2月の雇用統計は底堅いのか、それとも改善が鈍いのか?
本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも2月の統計です。失業率は前月から▲0.1%ポイント低下して2.7%を記録し、有効求人倍率は前月を+0.01ポイント上回って1.21倍に達しています。全体として、雇用は緩やかな改善が続いている、ないし、改善が鈍化している印象です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
失業率2月2.7%、2カ月ぶり低下 就業控えも目立つ
総務省が29日発表した2月の完全失業率(季節調整値)は、前月から0.1ポイント下がり2.7%となった。低下は2カ月ぶり。厚生労働省が同日公表した2月の有効求人倍率(同)は前月比0.01ポイント上昇の1.21倍だった。まん延防止等重点措置などで働くのを控える動きもあって就業者数は減っており、雇用情勢の改善は鈍い。
新型コロナウイルス禍が長引き、求職もせず労働市場から退出する人が増えている。非労働力人口は4215万人と前年同月比14万人増えた。就業者数は35万人減の6658万人と、5カ月連続で減った。休業者数は12万人増の242万人となった。
有効求人倍率は仕事を探す人1人に対して求人が何件あるかを指す。2020年に比べると回復傾向にあるが、1.5倍を超えていたコロナ前の水準には戻っていない。22年2月は、求職者数の減少幅が求人数の減少幅を上回ったため、上昇した。有効求職者数(季節調整値)は前月比1.4%減の197万人だった。減少幅は21年6月以来の大きさだった。
いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、雇用統計のグラフは下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスについては、失業率が2.8%と、また、有効求人倍率は1.20倍と、ともに、前月統計から横ばいが予想されていた一方で、実績としては、失業率も有効求人倍率もともにわずかながら改善しましたので、やや鈍い動きながらも雇用は底堅いと私は評価しています。しかしながら、他方で、3月になってまん延防止等重点措置が解除されたとはいえ、コロナ禍が続く中で景気回復の足取りは鈍く、求職することなく労働市場から退場したままになっている人も少なくないという実感が同時にあります。統計的に確認されているわけではなく、事例としていくつか聞き及んでいるだけですが、特に、産業分野としては、人的接触の多い外食や宿泊などの業種において、そして、高度成長期から周辺労働力として考えられているグループ、すなわち、主婦パートや学生アルバイトなが労働市場への再参入をためらっている可能性が高い、と私は受け止めています。景気回復がさらに鮮明になり求人が盛上がりを見せれば、こういった伝統的な周辺労働力も労働市場に再参入する動きが強まると私は予想しているのですが、まん延防止等重点措置が解除された3月下旬以降の統計を改めて見たい気がします。いずれにせよ、景気や雇用の先行きはコロナとウクライナ危機次第、というのは私のエコノミストとしての限界です。
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