格上昇を相殺するような補助金を企業サイドに出すことも容認すべきと私は考えますが、それでも、リフレ志向の重要性を何度でも繰り返したいと思います。すなわち、資源価格が上昇しているのであれば、企業に補助金を出して値上げを抑えたり、あるいは、労働者が経営を助けるために賃上げをガマンしたりするデフレ思考ではなく、値上がりを相殺できるくらいの賃上げなどで家計の所得をサポートするリフレ思考の政策を志向すべきです。賃上げは政策的に容易に実行できるものではありませんが、ひとまず、化石燃料の価格上昇を容認すれば、タバコ値上げとよく似た効果があり、石油や天然ガスなどの消費を抑制して、地球温暖化や気候変動への対策にもつながります。短期的にはともかく、先行きの政府対応の方向性に注目したいと思います。

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