3月9日公表予定の2021年10-12月期GDP統計速報2次QEは1次QEからほぼ修正なしか?
先週の法人企業統計をはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、今週水曜日の3月9日に昨年2021年10~12月期GDP統計速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大の谷間に当たる昨年2021年10~12月期ですから、それなりの高成長が見込まれています。でも、すでに「過去の数字」なのかもしれません。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の1~3月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。ただし、いつもの通り、2次QEですので法人企業統計のオマケのような扱いをしているシンクタンクがほとんどです。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の動向は、オミクロン型変異株の出現もあって、何とも先行き不透明であることはいうまでもありません。ロシアのウクライナ侵攻とそれに伴う経済制裁の影響も計り知れません。こういった中で、みずほリサーチ&テクノロジーズと第一生命経済研のリポートでは、いずれも1~3月期のみならず、先行きの4~6月期まで言及しています。まあ、どちらも常識的なラインだと思います。これらも含めて、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
内閣府1次QE | ▲0.8% (▲3.0%) | n.a. |
日本総研 | +1.3% (+5.4%) | 10~12月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資が小幅な上方修正にとどまるとみられ、成長率は前期比年率+5.4%(前期比+1.3%)と、1次QE(前期比年率+5.4%、前期比+1.3%)から変わらない見込み。 |
大和総研 | +1.4% (+5.9%) | 2次速報では、個人消費や設備投資といった内需や輸出が増加するなど、経済活動の正常化が2021年末にかけて急速に進んだことが改めて示されるだろう。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | +1.3% (+5.5%) | オミクロン株の感染拡大による個人消費や生産の下押し影響を主因として、現時点では、1~3月期の実質GDPは小幅なマイナス成長を見込んでいる。 4~6月期以降については、経口治療薬・ブースター接種の普及に伴い、経済活動の回復が見込まれる。GoToトラベル事業については、現時点で5月下旬の再開を想定している。当面はワクチン未接種者や子育て世帯(ワクチンを接種していない子どもと同居する親)、重症化した場合の死亡リスクが相対的に高い高齢者等を中心に一部で消費行動に慎重姿勢が残るとみられるものの、オミクロン株収束後の消費活動は回復傾向で推移するだろう。 |
ニッセイ基礎研 | +1.3% (+5.5%) | 3/9公表予定の21年10-12月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比1.3%(前期比年率5.5%)となり、1次速報の前期比1.3%(前期比年率5.4%)とほぼ変わらないだろう。 |
第一生命経済研 | +1.3% (+5.3%) | 新型コロナウイルスの感染が急拡大したことの影響で、22年1-3月期は小幅マイナス成長となる可能性が高いだろう。その先については、感染が落ち着くことで、サービス消費を中心として4-6月期以降は再び景気が持ち直すとみているが、ここにきてウクライナ情勢による景気下振れリスクが顕在化してきた。 |
伊藤忠総研 | +1.4% (+5.9%) | 10~12月期の実質GDP成長率は2次速報で前期比+1.4%(年率+5.9%)へ小幅上方修正される見通し。設備投資や公共投資は下方修正も、民間在庫投資が上方修正される見通し。ただ、景気の先行きについての見方を修正させる内容ではなく、ウクライナ侵攻に対する対露制裁の影響の方が大きな懸念材料。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +1.4% (+5.8%) | 3月9日に内閣府から公表される2021年10~12月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比+1.4%(前期比年率換算+5.8%)と1次速報値の同+1.3%(同+5.4%)から上方に修正されようが、依然としてコロナ前の水準(2019年10~12月期)には届かない見込みである。 |
三菱総研 | +1.4% (+5.6%) | 2021年10-12月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+1.4%(年率+5.6%)と、1次速報値(同+1.3%(年率+5.4%))から小幅上方修正を予測する。 |
ということで、私自身の2次QE予想は、法人企業統計に従って、設備投資がやや上方修正される分だけ、わずかながら成長率も上方修正されると考えていますが、各シンクタンクとご同樣で、極めて小幅な修正にとどまると考えています。加えて、何度でも繰り返しますが、この2021年12~12月期の高成長を記録したGDP統計は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の第5次と第6次感染拡大の間に咲いたあだ花でしかありません。今年2022年1月からのCOVID-19オミクロン型変異株の猛烈な感染拡大が始まるまでのつかの間の高成長であって、完全に「過去の数字」です。みずほリサーチ&テクノロジーズや第一生命経済研のご指摘を待つまでもなく、今年2022年1~3月期の成長率は大きく低下し、マイナス成長すら考えられますし、逆に、すでにオミクロン型変異株の新規感染者数もピークアウトしつつあることから、4~6月期はリバウンドが予想されます。これまた何度でも繰り返しますが、もはや、先行き経済見通しはエコノミストの手に負えるものではなくなり、COVID-19の感染とロシアのウクライナ侵攻次第といえます。私のような凡庸なエコノミストにはどちらも見通し難く感じています。
最後に、下のグラフはみずほリサーチ&テクノロジーズのリポートから引用しています。
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